437 少なくとも一体を足止めします
「私が、少なくとも一体を足止めします」
サリが驚いてアングレーヌを見た。
「ソウルハンド。やります」
「ダメよ!」
と、ユウが言った。
ソウルハンド。様々な物質からエネルギーを吸い取ってしまう技。
「ねえ、ユウ先輩」
先輩?
前は、お姉さんと言ってたが。
そんなことはどうでもいい。
もうユウは上官ではないが、アングレーヌなりの敬意を込めた言い方なのだろう。
「私は、またパリサイドの身体に戻れると思います。それで」
アングレーヌはアヤとチョットマを見た。
その目が言っている。
二人がパリサイドの身体になれるなら、純正パリサイドの自分ならきっと戻れるはず。
それに百人の純正パリサイドが、その体に戻って海に潜って行ったのだ。
だから自分も。
「で、水系で待ち伏せします。水中で。そこなら彼らも油断しているでしょう。私、抱き着きます」
「絶対にダメ!」
ユウが止めるが、アングレーヌのその気は変わらないようで、
「いいじゃないですか。前に、先輩、使ってみる時が来たかも、って言ったじゃないですか」
と、言い募る。
「違う! あの時は貴方が無駄に玉砕する可能性はなかった!」
レイチェルを警護するためにアングレーヌが来てくれた時のことだ。
あの時も、いざとなればソウルハンドを使うと言ってドアの傍に立っていた。
イコマが心からアングレーヌを愛おしいと思ったあの時のこと。
「でも、私一人で止められるのは一体だけ。もう一人、誰か」
とんでもない話になってきた。
「ダメダメ! 特攻隊みたいなそんな作戦」
イコマもそう言ってアングレーヌに思い止まらせようとした。
この娘を失うわけにはいかない。
それに、アングレーヌが行くならと、アヤやチョットマも間違いなく名乗り出る。
「アングレーヌ!」
「いい案でしょ、ユウ先輩」
「アングレーヌ!」
ユウが血相を変えていた。
こんなに緊迫したユウの顔を見るのは初めてかもしれない。
「アングレーヌ! 聞きなさい!」
ユウ、頼むぞ。
この娘を止めてくれ。




