ダンスレッスンと治癒魔法
それから伯爵家のお嬢様に会いに2回程、お邪魔した。
いや、お邪魔したっつーか、呼び出されたっつーか...。
お嬢様は、口数の少ない人だったが問いかければ答えてくれる。
目が合うと逸らすくせに僕が見ていないとガン見していること、気づいていないと思っているのかな?
そして、伯爵邸に行く度に服をプレゼントされるので僕の手元には現在、3着の貴族の子供が着る服がある。
ブラウスくらいなら普段着として...、いや、着れねーな。
そんなわけでお嬢様に会うとき以外、用がないし、成長するから無駄じゃね?
まぁ売って何かの足しにすればいっか。
伯爵家の蔵書は流石に素晴らしく、いちいち伯爵(代理含む)の許可が必要だが借りることもできている。
お嬢様の相手くらい楽なもんさ。お釣りがくるよ。
などと思っていたのだが、風向きが変わってきた。
今日も呼び出されて、借りていた本を返し、お嬢様とお茶をしていたのだがお嬢様の母親が出てきた。
初めてお会いするが、なかなか綺麗な方だ。
「あらあら。まぁまぁ。本当に綺麗な子ねぇ。ローザが気に入るわけだわ。いいでしょう。ローザのお誕生会に呼ぶことを認めるわ」
その母親のお眼鏡にも適ったらしい。
お嬢様の8歳の誕生会に招待された。
極内輪のちいさなパーティだから気兼ねなく来て欲しい、と言われた。
てか、何が、いいでしょう、だ。
さすが親子。
だが、まぁ、それはいい。
誕生日くらい祝おうじゃないか。
問題は当日、お嬢様とダンスをしろ、だと?
無理だ。自慢じゃないが男爵家でもダンスは習っていなかったぞ。
そう言ったのにお嬢様のダンスの練習相手にもいいから、ここで習うように言われた。
「申し訳ないのですが、僕には荷が重すぎるかと...」
えー、勉強を優先する約束はどうした?と何とか断ろうかと思ったが母親の向こうで泣きそうな顔をぐっと堪えているお嬢様の顔を見たら、すごく悪いことをしているというか、いじめをしているような気分になる。
「...いえ、承知しました。ローザ嬢のお相手など光栄デス」
そして、そのまま別の部屋に連れていかれてダンスレッスンが始まった。
早速かよ...。
だが、僕よりもお嬢様がヘタで僕は何度も足を踏まれたり蹴られたりした。
これでも少しはマシになったのだとか。
マジか。
僕の方が少し背が低いとか、そういうことより根本的にお嬢様に運動センス?いや、リズム感?がないことが問題のようだ。
お嬢様の顔もだんだんと辛そうになってくる。あ、もしかして...。
「少し休憩させてください」
お嬢様と並んで椅子に座る。
冷たい飲み物が出てきてありがたい。
「ローザ嬢、もしかして靴擦れを起こしていませんか?」
「え...?そんなに痛そうな顔をしていましたか...」
「靴擦れくらいなら僕でも治せますよ。良かったら診させてください」
お嬢様はわかりやすく赤くなったが靴を脱いでみせた。
お嬢様は膝下丈のワンピースドレスだったので赤くなっているのが少し見えたのだが出血して思ったよりも酷かった。
でも、これくらいなら...。
あれから僕はギルド受付嬢のモニカさんに治癒魔法のコツを教えてもらった。
モニカさんは簡単な治癒ができると言っていたからだ。
でも聞いてふいた。
「いろんなイメージがあると思うけど、わたしの場合は体中のパワー、この傷を治してー、て願うの」
「願う?」
「そう。体の中にはケガや病気を治す、その人の治癒専門の魔法士がいてね?その魔法士さんに治してあげてー、わたしの魔力も使っていいからー、てお願いするの。そうするとぉ、体の中の小さな魔法士さんたちが、わーわーやってきて治してくれるの。わたしはそれを応援するの。がんばれー、て」
なんだ、そのメルヘン。仕事する小人ってか。
それがモニカさんの治癒のイメージ?
「ちょっとぉ。なんで笑ってるのよー」
「ご、ごめんなさい。モニカさん可愛いね」
「.....。 アルくんに言われると変な気分ね。はっ、もしかして馬鹿にしてる?」
「違う違う、ごめんね。モニカさんは本当に可愛いよ。いつもは美人さんだと思ってたけど今は可愛いと思って。本気だよ?笑ってごめんね?」
「...アルくんの将来が怖いわ」
「え?何?」
「んーん、なんでもない。それがアルくんだもんね」
ということがあったのだが結果を言うと僕はモニカさんより治癒魔法がうまくなった。
僕のイメージはダメージ部分の細胞の活性化だ。
出血していれば血小板の働きを強めることを意識するし、病気なら白血球の働きを強めることを意識する。
モニカさんふうに言うなら「血小板さん、がんばれー」「白血球さん、がんばれー」てところか。
ぷ。いかん、笑う。
まぁ僕の血液の知識なんて、そんなもんだから、この辺に意識を固め過ぎると、きっと治癒魔法の上限がココになってしまうから別のイメージを模索中だ。
モニカさんのイメージは僕には向かないことがわかったので早々に放棄した。
今の僕ならお嬢様の靴擦れ程度なら1分もあれば完治可能だな。
お嬢様の足元に跪き、傷ついている部分にそっと手の平を当てる。
手当てっていうでしょ?
