腹違いの兄と姉
本っ当に地味な嫌がらせが多いよ。
夫婦で夜会に出席するから、という理由で別邸の使用人を全員本館に連れていかれた。
夕食はお母様が作る。
あぁ、お母様が平民で良かった。
貴族のお嬢さんにご飯作れって多分無理だから。
あの正妻の女はご飯作るとか無理だろ。
包丁も持ったことないんじゃないか?
その点、お母様は綺麗だし料理できるし気が弱いところはあるけど優しいし正妻とは雲泥の差だ。
「お母様の作ったご飯食べられるなんて嬉しい」
僕は、にこにこと食べながら、いろんな話をした。
今日あったこと、メイドの〇〇がカップを落としそうになったときのおかしな様子、庭で見つけた虫のこと。
「アル?そんなに気を使わなくても大丈夫よ?母様はメンタル強いんだから」
あー、バレてる。
「いつもは、こんなに喋るとお行儀が悪いかと思って少し話すだけにしているんだよ。気を使ってるわけではないよ?」
半分は本当なんだけどお母様は微笑んでいる。
信じてないな。
庭で魔力をコントロールする練習をしていたら正妻の子供、テリーとアリシアがやってきた。
嫌いなら近づくなよ。
馬鹿じゃねーの。
「お前、相変わらずだらしない恰好してるな。とても貴族には見えない。あぁ、半分は貴族じゃないからな。半分だけだと、そんなふうにしかなれないんだな。気の毒に」
顔にうすら笑いを浮かべて、テリーが言う。
お前のお古だからな。少し大きいのしかないんだ。
誰かさんの嫌がらせで服を買えないんだ。とは言わない。
以前、言い負かしたら暴力で返ってきたからだ。
3歳と10歳では口では勝てても力では勝てるわけがない。
魔力のコントロールを学んでいるところだから魔法は使えない。
下手して殺してしまうようなことがあったら、さすがにヤバい。
家庭教師にも1人での魔法の行使は禁じられている。
散々、怖い話(慣れない魔法で家を壊したり、人を傷つけたり)を聞かされて脅されたので言うことを聞いている。
正直、こんなヤツどうでもいいが僕みたいな弟がいて気の毒に思う気持ちもあるし、この程度の嫌がらせで殺したりしたら僕は自分でも危険人物認定してしまうよ。
「格好悪い...」
兄の後ろでボソッとアリシアが言う。
この女の子は、いつもこうだ。
女の子のわりには口が弱い。
ボソッと呟くように悪口を言って、おしまい。
ただ、目だけは睨みつけている。
「なんか言えよ。まだ言葉を話せない赤ん坊か?」
その赤ん坊に言い負かされたのを忘れたのかな、お前の頭は。
「申し訳ありません」
と言いつつも悪いとは思ってないので(当たり前だ)頭は下げない。
むしろ、態度はでかかったと自分でも思う。
「お前は謝り方も知らないのか?僕が教えて...」
「あ。呼ばれました。僕を探しているようです。では失礼します」
くるっと反転すると駆けだした。
後ろで「待てっ!」とか「話は終わってない!」とか聞こえるけど無視だ。
相手をしても碌なことがない。
もちろん、僕を呼ぶ声なんてなかったよ?
嘘も方便、だね。