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ローザお嬢様...



席についたが、僕のことばかりが話題になる。

伯爵は聞く、というより確認する、というように僕のことを良く知っていた。

でも前世持ちということは知らなかったようだ。

けれど、それも時間の問題と見えた。

だって僕は特に隠してなかったし図書館の美女3人は知っている。

「前世?きみは前世持ちなのか」

「はい」

「なるほど、納得だ。それで、そのしっかりした受け答えか。しかし、そういうことなら伯爵家として、きみを支援させてくれないか」

「え、と...」

「伯爵。ありがたいお話ですが結構ですわ。アルフレートは実力で優秀なことを認められるでしょうから。そのお気持ちだけで」

終始、黙って聞いていた母が伯爵の申し出を断った。

僕も断りたかったので助かった。

特に親しくもない、なるつもりもない貴族に借りを作るなんて。

正にハイリスク・ハイリターンだ。

「そう、か。それは残念だ。だが、困ったことがあれば一番に頼ってほしい。是非、力になろう」

ローザお嬢様が伯爵の袖をちょいちょい、と引っ張る。

「ローザが、きみを大層気に入ってね。ローザが自身の従者に望んだのだが、きみの事情では無理だな。そこで思ったのだがローザは、きみの2つ上で7歳だ。年も近いしローザの話し相手に時々、邸を訪ねてはくれないかな。もちろん勉強を優先させてくれて構わない」

えー、めんど...

「うちの図書室を特別にきみに開放しよう」

「喜んで」

本に釣られたが、まぁこれくらいならいいだろう。いい、よね?


せっかく来たのだから、と、お嬢様が伯爵邸の自慢の温室とやらを案内してくれることになった。

お嬢様、めちゃくちゃぎこちない動きだけど大丈夫か。


温室に着くまで、ずっと無言だったし、温室に着いても「私は植物には詳しくないの」と言ったっきり無言だ。

説明は、迎えにきてくれた男がしている。

薬草もたくさんあって本の中でしか知らなかったものを本物を見れて嬉しかったが、お嬢様は、つまらなくないか?

お嬢様を見ると僕をガン見している。

...うん、つまらなくはなさそうでナニヨリ。

「ローザ嬢は、どんな植物がお好きですか?この温室にもありますか?」

「え?あ、はい。美しいものは好きですわ」

「たとえば?」

「え?たとえば?たとえばって...そ、そうですわね、アルフレート様のお顔も好きかもしれませんわね」

「え?」

「え?」

「あぁ、それは、ありがとうございます」

「お嬢様、好きな植物を尋ねられたのですよ」

あぁ、スルーしてあげればいいのに、男がご丁寧に教えてあげる。

「え?好きな植物、ですの?」

お嬢様は赤くなって「まぁ」とか「私ったら」とか言ってわたわたし、そのうち「もっと早く言いなさいよ」と男に八つ当たりしている。

理不尽...。



◇◇◇◇◇◇◇◇



私はローザ・クレメンティエフ。

クレメンティエフ伯爵の孫にあたります。7歳です。

ある外出した日のこと、ショウウィンドウの前で3人の少女が話しているのを見ましたの。

特に注目するようなことではなかったのですが、その中の1人が随分と綺麗な顔立ちをしていて周囲の目を引いているのがわかりました。

私も随分綺麗な顔で平民には惜しいものだと思ったときですわ。


「アルは、こんなドレスが似合いそうよね」

「えぇ?僕が着てもただの女装になっちゃうよ。2人の方が似合うに決まってるでしょ」


.....なんですって?

こ、この、天から降りてきたような美少女が男の子!?

迷子の天使です、と言われた方が、まだ信じられるわ。

少女たちは話しながら、どこかへ行ってしまいましたが、私は従者に今の子を調べるように言いつけました。

その日のうちには美少、年(わかっていても間違えそうになりますわ)は実はマイヤー男爵家という貴族の次男とわかりましたわ。

我が家の従者は優秀ですわね。

それに足繁く図書館に通う勤勉な子であることもわかりました。

こ、これは我が家に雇う、という手が使えるのではないかしら。

私の付き人、というポジションなら小さい子でもいけますわよね。

貴族の子息であれば身分は申し分ありませんし母親の身分のせいで男爵家にはいられないということならば、きっと生活に困っているのではないかしら。

少なくとも、それまでの生活とは全く異なる生活をしているに決まってますわ。

私が手を差し伸べれば、あの美しい男の子は私に感謝することでしょう。

もしかしたら、私を好きになってしまうかもしれませんわね。

ま、なんてことでしょう!

いけないわ!さすがに伯爵家の令嬢と男爵家の次男では身分違いというものね。

でも、そんな障害がある方が恋は燃える、と言いますわ。

そう言えば、あの恋の結末は、どうなるのかしら。

ウバァ(乳母)にまだ早い、と取り上げられてしまったけれど結末が気になりますわ。

どこにやってしまったのかしら。

いえいえ、そんな隠された本のことは今はいいのです。

今は、どうやって、あの天使な美少年を手に入れられるか...、まぁっ、嫌ですわ。

手に入れるなんて私ったら悪い女みたいですわね。

でも悪い女、というのも魅力的かしら?

男の人は悪い女にひっかかるのでしょう?お母様が言っておりましたわ。

それなら、そんな男をたぶらす(誑かす、の間違いかと思われます)ような悪い女になるのもいいかしら。

あらやだ。私は何人もたぶらしたい(誑かしたい、の間違いかと思われます、以下略)わけではありませんのよ。

あの美少年だけで...、まぁぁっ、違いますわ。

あんな美少年をたぶらすなんて、そんな。まぁ。なんてことを言うの?(誰も言ってない)



乳母「...元々、妄想癖のあるお嬢様でしたが、今日出会ってしまった綺麗な少年のせいで随分加速したようです。どうしてくれるのです」

従者「わたしは言いつけ通り、お調べしただけです」

乳母「はぁ...伯爵家の皆様に申し訳が...」




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