413 闘いは始まっている
「実際、ノブには伝わっていたと思う」
ママはもう疲れた顔をしていなかった。
見開いた瞳が輝いていた。
「私はそうやってロームスの意思を、どんな時にも退けてきたのよ」
アヤちゃんが頷いている。
「ロームスには感情はほとんどない。いえ、なかったと言うべきね。あったとしても、愛というような複雑な感情はなかった」
「……うん」
「それはそうよね。ロームスは、生命体という意味では無限にあっても、意識という意味ではひとつだから。相手がいないんじゃ、愛なんて感情は生まれっこないからね」
「分かった……」
とアヤちゃんが言い、チョットマも頷いてみせた。
「ロームスは言語を持たなかった。私達人間の言語を習得し、感情に働きかけようとしてきた。私達の感情に興味を持ったから」
「うん……」
「それが通説。だから彼らはさまざまな実験を仕掛けてきたというわけ」
チョットマはコモレビーのことを思った。
そうなの?
「お二人さん。好きな男性、いる?」
ママが笑う。
アヤちゃんは言葉に詰まってしまったし、チョットマも唸ってしまった。
「今、愛する人がいないなら、すぐに作るか、できなければ、ノブやンドペキのことを本気で愛して。ロームスの意識を遠ざけるために。私やスゥは嫉妬しないから」
と。
ーーーー闘いは始まっている
ロームスの声が聞こえた。
いつになく、明瞭な声だった。
闘い? 始まった?
コモレビー、それ、どういう意味……。
このタイミングで言うって……。
まさか……。
ママ……、私、どうすれば……。




