395 その身体、気に入ってるか?
「怒るなよ。怒る前に言っとくけど、私も悩むんや。さっきの話みたいになったらどうしよってな。一人取り残されてロームスに対峙するなんて、考えただけで身の毛がよだつ」
だから、なんだというのだ。
だから人の姿を借りていいのか!
「怒ってるやろ」
「当たり前や!」
思わず怒鳴ってしまった。
「まあ、聞けよ」
「何をや!」
自分に見つめられているような気がした。
二十代。
大学を出て、希望した設計事務所に何とか潜り込み、意気揚々としていたあの頃。
ガキではあったが、元気いっぱいで、素晴らしい毎日を送っていたあの頃。
日本はバブルに突入し、夢を語ることになんの躊躇もなかったあの頃。
その頃の自分が目の前にいる。
その自分の顔が、一瞬、曇った。
そして話し掛けてきた。
「イコマ、あんた、その身体、気に入ってるか?」
む?
それとこれと、何の関係がある。
「もし気に入ってなかったら、交換しないか」
「えっ?」
「その身体、いや、その肉体の組成というべきかな、組織の構成法則というべきかな」
「何を言いたい!」
「それ、私なんや」
「ええええええっ!」
「大阪に住んでいた私の若かりし頃」
「なんやて!」
「だから、あんたを他人とは思えんかった」
イコマは思わず髪に手をやった。
そして意味なく顔をさすった。
そうだ! しかし、この身体は日本人じゃない。
「大阪にも外国人はたくさん住んでたやろ」
「そ、そうなんか……」




