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414 崩壊したケーキ

「かいつまんで言うとやな」


 キョー・マチボリーが切ってきたケーキは、それこそオーソドックスなイチゴショートだった。

 ケーキの大きさに比べて不釣り合いな小さな皿に載せられていた。


 あっという間に横倒しになってしまったケーキを、キョー・マチボリーは不器用にフォークで突き刺しては立て直そうとしている。

 そうこうするうちにスポンジが崩れてきた。


 こういうドンくささは、かつての自分と同じ……。



 キョー・マチボリーは、ケーキを睨みつけて言う。


 あの白い霧。

 それがロームスであるが、それがすべてではない。

 粒子一つ一つが生命体なのかというと、そういうことでもない。

 その集合体が生命体だと言える。



 転げ落ちたイチゴをとうとう指で摘み上げて、解説を始めてくれた。


「つまり、粒子一つ一つは意識を持ってはいるが、それはとてもとても小さな意識の欠片というべきもの。その欠片ひとつで思考体といえるようなものではない」


 ただ、その意識の欠片は互いに繋がっている。

 ネットワークされていると言った方が分かりやすいかもしれない。

 その欠片が膨大な数で繋がり合い、ある方向を向くことによって、ロームスの意識が形作られていく。


「そういう意味で、ロームスは宇宙空間に無限の数として存在しているように見えるが、実はたった一人、というわけや」


 白い霧は小さいけれども、それはそれで莫大な数の粒子の集合体。

 霧の粒は小さいといえども質量もあるし体積だってある。

 しかし、それでも、そこに生み出される意識の欠片はとても微弱なもの。

 一から十までのどれか、というような。



「あんたの指先が物に触れたことを感じる時、指先にあるいくつもの神経がその触れた物から圧力を受ける。その情報が信号として脳に送られ、脳は、イチゴを摘まんだと感じるわけや」


 キョー・マチボリーは、イチゴを口に放り込んだ指をなめた。



 触れたという情報だけではない。

 冷たいのか熱いのか、固いのか柔らかいのか、動いているのか静止しているのか、ということも脳が判断する。細胞が判断するわけじゃない。



「あの白い霧ってのは、指先のたった一つの神経細胞の極小版だと思えばいい」

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