2年生
魔法士養成学校に入学して半年と少し経ちました。
いや、特に何事もなく楽しく学校生活を過ごしております。
そして、僕、2年生になりました。
そ。
早速、飛び級しました。
1年のテストは簡単だったよ。
実技もあるんだけど水と火と氷を作り出しただけでOKだった。
水なんてコップに水を満たせることしかしてないし、火だって手の平にポッと出しただけ。
氷もウイスキー飲むのに良さそうな大きさを作っただけなんだけど。
でも先輩たちの話では、1年は複数の魔法を見せられればOKらしいからいいのかな。
またイチから交友関係を構築かー、と思ったけれどルカも飛び級していた。
ルカ1人だけでも一緒に2年になれて嬉しい。
1年から2年の飛び級は、そんなに珍しいことではなく、毎年のようにいるらしい。
ただ2年から急に難しくなって卒業を諦めてしまう生徒もいるそう。
それは悔しすぎるよね。
だから以前、お嬢様に聞いた9歳で卒業という記録が如何に凄いかわかるというものだね。
あ、あと全くのイチから、というわけでもなかった。
お嬢様のお茶会に何故か最近他の女の子たちも呼ばれていることがあって、その中の1人が2年にいたんだ。
アンジェラ・ウィルソンという子爵家の御令嬢だった。
挨拶したら「待ってましたわ。アルフレート様はきっと飛び級してくると思っていましたもの」と言われた。
照れる。
2年の教室は最初、少しぎこちなかったものの、すぐに慣れた。
この学校、基本いい子と変わった子しかいないみたい。
貴族が平民をいびるみたいなことも聞かないし貴族階級の人たちもそんなに偉そうにはしていない。(例外もいるが)
ここでは実力主義、ということもありそうだ。
とりあえず順調だな。
あと半年の間で3年進級の資格を取って、また飛び級だ。
飛び級を狙っているけれど、もちろん魔法開発にも勤しんでいる。
今日はルカに手伝ってもらってバリアのテストをしようと思っている。
前から考えてはいたんだよね。
魔法を向けられたら相殺するとか跳ね返すとかしかできないな、て。
しかも個。
複数のいろんな方向からの攻撃を1発で防ぎたい。
マンガとかであったような自分を包み込むシールド、障壁、バリア。
呼び方は何でもいいんだけど魔法も物理攻撃も受け付けない、みたいなことができたらいいのに、と思っていた。
だけどバリアの原理って何だよ、と考えてしまって、ずっとできなかった。
でも魔石は固い。頑丈だ。
魔石を自分の周囲に張り巡らせることができれば、それで大体は守れるんじゃないかと思ったんだよね。
自分で攻撃をしてみてもいいんだけど他者と自分で違いがあったら嫌だな、と思ってルカに協力をお願いした。
自分にドーム状にシールドを張る。
なんとなくキラキラしているのがわかる。
「おぉ、綺麗だな。でも薄くないか?これで大丈夫なのか?」
「それを確認するためにルカにお願いしたいんだよ」
「そっか、そうだよな。じゃ最初は小さい攻撃な」
ルカは、そう言うと落ちていた小石を拾ってポイッと僕に投げてきた。
当たったとしてもケガするほどじゃない可愛い攻撃だ。
だが、小石は僕に当たることはなくキラキラに当たって撥ねかえった。
「お!跳ね返したな」
「うん、次、頼む」
「よし」
ルカは砂を掛けたり、蹴ったり、ペンを突き刺してみたりしたが、砂粒1つ入ってきた様子はない。
蹴ったときは尻餅をついていた。ちょっと笑いそうになったけど協力してもらっている立場から堪えた。
「よし、次は魔法な」
ルカは火炎放射器のように火を放った。
物理は小石スタートだったのに魔法はいきなりすぎやしないか?
けれど僕はシールドのお陰で熱さも感じなかった。
上から水を掛けられる。
シールドの周りの土がビシャビシャになっただけだった。
ルカの周囲に嵐のように風がふく。
けれど僕の髪が靡くことはなかった。
「スゲーな、これ。どういうイメージなん...おわっ!」
ルカがシールドに手を触れようとして、そのまま僕に倒れてきた。
僕より30センチは大きいルカを慌てて支えるが、ムリだった...。
一緒に倒れこんでしまった。
「痛って...、ルカ、何してんの」
「いや、わりぃ。シールドに触れようとしたら素通りしちゃっ、て...」
ルカは僕を見つめたまま、どんどん赤くなっていく。
「...なに考えてんの?」
おませさんめ、違うか。
「違うっ!何も考えてないっ!」
ルカは僕から、すごい勢いで離れると「お前が悪いんだよ、いや違う別に悪くない。お前の顔だ。顔、顔が無駄に綺麗なせいだ」などと言っているが、ほとんど聞いてなかった。
なんでルカはシールドに触れなかった?
