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11月中旬。
闇落ちAI事件の後始末と、AI監査グループの引継ぎ・・・山咲からの引継ぎは特になく、課長としての業務内容を省内のマニュアルで熟読するのが引継ぎだった・・・を済ませてから、門倉は富士演習場に隣接しているサイバー作戦隊の隊舎を訪問した。
「おう、お祭り以来だな、カドくん」
50代男性“西川”の笑顔に迎えられても嬉しくなく、ボクは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべた。
「あれをお祭りって表現するかなー」
お祭りとは、児玉孝一が無謀にも、量子計算情報処理省の可動防護壁に挑戦した3日間だ。
「お祭りだろ? しかも3日に亘って・・・。まったく大学の学祭かっての、なあ? しかも、毎日業務後に色んなヤツと飲みに行ったんだ。あれは、まさに俺らのお祭りだった」
「まあねー」
気のない口調で返事をしながら、勝手に応接セットのソファーに座った。西川はにこやかにな表情で戯言を口にしながら、ボクの前のソファーに腰を下ろす。
「それより、サイバー作戦隊に入隊おめでとう」
「いや、入隊しないからね。それにしても、二佐の執務室って豪華だな。弊省とはエライ違いだね」
「今日来たのは、入隊以外に何があるっていうんだい?」
「サイバー作戦隊の開発責任者としての西川二佐に話があるってメールしたよね」
「それで?」
バンドルワンとしての児玉君に今後、脱法の業務を発注する旨の依頼・・・ではなく強制するにあたって打ち合わせをした。その時、学校のチームで可動防護壁に再挑戦することになった経緯を児玉君に聞いた。
彼は最初、「後ろ向きに検討させていただきます」と先生に断りを入れたと言う。
密かに、なかなか秀逸な表現だと感じ入っていた。
今こそ使う場面だね。
「後ろ向きに検討させてもらうよ」
「そこは前向きに検討するっていうとこだろ」
西川のツッコミに満足し、門倉は今日の本題に入る。
「ボクは、対ロボット兵器の開発を提案しに来たのさ」
「待ったカドくん。お祭りの時、三枚堂さんに本気で検討するって言ったんだろ?」
「本気で前向きに検討し結果、後ろ向きになったのさ」
大きな溜息を吐いてから西川は聞き直す。
「それで? 対ロボット兵器? それはウチの担当じゃないし、基本的に研究開発は防衛装備庁だからな。対ロボット兵器の開発なんてウチじゃ予算がつかない」
「いいや、サイバー作戦隊にこそ相応しい」
「ああん?」
「独立型ブレインAI」
「ああ、あれか・・・人型ロボットに、自律的に動いてもらおうってヤツか」
ブレインAIは頭脳。でも今も人型ロボットに搭載されている。
「そうさ。ヤバいと思わないかな?」
「うーーーん。そうなのか?」
「そうなんだけどなー・・・。良し、サイバー作戦隊の開発責任者には、対ロボット兵器開発に本気で取り組んで貰わないといけないからね。一から説明しよう」
「短めでなっ! こういう時のカドくんはクドイんだそ。自覚あるか?」
「自覚はあるが本気で理解してもらう必要があるからな。さあ、いいか?」
「・・・わかったよ」
西川はソファーに座り直し、それなりに真剣な態度で聞く姿勢になった。
「長いこと人型ロボットにはフィジカルAIを搭載して動作させていたよな。それが第一次サイバー世界大戦の前後で、フィジカルAIが汎用性のあるコア・フィジカルAIとして漸く公開された。それで人型ロボットの演算領域に空きが出来て、色々な作業用プログラムをインストールして、人の代わりに危険でキツイ場所で働いてもらうようになっていっただろ」
「そうだなー。でっ?」
「人型ロボットには量子コンピューターを搭載するスペースはないんだよね。幸いなことにさ」
「まあ、そうだな。幸いかどうかは知らんが」
「しかし、通常のコンピューターも随分進化した。それで人型ロボットに人と同じように頭脳を持たせようと・・・つまりブレインAIを搭載させた。そして今、安全安心の実績を信頼して、UAIOは独立型ブレインAIの搭載も許可した。ネットワーク型のAIの場合、AIが実行する前に監視AIがチェックするし、実行結果を監査する監査AIもある。幾つものAIで、世界のフェールセーフを実現しているよね」
「・・・まずいかもな」
「ああ、何せ独立型だからね」
「・・・」
「人工意識を持った上で、闇落ちした独立型フレインAIを搭載した人型ロボット・・・どうなると推測する?」
「・・・問題だな」
「人型ロボットは独立型とはいえネットワークには繋がっているから、管理者の命令とかを受領するよな。そして闇落ちした独立型フレインAIを搭載した人型ロボットが、その現場の管理ロボだったら? 人型ロボットの反乱が発生する。小さな現場なら、まだ反乱を鎮圧できる。だけどさ、人型ロボットが人の振りしてネットワークから量子コンピューターのAIにアクセスしたり、ネットワーク越しに多くの、しかも全世界の人型ロボットを先導したら?」
「大問題じゃないかいっ?! どうすんだよっ!」
「有森の闇落ちAIは量子コンピューター上にいたから、特定できれば逃げられない。しかし人型ロボットは危ないと感じたら逃げるさ。どうにかしないといけないよね?」
「・・・一応聞くが、誰が?」
「サイバー作戦隊が、だろうね。ネットワークやサイバー空間に、物理的な攻撃力を持って対処する部隊がサイバー作戦隊だよね?」
「マジか・・・」
「頑張れ」
「気楽に言ってくれるなよ。何を開発すればいいってんだい?」
「脳ミソは生きているうちに使うんだね」
「カドくんっ! 早くサイバー作戦隊に復帰するんだっ!!」
「無理っ!!!」
この後、門倉のサイバー作戦隊への入隊について西川の綱引きが暫く続いた。
西川が漸く諦めると、2人で対人型ロボット兵器のアイディア出しをした。
この日の会談を西川が三枚堂に報告すると、門倉への勧誘が激しくなった。しかし、門倉は頑としてサイバー作戦隊への入隊を断り続け、月日が流れた。
そして児玉孝一が、現役で大学に合格した年の春。
人型ロボットの脅威が、静かに世の中を浸食し始めたのだった。
了
「第二次サイバー世界大戦」を最後まで拝読いただきありがとうございました。
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今後の執筆活動の励みになります。
また、余章で記載した「独立型ブレインAI搭載の人型ロボット」編を読んでみたいと思った方はレビューをいただけますでしょうか。次に執筆予定の「勇者の相棒、実は世界最強魔術師 ~暗躍せずとも暗闘はする学院編」と並行して進める原動力となります。




