388/564
388 レイチェルの希望に背くことに
チョットマが返答に困ることはなかった。
「すまない。ちょっと最近、おかしいんだ。精神が落ち着かないっていうのかな。そもそも、死体の傍で言うことじゃないよね」
スミソはあっさりそう言うと、無理やりな笑顔を作った。
でも、長い睫毛が濡れていた。
「僕はチョットマと一緒になりたいと思っていた。でも、もうそれはやめた」
やはり返答に困った。
「僕は女だから」
女だから女と結婚してはいけないという法はない。
チョットマは、背中が泡立つのを感じた。
私……。
もし。
もし。
もし、スミソにプロポーズされたら。
私、どう応えればいいのだろう。
スミソは大好き。
愛している、と言える。
大声で。
でも。
しかし、スミソから求婚されることはなかった。
「レイチェルの希望に背くことになる」
たくさん子を産んで人類の再興を。
そんな……。
そんな理由で……。
でも、そうよね……。
「チョットマ、聞いてくれるかな。でもね、僕はこの体を恨んじゃいない。むしろ、感謝して、感謝して、しきれないんだ」
どういうことなんだろう。




