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鬼とユウコ先生の節分戦争  作者: 星狼


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8/8

節分戦争

門の鉄柵越しに、ユウコ先生の声が静かに、穏やかに響き続ける。彼女はコートの袖を軽くまくり、両手を胸の前で軽く組み合わせて、鬼の瞳をまっすぐに見つめた。鬼は変わらず、無表情のまま。赤黒い衣の裾が風に揺れる音だけが、二人の間に漂う。


「鬼さん、これなら……」


先生は右手を軽く差し出し、掌を上に向けた。まるで、園庭全体を優しく包み込むように。


「子供達は『怖い戦争』じゃなくて、『賢く協力して鬼さんを退治した!』って達成感いっぱい。鬼さん三人とも、体は痛くないけど、心がポキポキ折れて『今日はもう帰るよ~』って笑顔で退散できるよ」


彼女の声は柔らかく、確信に満ちていた。冬の息が白く、鉄柵の隙間を抜けて鬼のほうへ流れていく。


「先生は、子供達を守りながら、鬼さんとも『遊び』で向き合いたいんだ。ガスガンみたいな危ないものは使わないけど……これで本気で『やっつける』作戦だよ」


ユウコ先生は少し間を置いて、目を細め、静かに微笑んだ。


「どう? 鬼さん、この作戦で心が折れそう?」


鬼の心は折れている。

結構前から折れている。

ほとんど複雑骨折状態だ。


この節分戦争は、鬼が勝つ。

間違いなく勝つ。

仲間二人の牙は本物で、血の匂いを纏い、子供達の小さな命など一瞬で消し去れるだろう。


でも、今、目の前にいるユウコ先生には圧倒的な敗北をしている。

完全敗北だ。

ユウコ先生の勝ちだ。


もう誰が勝ちで、誰が負けなのかさっぱりわからない。


鬼の思う事は、勝ち負けなどではなく

「これ、どうしたもんかなぁ? もう一週間切ってるぞ」

との焦りだけだ。


笑顔で話すユウコ先生。

その言葉はもう耳に届いてはいない。

そんな中、鬼はふと思う。


「……そういや、桃太郎とかいたな? アレ、呼べばなんとかなるのか?」


節分戦争までもう時間がない。

果たして、子供達は清く・明るく勝利を手にする事が出来るのだろうか?


冬の夜は、さらに深みを増していた。

鉄柵の向こうで、ユウコ先生の笑顔だけが光っていた。

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