4 華麗なる美しい死を汚されてたまるものか……
私達二人は、ここに移り住んだ。
誰にも告げず。
幸い、上の階層に登っていきさえすれば、生を維持するだけの食料や水、そして身の回りの品々はある。
あの狂人共と、いがみ合うばかりの連中と、一緒にいることはない。
愛し合う私達は二人だけで、この黄金郷で暮らしていけばいいのだ、と。
手に入れた物を誰に見せびらかすわけでもない。
裕福な暮らしを望むわけでもない。
財宝の力を借りて、人々を支配したいわけでもない。
身に着けたいとさえ思わない。
これがすべて我が物であるという満足感だけで十分。
それが、生きていこうとする意思に繋がっていたのだと思う。
女は自分の手を見つめた。
今日は人の手。
あの手ではない。
小さくため息をついた。
そして財宝の山々に目を細めた。
人影が見えたように感じた。
と同時に、
うっ。
まただ。
あの強烈な悪寒が襲ってきた。
人影が見えたように感じても、それが幻覚であることは知っている。
女は浅い息をして、目を閉じた。
瞼におぞましい影が踊っては消える。
この男ほどではないにしろ、自分の精神にも歪みが生じ始めていることは気づいている。
誰にもやらぬ。
この財宝は私のもの。
掠め取ろうとする者は、許さぬ。
私がこの手で始末してやる……。
時々襲ってくる悪寒は、その存在を予告している。
死に絶えたと思っていた奴らだが、生き残った奴がいるのだ。
そいつが近づいている。
が、まだ、この場所を見つけてはいないはず。
いや、本当にそうか。
一つや二つ、いや、百や二百、盗まれたところで気づきはしない。
知らない誰かがここに潜り込んだ気配もするのだ……。
明日、この男を奮い立たせ、確かめに行かねばならぬ。
もし、奴らが死に絶えていないとしたら……。
奴らがこの場所を嗅ぎつける前に殺さねば……。
私のベッドを、墓場を、荒らされてなるものか……。
華麗なる美しい死を汚されてたまるものか……。




