421 大海原に漂うタツノオトシゴの幼生のように
我々も、ロームスに対抗する方法をこれまで考えてこなかったわけではない。
しかし、ないんや。
圧倒的なアドヴァンテージを有するロームス。
絶望的な力の差。
比べようもない数の力。
人類は、大海原に漂うタツノオトシゴの幼生のように、なすすべはないんや。
だからこそ、アイーナはベータディメンジョンへの移住計画を推し進めた。
アイーナ自身はベータディメンジョンに移行する能力を持っているが、それはパリサイドの誰もが有する能力じゃない。
彼女の娘イッジにもその能力はない。
別次元への移行能力を持つパリサイドは全体のコンマ一パーセントにも満たない。
こんなのは、移住とは言わん。
敵前逃亡。
そんなそしりを彼女は憂えた。
グラン・パラディーゾという装置を作り、誰もが別次元への移行ができることをもくろんでいたわけや。
「もう一度、結論を言おう。この実験を止めさせる方法はない」
キョー・マチボリーの声が響いた。
いつの間にかキョー・マチボリーの身体、かつてのイコマの身体は透き通り、消え失せようとしていた。
「奴らの思い通りにこの実験が終わった時、この宇宙船も跡形もなく消されることになるやろう。海底に潜ったパリサイドには、もう船なんか必要ないんやから」
「キョー・マチボリー!」
「不服か?」
不服には違いないし、諦めることもできない。
「何とかならんのか!」
「知恵を出すんや。突破口はあるはず。これまで数百年間考えて出てこなかったが、それはパリサイドとなった者が考えていたからかもしれん。地球人類なら先入観に囚われず、妙案が飛び出すかもしれんぞ。ん?」
しばしの間を置き、
「クルーから連絡や。レイミが殺された水系の底に、ネックレスが沈んでいるのを見つけた」
「ほう!」
「引き上げることができないけどな。粒子やから」
と、キョー・マチボリーが舌打ちした。
「ふん。来やがった。くそったれめ」
キャプテンルームの天井を見上げた。
空はすでに明るい。
朝陽を横切って二体のパリサイドが翼を広げて旋回していた。




