430 こんなとき、父親としてどうすれば
「切り殺された? どんな武器で?」
「ものの見事に体は真っ二つ。上半身と下半身は三十メートルも離れたところに弾き飛ばされていた。回収作業は初めている。見るか?」
「いや」
「本人達は、自分の身に何が起きたのかも分からなかったはずや。どんな武器を使ったのか、まったく分からん」
別の意味で不安になった。
「防衛部の仕業。そう思ってるやつ、いないだろうな」
目に見えぬ速さだったのなら、そう勘ぐる市民がいるかもしれない。
「それはない」
それならいい。
それにしても、二人だけ?
「殺された二人は? どういう?」
「身元が知れれば、何か分かるかもしれない」
しかし、そうは思えなかった。
根拠はない。
なんとなく。
なぜなら、これはロームスの実験。
スジーウォンが隊員達に指示を出しながら、辺りを見て回っている。
水系の縁に等間隔に並ばせていた隊員を、バリケードの内側に後退させようとしている。
水際にいれば、パリサイド上陸地点に当たった隊員の命はあってないようなもの。
今回、敵は隊員の間をすり抜けていったが、次回もそうだとは限らない。
アヤとチョットマが駆け寄ってきた。
サリもやってくる。
装甲を身に着けている。
表情は見えないが、動きだけ見ると活き活きしているようで、イコマは胸を撫で下ろした。
アヤが手を差し出してきた。
「ノブお父さん、ここは危険。レイチェルの部屋まで下がってて。スゥお母さんは?」
「バリケードを壊しに」
「そう。内側からは簡単に開くのに」
チョットマは、「パパ」と言ったきり、何も言わなかった。
参った。
こんなとき、父親としてどうすれば。
アヤやチョットマをここに置いていていいのか。
これまでも二人は戦いに参加してきた。
その時も心配はしたものだが、さすがに今回は……。
しかし、二人の手を引いて連れ帰りたい気持ちは抑えるしかない。
それにまずはレイチェルとの会議だ。
堂々とそこに連れて行けることで、まずは良しとしなければ。




