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419 究極の実験 後のない実験

 キョー・マチボリーの舌は一段と滑らか。



 その時、人類がどんな行動をとるのか、それを見ようとしているわけや。

 どんな精神状態になり、人類の社会が、人々個人がどう反応するか、それを見ようとしている。

 これが今回の実験の目的ではないか。

 もちろん、人類の行動や精神状態の「どの部分」にフォーカスしているのか、それは分からん。


 これまでもパリサイドとなった人類はロームスによって様々な試練を受けてきた。

 しかし、いずれも生き延びてきたわけや。

 苦しんだ挙句、絶望的な状況になりながらも、その試練を潜り抜けてきた。



 今回はどうか。


 オーエンを棟梁とする未来からやって来た人類がロームスのせん滅をもくろんだ。

 その直後の試練なんや。

 これまで通りに、最終的には事なきを得た、ということになるかな。



 ロームスは非常に高度な知能を有する生命体。

 しかし、その精神、つまり「心」には大きく欠落しているところがある。

 人が持っている様々な感情。

 ロームスはそれが欲しい。

 己に欠けている、感情というものを。



 今にして思えば、これまでに与えられた試練においても、人々の感情の変化を読まれていたように感じる。


 絶望や怒り、諦めや悔悟。

 悪意や善意、自己陶酔や欲望。

 優越感や劣等感、感謝の気持ちや軽蔑の心。

 許す心や復讐心。

 ポジティブな心やネガティブな心。

 そういった人々の感情。


 欲望と一口に言っても、その対象はさまざまにあるやろ。

 食欲、色欲、物的欲望、命に対する欲望や、快適を求める欲望、名誉欲や怠惰を求める欲望。

 数え上げればきりがないほどの欲望を人類は有している。

 ロームスはそれらをひとつずつ検証しているように思えるんや。



 ロームスが今回は何を得たいのか、何度も言うがそれは分からん。

 しかし、今回ばかりは究極の状態を作り出すかもしれない。

 要するに、本当に後がない状態。


 将来の種となるべき百人のパリサイドを海底に隔離保存させたことを考えても、完全に抹殺する気さえあるかもしれん。

 じっくり観察しながら。


 もちろん、人々の体内に入り込んだ微粒子によって。

 食料を謝絶し、究極まで飢えさせておいて、一週間に数人ずつ殺していくというような方法で。


 究極の実験。

 後のない実験。

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