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398 猫舌なんか?

「見当がつかん」


 レイミ殺害事件の真相について、キョー・マチボリーはそう切り捨てた。


 今やキョー・マチボリーは、目の前にいる。ベルベット地の座面に浅く腰掛けて。

 湯呑みを両手で包み、茶まで啜っている。

 最初からそうしてくれていれば、もっと違う接し方をしていただろう。

 もちろん、自分ではない誰かの姿に向かって。


「犯人はおろか、状況についても」

「明らかに殺されたのはレイミだけ。キャンティは消された。タァーレルは死んだが、死因ははっきりしない。例の二人は溺れて死んだ」

 ゴーダは殺されたわけだが、ゴーダを狙ってというわけではない。


「ないな。思いつくことは」


 キョー・マチボリーは、組んだ足を投げ出し、偉そうにふんぞり返っている。

 まるで、あの頃の自分のように。



「猫舌なんか?」


 キョー・マチボリーは湯気を吸い込むばかりで、一向に茶を飲む様子がない。

 実際、自分は熱いものが苦手で、それはアギになるまで変わらなかった。

 ユウが熱々のカレーうどんを食べ終えても、自分はまだ一筋も口に入れられず、電車に乗り遅れたりしたものだ。

 いいとこの子だからね、おばあちゃんにいつもフウフウしてから食べさせてもらってたんでしょ、とユウにからかわれたものだ。



「ネコジタ?」

「すまんな」

「いやいや、なかなか面白い経験や。舌がヒリヒリ」


 スゥがまたニヤリとして二人の顔を見比べた。



 イコマはさらに問うた。

「おかしいわな。人々を殺していく意図があるなら、なぜこんなに緩慢なんか。そこが分からん」


 もう一人のイコマはちらりと目を上げたが、相変わらず湯呑をフウフウやるだけで、結局テーブルに置いてしまった。



「ロームスの意思」あるいは「ロームスの実験」

 その中に、ひとつのシナリオとしてレイミの殺害シーンがあるなら、それはひとつのバラバラのエピソードではなく、連続したエピソードの始まりではないのか。

 しかし、あれから明らかな殺人は起きていない。

 ということは、ロームスとは無関係な出来事なのだろうか。

 自首して来たサスケイの言う通りなのだろうか。


 そもそも殺人などという極めて「人間的な」行為をロームスに結びつけて考えることに無理があるのかもしれない。

 とも、思っていた。

 しかも、レイミは胸にナイフを突き立てられて死んでいたのだ。

 そんな殺害方法をロームスが採ったと想像する方がおかしいのだ。

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