440 それぞれ、良かれと思うことをしてくれたら
それからの会議は度々邪魔が入って、議論が深まることはなかった。
まずボニボニの報告。
殺された男女はいずれもニューキーツの住人でマト、男の方は元肉屋の店主で、女性は元布地屋の女主人。
二人の間に、特別な接点はないと思われる。先日のカップリングのペアでもない。
ンドペキが小さく唸り、チョットマが目を上げた。
ボニボニの報告が続く。
市民は徐々に落ち着きを取り戻しています。
全員を再びガーデンに連れ戻しました。
が、パニックによる犠牲者が若干名。
転倒による死亡。地下水系に転落した者。
パリサイドが水系から攻めてきたことで、誰もが水系から遠ざかろうと、すなわちガーデンの入り口付近に自分の居場所を移し始めています。
騒ぎの中、危険人物と思われる者を拘束しました。その数云々。
サスケイはその後、頭を抱えているばかりで何も話そうとしません。
レイチェルの補佐官もやって来た。
手渡されたメモを読んで、レイチェルの顔が曇った。
横からメッセージを読んでいたユウの顔も固くなった。
そしてミタカライネンからの報告。
負傷者は云々、そのうちの重傷者は云々。
暗がりが人々の恐怖を増幅させている。照明の数を倍増するべく、作業に取り掛かっている。
昼夜の調光も検討中。完成時期は、云々。
長期戦に備えて、トイレやパウダールーム、シャワーや更衣室、共同キッチン、救護所など、いわば生活の根幹となる施設の建設の進捗状況。その配置は、云々。
ガーデンを「街」化したい、つまり店などがオープンできるようにしたいが、いかがか。
いずれも大切なことなのだろう。
通常時ならレイチェルに伺いを立てずとも実行すればいいような事柄だが、この非常時において、レイチェルの決済が無ければ何も進まないのかもしれない。
結局、会議をしている場合ではないということになって、ミタカライネンを下がらせた後、レイチェルは大きな溜息をついた。
「こういう時、どうすればいいのかしら。それぞれ、良かれと思うことをしてくれたら、それでいいんだけど。責任者なんだから。とはいえ、報告は入れてくれないと困るし」
レイチェルの目の下の隈はますます濃くなり、疲れは隠しようがない。
席を立とうとしてよろめいた。
「ふう! やれやれ。ユウ、いよいよ交代制にしましょう」




