410 二人ともよく聞いて
ママは首を長くして待ってくれていた。
三人だけで話を、と小さな個室に案内された。
扉を閉めるや否や、二人はママに抱きすくめられた。
「二人ともよく聞いて」
抱き締めたままママが言った。
「あなた達二人はやっぱり特別ね。私とノブの娘だからってことじゃないけど、他の人とは全く違う」
チョットマはママの言いたいことがすぐにピンときた。
きっとパリサイドに変身したことだ。
「あなた達とスミソ、特別にロームスと近いところにいるみたい」
やはりそうだ。
ママが身体を離し、目を覗き込んできた。
「大丈夫だとは思うのよ。でも、いざというときのために」
不安が顔に出ていたのだろう。
また抱き締めてくれた。
しかし、すぐに腕を緩めると、柔らかい顔になった。
「座って話しましょう」
狭い部屋に木の小さなテーブル。
レイチェルの執務エリアだけのことはあって、照明だけは煌々と点いている。
しかし、テーブルとイス以外の調度はなにもない。
殺風景な部屋。
何を話してくれるのだろう。
ママ……。
誰が見てもわかる。
絶望的に疲れている。
「休んだら?」
「うん。ありがとう。でも、今が踏ん張り時、でしょ」
「でも」
「いいのよ、この私、これしきの事で倒れやしないから。それより、心配なのはあなた達のこと」
テーブルの上で組んだ手には血管が浮き出て、指は真っ白だった。
「あなた達がパリサイドになったこと、とやかく言う人はいないと思うけど、どう?」
「いないよ」
アヤちゃんも首を横に振る。
「それはまず一安心」
なるほど、そういう恐れがないとは言えないのか。
「まさか、敵と考える人がいてるかも、ってこと?」
アヤちゃんの声が少し震えているような気がした。
「心配しないで」
「でも、私、あんなふうになっちゃってたことがあるし」
あ。
そうだった。
すっかり忘れていた。
アヤちゃんはパリサイド星域で、ステージフォーという狂信者集団に拉致され、いわばロームス教に洗脳されていたことがあった。
「そんな! アヤちゃんは被害者、じゃない! なぜ、今頃そんなことを」
「チョットマ、だから心配しないで。そんなことを言う人はいないし、もしいたとしたら、そいつは私が始末する」
始末!
ママが本気で言っていることは、握りしめた手がますます白くなったことでも分かった。
ママは元パリサイド軍の幹部。
その気になれば……。