風も通さなかったのに。
悪意?いや、ルカの全てに悪意なんてあったか?
僕の認識の違い?
ルカに攻撃を仕掛けて欲しい、と言ったから攻撃は跳ね返したい、と思っていた。
ルカ自身は攻撃じゃないし友達だ。
跳ね返したい、なんて当然思ってない。
...だから、かな?
なぜか僕をジト目で見るルカに言った。
「ねぇルカ。僕にもう一度触ってみて?」
「...は?...いやいやいや、お前こそ何考えてんだ?僕は何もしてないからな」
僕はわけわからんことを言い始めたルカを無視してシールドを展開する。
「ほら、触って」
「さわ...、そっちかよ」
ルカは何かを諦めたような顔をして手をパーにすると、そっと指先だけでシールドに触れた。
「あ。さわ、れた...。なんか、つるっとしてるなぁぁぁっと!」
今度は倒れなかった。
その代わり、僕はルカに頭を鷲掴みされた。
不快。
「おい!前もって言えってーの」
最初は何も入ってこれないように考えて、ぺたぺた触っているときにルカを許可してみたのだ。
「うーん、なんか面倒なシールドが出来上がっちゃったみたい」
「うん?面倒?何が?普通に凄いだろ」
「そーかな。最初にシールドの中に何も入ってこれないようにするのはいいけど本当に何も入れなくなっちゃう。僕が許可しないと僕を助けようとする手も入れない。僕が許可を出せる状態ならいいけど、そうじゃなかったら?僕自身なら、その可能性は限りなく低い。でも、例えば僕がルカにシールドをかけて守っているつもりでもルカを助けようとする他の人がルカに近づけないんだよ?」
「あー、なるほど?」
「最初から仲間はOKとか悪意がなければOKとか許可の条件を考えるのもアリだけど裏切りや、本人には悪意はないけど他人の悪意を持っていたら?ね?面倒じゃない?」
「確かにな。害意をイメージするのは難しそうだ。けどさ、シールドとしての目的は果たしてるから、やっぱ凄いと思うぜ?」
うーん。でもマンガのシールドとは違うんだよなー。
コレジャナイ感があるんだけどルカにうまく説明できる自信はない。
◇◇◇◇◇◇◇◇
アルフレートは僕の友人だ。
こいつとは魔法士養成学校で出会った。
最初は女の子だと思っていた。
アルフレートなんて名前だけど性別を疑うこともなかった。
それくらい完璧な理想の美少女だと思った。
ところが男の子だと言ってきた。
僕だけじゃない、クラス全員が驚いた。
アルフレートは、きょとんとした様子で「そんなにびっくりすること?」みたいな顔をしているが、びっくりするだろう。
そして、アルフレートは前世持ちで桁違いの魔力を持っていたし魔法も凄かった。
話していると勉強になるし楽しかったので一番の友達になった、と思っている。
アルもそうだよな...?
アルが「試したい魔法があるんだけど手伝ってくれない?」と言ってきた。
...見上げるな。いや、身長差あって仕方ないんだけど。
...首を傾げるな。可愛いけど。
「ルカ都合悪いの?じゃ、仕方ないか...誰か...」
「やるやるやる。いつだ。今日か?明日か?」
アルが他に手伝ってくれる人を探そうとした瞬間に、その場がピーンと張りつめた。
アルを女共の餌食にはできねぇ。
おかしなオーラ出してる男の餌食にもできねぇ。
アルはシールドという魔法のテストをしたいと言う。
物理と魔法の攻撃を仕掛けてみるがアルの立っている位置を変えることすらできなかった。
キラキラしていて綺麗だから触ってみようと手を伸ばしたが、手は空を切り、そのままアルの方に倒れてしまった。
アルは僕を支えてくれようとしたが体格差があり過ぎる。
結局、アルを下にして倒れてしまった。
慌てて手をついて離れようとしたがアルを見て思考停止、動作停止するのが自分でもわかった。
なんか...ヘンな色っぽさがあって、どこかぶつけたのか痛い表情とかが、なんだかとてもエロく感じてしまった。
「...なに考えてんの?」
アルに胡乱げな目で見られて慌てて立ち上がる。
なぜか言い訳を並び立ててしまうが、アルは聞いてないのか考え込んだふうだ。
誰のせいで、こうなっていると思ってるんだ。
それなのに「触って」などと煽ってくる。
これは怒っていいんじゃないかと思っているとアルはシールドを張り直して触れ、と言う。
.....そっちかよ!
あぁ、なんで僕、年下の男の子に振り回されてるんだろう。
解せない...。
PCの調子、戻れー...




