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誕生日



男爵家を出て半年が過ぎ、初めての冬がきた。

雪が降る程でなくとも、それなりに寒い。

男爵家を出てから半年程だが、いろんなことがあった。

この世界の時間の流れは前世と、ほぼ変わらない。

1月から12月まであるし1か月は30日。

1日は24時間。

前世持ちの僕にはわかりやすくて助かる。

季節もほぼ一緒。

ただ、年度始まりは7月。

よって入試は5月にある。

僕が受験できる年まで、あと1年半。

ちなみに僕は1月に生まれた。

母と御馳走を食べておしまい。にする予定。




...だったのに。

漠然と面倒なことになりそうだと思っていたので誕生日を言いふらすことはしていなかった。

聞かれたときは仕方なく教えたけれど。


1月に入ってからプレゼントが凄い。

母に溜息をつかれて、小さくたためる袋を持たされた。

近所を買い物しても貰う。

「アル。今月誕生日だろう?これも持っていきな」

「いつもありがとね。これもおまけだよ」

などと普段だって、おまけをくれることが多いのにおまけをくれる。

それから近所の女の子たちがお祝いしてくれることになった。

小さな食堂を経営しているところの子がいるのだが、昼間の客が空く時間帯に僕のお誕生会をしてくれるそうだ。

お返しできないし時間やお金のかかることはしないでほしい、と言っているのだが、いいから、大丈夫だから、といろいろしてくれる。

嬉しいんだけど、前世日本人の僕には心苦しいんだよ。



な・の・に、だ。

「伯爵...。これは流石に受け取れません」

ローザお嬢様の誕生会で魔法披露したのだから伯爵家からのお祝いも受け取るべきだと、よくわからない説得をされ、伯爵邸で僕の誕生日を祝ってくれた。

伯爵家の皆さんだけだったので、いくらか気楽だったし、豪勢な食事に素直に喜んだ。

が、プレゼントに引いた。

プレゼントは魔石の嵌ったイヤーカフだった。


魔石は魔物から取れる。

どの魔物からも必ず取れるわけではないし大きさも質も様々だ。

もちろん大きい方が珍しく売られる値段も高くなる。

そして、魔石の色には意味がある。

前世にあったダイヤモンドのような透明、クリアタイプは一番希少で飲みこむと体内で吸収され魔法に耐性がつく。

前世のゲームで言うと魔法に対する防御力が上がるアクセサリと同じ効果がある。

しかも一生モノだ。

他にも紅、黒、青、翠、黄と5色ある。

飲めるのはクリアタイプだけで他は飲んでも何の効果もないし普通に排出されるだけだ。

もちろん下から...。

ただ、前世の宝石のように美しいので装飾品として人気だ。

そして魔法士がクリアタイプ以外の5色全てを身につけると魔力が上がるとされている。

その5色が嵌ったイヤーカフが入った小箱を手にしてドン引きの僕。

この大きさだったり、魔石としての質なんて僕にはわからないけれど高いことだけはわかる。

こんなの貰ったら大変じゃね?

だが、伯爵家の皆さんは僕のために誂えたものだから受け取ってもらえないならホコリをかぶるだけ、などと脅しとも取れることを言ってくる。


でも、借りを作るようなことはしたくないんだよね。

特に貴族からは。

お嬢様からの雪の結晶の刺繍入りハンカチは、ありがたく貰うけれど、これは貰えない。

そこで僕が必要となるときまで伯爵に預かってもらうことにした。

このまま有耶無耶にしてしまってもいいかもしれない。



そして、近所の騎士ごっこ(と言うと怒る)している男の子たちに花束を貰った。

真っ赤になりながら「誕生日なんだろ。おめでと」と言った少年。可愛いか。

周りにいた女の子たちも口々に「凄い」とか「綺麗」とか言っている。

見ると中央に立派な赤いバラが1輪ある。

これは買ったヤツだろうとわかった。

この時期に咲くバラなんてないからな。

他は、この辺りでも咲いているのを見かけることがある花だ。

これは、確実に僕のことを女の子だと思っているな...。

ちゃんと話した方がいいだろう。

「ありがとう。すごく綺麗だね。この時期の花束なんて大変だったでしょ。でも僕、女の...」

「アル!おばさんにも見せに行きましょ」

1人の女の子に手で口を塞ぐようにされて引きずられるように母の所に連れていかれた。


なんだったんだ。




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