434 ロームスが欲するものを差し出す
会議はレイチェルの思いもかけない発言で始まった。
「今からイコマにキョー・マチボリーと話したことを報告してもらいます。それを踏まえた上で決定することですが、私はひとつ、決断をしました。ロームスが欲するものを差し出すことで事態を収拾するつもりです」
ロームスが欲するものを差し出す。
そのくだりを、レイチェルはことさらはっきり発音し、決意の固さを示したのだった。
そしていつものレイチェルの声に戻った。
「会議の時はヘッダーを取る。そういう決まりよね、ンドペキ」
期待の目が注がれていることは痛いほど分かったが、報告するにつれて、ンドペキの表情が曇っていった。
つまり、一言で言えば「なすすべがない」
報告は、その理由を述べているにすぎなかったからだ。
ユウの表情は変わらない。
レイチェルの顔つきも。
想定内だったということなのだろう。
アヤやチョットマは厳しい表情をしていたし、コリネルスは小さく首を左右に振っていた。
アングレーヌとサリはまた腕を組んでいたが、二人まったく同じ顔で同じく硬い表情で、こちらを見つめていた。
報告が終わった。
沈黙が落ちた。
が、それをすぐに破ったのは、当然レイチェル。
「既に八人の市民が殺されました。レイミ、キャンティ、タァーレル、ゴーダ、ジェドリとニェメト、そして先ほどの攻撃で殺された二人。それぞれに犯人がいて、犯人なりの理屈があるのでしょう。タァーレルについては、後でユウから聞きました」
パリサイド星で人が死ぬときは、いつもああいう風だった、と。
ついさっきまでニコニコ笑っていた人が突然死ぬ。
外傷もなく、特別な病気でも、何かの発作でもなく。
それがロームス流の「殺し」だし、パリサイド流の「死」。
「タァーレルはパリサイドじゃないけど、そういうことじゃないかな」
ユウが小さく言った。
レイチェルと目が合った。
厳しさとお茶目な部分を覗かせている瞳。
でもいつもの輝きはない。
意識して、心の内を読まれまいとしている頑なさを宿した瞳。
ドアを叩く音があった。
警護についてくれているシルバックの声がした。
「失礼します。イエロータドが訪ねてきています。長官にお話があると」
「待たせておけ!」と、ンドペキが怒鳴ったが、レイチェルが厳しさを滲ませた声で言った。
「通してください」




