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397 怒りはあっさり冷えて

 一瞬で沸いた怒りはあっさり冷えてしまった。

 船長に文句を言っても始まらない。


 秘密にしておきたかったことはたくさんあるが、今となっては大したことではない。

 恥ずかしかったこと、嘘をついたこと、騙したこと、情けなかったこと、劣等感に苛まれたこと、汚いまねをしたこと。

 そして人を傷つけたこと。


 そんなことは誰にでもたくさんある。

 しかも、もう六百年も前のこと。

 いい加減、時効になっていいし、気持ちの上でも笑い飛ばしてしまえばいい。

 そう思えばいいだけのこと。



 ん。

 データがあるなら、最初から、その身体をくれてもよかったのではないか。


 まあ、そういうわけにもいかなったのだろう。

 切迫した状況の中で突き合わせている時間はなかったのだろうし、記憶を捨てたマトとの不平等が生じる。



「身体の交換は考えておく。それより、話を元に戻そうぜ」

「そうか。一瞬で済むんやけどな」



 実際は、ユウやスゥに意見を聞いてみたかった。

 もらったこの容姿も二年が過ぎて、かろうじて馴染んできたばかりだ。

 固執する気は全くないが、面倒は御免。そう思った。

 それに、「若かりし頃」の生駒延治を、ユウもスゥも知っているわけではない。

 ユウと知り合ったのは四十代。その前の姿に戻ることを、喜ぶのかどうか、自信がなかった。

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