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432 一掬いだが、にゅーめんまで入っている

 うむう……。

 これは。


 どうすればいいのか。


 ガーデンの入り口付近からレイチェルの執務室にかけて、市民がぎっしり立ち竦んでいた。

 どの顔も青ざめて、唇を震わせている。

 至るところからすすり泣きや嗚咽が聞こえてくる。


 無理もない。


 このグループ以外にも、エリアREF方面に逃げた人達、ユーペリオンの奥、今は崩落した岩盤で行き止まりになっている資材庫の方へ逃げた人々がいる。


 ここにいるのは、そこまで逃げずに踏み留まった人々。



 より遠くまで逃げた人々の様子はどうだろう。

 怪我人など出てはいないだろうか。

 エリアREFとの接点、サキュバスの庭に入るには水系を超えなくてはいけない。

 無事に渡れただろうか。

 しかもそれ以上、地上に近づくと環境が汚染されている。危険だ。



 パリサイドがいつ何時また襲ってこないとも限らないが、まずは平静さを取り戻さなくては。

 チョットマの歌か。


 しかし、当の本人にそんな気はないようで、群衆にちらりと目をやっただけ。

 ボニボニを筆頭に、警察官が市民を落ち着かせようとしていた。




「あ、イペ」


 チョットマの声に振り向くと、イペが手押し車に暖かい飲み物を積んで、配り歩いていた。


「手伝おうか」

「ううん。あなたにはあなたのもっと大切な仕事があるでしょ」


 チョットマの申し出をイペは断って、差し出された手に手にカップを手渡している。


「イコマさんもおひとついかが」


 差し出されたカップからは、食欲をそそるいい香りが立ち上っていた。

 アサリの味噌汁だった。


 うまい。

 あっさり味。しかも、一掬いだがにゅーめんまで入っている。



「イエロータドの発案」

「へえ」

「気持ちを落ち着けるのにいいからって」

「よく準備できたな」

「彼は彼なりに、できることをやろうとしてるみたい。私も協力することにしたの。捨てたもんじゃないよね。あっという間に手伝うという人が百人以上になったのよ」

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