そのイメージがあるせいかダメージ部分に手を当てた方が治りが早いのだ。
僕の頭の中では治療完了。
手を離してみると、ほとんど治っている。
僕の魔力が残っているから後は放っといても治る。
「...すごいですね。その年で治癒魔法を使えるとは」
傍に控えていた侍従の男性が本当に驚いたように目を丸くしている。
ダンスの講師の女性も驚いている。
そうなの?ココ驚くとこ?
「でも簡単な治癒はこんな感じですが、もっと酷いケガだと時間がかかりますよ」
「当然です。治癒魔法をどんな魔法だと思っているのですか?使い手などそうそういないのですよ?」
そうなの?モニカさんできるよ?
あ、でもルチアさんは痛みを止めることしかできない、と言っていたな。
他の魔法は凄いのに。
◇◇◇◇◇◇◇◇
ローザの日記より抜粋
〇月×日
今日はアルフレート様が会いに来てくれる日でした。
相変わらずキラキラしていましたわ。
そして、私の誕生会の招待状を渡して来てくれることを約束×××(させま、をぐしゃぐしゃと消した跡アリ)してくれました。
そして、ダンスのレッスンをしました。
アルフレート様との距離が近くて、長い睫毛だったり子供なのに細くて長い指だったり爪まで美しかったり色の白さだったり綺麗な虹色の瞳だったり動いているため上気した頬だったり
~略~
何の香かいい匂いがしたり動きに合わせてさらさらと靡く金色の髪だったり唇の赤さだったり口が少し開いた時の色っぽさだったり身長差から私を見上げる可愛さだったり少し汗ばんだ額に張り付いた髪がこれまた色っぽかったり。
あら、書き過ぎました?
でもアルフレート様の魅力は一言では言い表せませんの。
...いえ!言えましたわ。天使!
私の語彙力で一言で言い表せましたわ。さすが私。
まぁそれはともかく、拙いながらも、なんとか一通り踊れるようになったばかりでアルフレート様の足を踏まないかドキドキでしたが、数回(ココにインク染みアリ、おそらく正しい回数を書くか迷ったためインクを落としてしまったと思われます)程度で済みました。
アルフレート様は平気なお顔で「大丈夫ですよ、僕が下手でごめんなさい」と言ってくださいました。
下手だなどと仰っていましたがアルフレート様はステップをすぐに覚えてしまって私が足を引っ張っていたのは一目瞭然。
ダンスを習い始めたばかりの私にも、それくらいはわかりますわ。
ダンス講師のハーディン夫人が「一番簡単なステップですから、本来はすぐに覚えられるものですわ」などと言っていたのがイラッとしましたわ。
言葉が汚いですが、あの女(あんな女は、あの女で十分ですわ)、私には、あんなに厳しかったのにアルフレート様には、すごく優しくて贔屓ですわ。
お母様に言いつけてあげますわ。
と、思いましたが私は、もうそんな子供ではありませんわ。
言いつけるのはやめてあげます。(藪蛇になりそうなことに感づいた模様)
それにしても、アルフレート様は私が靴擦れを起こしてしまったことに気付かれるなんて流石ですわ。
私のことをそんなに見ていらっしゃるのかしら。痛いのを我慢して隠していましたのに。
いけないわ。
もしかして好きになってしまったのかしら...私のことを。
(ココで激しくぐしゃぐしゃとしたためにペン先を1本ダメにしてページにも穴が空いた模様)
しかも、私の足に触れて、あっという間に治しておしまいになったの。
汗をかいたから臭くないか気になってしまいましたが、きっと大丈夫ですわ。
私は貴族の令嬢ですもの。
頭がよろしい上に魔法にも長けていらっしゃって綺麗でお優しいなんて出来すぎですわ。
後で、これを知ったおじいさまが「ローザ、彼とずっと仲良くしなさい。嫌われるようなことは絶対にしてはいけないよ?絶対にだ」と少し怖い顔で言いましたの。
そんなこと言われなくても嫌われるようなことなんてしませんわ。
ええ、絶対ですわ。
あー、書きすぎて手が少し疲れました。
アルフレート様のいらした日に日記を書くと、いつもこうですわ。
侍女「ウバァ様(ローザがウバァと呼ぶため定着、本来はちゃんとした名前あり)わたしは、あの日記が怖くて、とても読めませんわ」
乳母「私もです。でも、そもそも人の日記を読むなどはしたないことよ」
侍女「もちろん読んだりなんてしませんが、触るのも怖いです...」
乳母「それは...否定できません、わね」
これでも日記の抜粋なのだから、どんだけ書いたことになるんでしょうね。
アルフレートの容姿が初めて出てきましたが虹色というのはアースアイとよばれるような目です。
アルフレートの場合は青メインのアースアイです。
あー、アースアイ、ナマで見てみたいなー。




