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初めての魔法披露



今日の主役の登場だ。

ローザ嬢は青を基調としたドレスを着ていて令嬢然としている。

とても綺麗だ。

みんなに囲まれてローザ嬢はにこにこしている。

カイル様に促されて僕もローザ嬢に挨拶に行く。

「アルフレート様」

ローザ嬢は僕にすぐに気づいて向こうから声をかけてくれた。

「ローザ嬢、お誕生日おめでとうございます。今日のドレス、とてもお似合いで僕の方が緊張してしまいます」

「まぁ。あの、 ...ありがとうございます。アルフレート様に言っていただけるのが一番嬉しいですわ」

後ろでカイル様が「こんなのローザじゃない」などと言っているのが聞こえる。

「アルフレートくん、ローザを頼んだよ」

伯爵の言葉と同時にワルツの曲が流れる。

僕はローザ嬢に手を差し出した。

「ローザ嬢、僕と踊っていただけますか?」

「喜んで」

頬を上気させたローザ嬢の手を引き、中央へ進む。

あー、緊張する。

踊りだすがローザ嬢の動きが固い。

顔にも笑顔がない。辛うじて口角を上げているが緊張が僕以上に酷いようだ。

ローザ嬢の足がもつれる。

風でローザ嬢をほんの少し浮かせ、その瞬間にターンする。

「あ」

スカートがふわりと広がって綺麗だ。

「大丈夫です。僕、未来の魔法士ですよ?ローザ嬢を絶対に転ばせることはありません。周りの目ではなく僕を見て。ダンスを楽しむことに集中しちゃいましょう。ね?」

安心させるように微笑んでみせる。

「は、はい」

後半はローザ嬢も自然な笑顔になれたようで僕も仕事を全うできたかな。

伯爵家の皆さんも招待客の皆さんも惜しみない拍手を送ってくれる。

ローザ嬢は次にカイル様と踊るようだ。

身長差が微笑ましい。

「アルフレートくん、娘の相手をありがとう。失敗しないかと少し心配していたが、きみで良かった」

ローザ嬢の父親だ。

挨拶程度しかしていないが、ちょっと雰囲気怖いイケメンだ。

でも、今日はにこにこしているので、そんなに怖い感じはしない。

いつもそうしていてくれないかな。

「この後、魔法を披露してくれるそうだね。ローザも楽しみにしていたが今日のイベントの1つだと思ってしっかり頼むよ」

うわ、プレッシャーかけてくるなぁ。


ローザ嬢の御父上からもローザ嬢のことを聞かれるがカイル様と同じ反応を返される。

普段のローザ嬢って、一体...

今度はローザ嬢の父親が僕から離れない。

何なの?

僕、そんな重要人物じゃないでしょ。

視界に話しかけたそうな人がいるよ。

そっち相手しなよ。

あぁ、ほら、向こうにも。

そして、ついに話しかけられた。

「ジェレミー殿、お話し中申し訳ありません。ローザ嬢のダンス、御立派でしたね。そのローザ嬢と踊っていらした、そちらの男の子?はどちらの御子息?でしょうか。大変お綺麗なパートナーを見つけられましたね」

男の子、と、御子息、のところで疑問符つけやがったな。

今日の恰好は男の子だろうが。

話しかけられたのをきっかけに、ちらちらと見ていた人たちが集まってきた。

「ありがとうございます。ローザはダンスが苦手なようでしたが彼がよくフォローしてくれました。彼は、マイヤー男爵家の御子息です」

「はじめまして、アルフレート・マイヤーです」

「はじめまして。わたしはリットン子爵だ。先ほどのダンス、見事でしたよ」

「私も彼が入ってきたときから注目していましたのよ。ところが伯爵家の皆さんが独占なさるのですもの。こんなに綺麗な子を独占するなんて許されませんわよ」

なんか新しいのがきた。

香水の匂いキッツー。

つける量、お間違いですよ。

「独占だなんて。わたしたちは彼の保護者のつもりでいるのです。後ほど、彼が面白いものを見せてくれるそうですよ。今は、それを楽しみに待っていてください。卿も、どうぞ。こんな小さな子を大人が囲んでしまっては可哀相ですよ。アルフレートくん、そろそろ準備に向かおう。では皆さん、どうぞ楽しんでいってください」

