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396 なっ! あんた、恋って!

「私もな、そろそろ人並みの肉体も持っておかないと、いざというときに困るかもしれんから。それにレイチェルは恋をしろっていうし」

「なっ! あんた、恋って!」


「らしくないやろ。冗談やがな。もうそういう人間やない。まあでも、交換したくないなら、それでもいい。私はどっちでもいい。どうせ肉体は捨てた口や。あんたもそうやろけど」



 スゥが湯呑に手を伸ばして、お茶の香りを胸に吸い込んでいる。

 そして、湯気越しにイコマともう一人のイコマの姿を見比べて、目を細めた。


 神の国巡礼教団は、地球を旅立つとき、人類が所有しているデータというデータを余すところなく複写して持ち去ったという。


 彼らも人の子ならば、人類の歴史や文化、人として進化してきた事実さえもすべて捨て去ってまで宇宙に飛び立ちたかったわけではない。


 当然、彼らも地球に住む人類と同様、自分達が人類の長い歴史の最先端にいることを示す拠り所となる何かが、欲しかったのだ。

 使う使わぬに関わらず、ありとあらゆるデータを集めたという。

 それが、宇宙船スミヨシに集積されている。



 ということは、誰のものであれ個人情報はすべてキョー・マチボリーの手にある。

 大昔の肉体のデータを使って、そっくりさんを作れるのだから、経歴などの情報は言わずもがな。


「宇宙船が飛び立って以降の地球人類のデータはない。だからレイチェルやチョットマのデータなんてのはないんや」

「ふうん。そうか。それは安心やな」

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