御父上は僕の背を押すと庭の方へ促した。

別に準備なんて必要ないのだけど囲まれても困るだけなので大人しく従った。


廊下へ出るとローザ嬢の御父上は声を落として目線も僕に合うように落としてくれた。

「いいかい。今日は極内輪の者しか招いていない。無作法な者はいないはずだが、きみは目立つ。きみが魔法を使えると知るときみを取り込もうと考える者がいないとも限らない。養成学校に入るまでは、よく注意するんだ。養成学校に入れば学校に保護されるが、今、きみはこれといった保護がない状態だからね。調べればわかってしまうことだが前世持ちというのも自分から言う必要はない」

「ありがとうございます。気を付けます」

なるほど。

伯爵家の皆さんは僕を守ってくれていたんだね。

いい人たちだとは思うが信用していいかどうか、まだよくわからない。

貴族全員に対して警戒心は持っておくべきだろうな。

そのまま別室に連れていかれた。

「魔法披露まで、ここで休憩していてくれ。何か運ばせるから少し待っていてほしい」

ローザ嬢の御父上が出て、ありがたく寛がせてもらう。

こんな華やかな場は初めてだから自分で思うより気が張っていたようだ。

少しすると伯爵家の使用人が果物や飲み物を持ってきてくれた。

呼ばれるまでダラダラして過ごした。

誰も見ていないだろう、とソファにダラッと座る。

あー、楽。


しばらくすると音楽が変わる。

呼ばれて庭へ出ると、ほとんどの人が庭にいた。

僕が魔法披露することが紹介されるとどよめきが広がる。

まぁ普通、5歳児が魔法披露なんてしないよな。

しても家族に見せる拙い手品が精いっぱいだろう。

1つ深呼吸すると噴水を見上げる。

前世の1月を思い出す。

夜、空から静かに降る雪は綺麗だ。

積もった朝は大変だが...。

「おぉ」

「まぁ、これは、雪?」

「本当にあの子が?」

「雪の魔法披露なんて王宮で一度見た以来ですわ」

「あんな小さな子が、どうやって雪なんて会得できたんだ」

地面を冷やして一気に積もらせる。

子供たちは大喜びだ。

噴水周りにダイヤモンドダストを散らす。

前世でも近所で一度だけ見たことがある。

とっても綺麗だった。

招待客にブランケットなどが配られている。

王都では雪が降ることはあっても積もることはないから大人も笑顔だ。

僕は使用人に用意してもらったトレイに雪の結晶をイメージする。

下に土台となる氷を作ると、だんだんと雪の結晶が出来上がる。

僕は六角形の結晶を作った。

それを持ってローザ嬢の傍へ行く。

「ローザ嬢、8歳のお誕生日おめでとうございます。これが僕からの誕生祝いの魔法披露です」

「ありがとうございます。これは何?」

「雪の結晶です」

ブランケットに降ってくる雪を乗せてローザ嬢によく見るように伝える。

「どれ?わからないわ」

「もう少し見てて」

「...あ!見えたわ!.....すごい、綺麗。これが雪の結晶ですのね。あぁ、とけてみえなくなってしまったわ。一瞬なのね」

「はい。儚いけれど、だからこそ美しいですよね。ローザ嬢は美しいものが好きだと仰っていたので」

「まぁ。アルフレート様、素敵な誕生日になりました。ありがとうございます」



◇◇◇◇◇◇◇◇



ベッドに入っても目が冴えて眠れる気がしません。

今日の誕生日は一生忘れられない日になりましたわ。

アルフレート様とのダンス。

転びそうになったとき、おそらくアルフレート様の魔法で転ばずに済みましたし。

何といっても、あの魔法披露。

雪が積もるところを初めて見たような気がしますわ。

ダイヤモンドダストというのも美しかったですわ。

ダイヤモンドダストをバックにしたアルフレート様の美しさと言ったら本当にこの世のものとは思えず天へ帰ってしまわれるのではないかと、思わず空を見上げてしまいましたもの。

王都では雪はなかなか積もりませんし、薄―く積もっても、すぐに消えてしまいますから雪を丸めてみたのも初めてです。

すっごく冷たかったですわ。

本当に最高の日でしたけれど、魔法披露の後、アルフレート様がちびっこ共に囲まれてダンスを次から次に踊っていたのが大っ変ムカつきましたわ。

女性からダンスを申し込まれたら基本的に男性は断ってはいけませんから仕方ないのはわかるのですが。

わかることとムカつく気持ちは別ですわ!

あの女っ!

ボフッ。(掛け布団を蹴った音)

2回も踊って!(自分もアルフレートと2回踊った)

今日の主役は私ですのに!

おじい様も早く開放して差し上げれば良かったですのに。

お父様もお兄様も役立たずですわ。

子供相手に何をもたついていらしたのだか。


そして、夜は更けていく...

おやすみなさい。




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