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三宅町の赤いカブ  作者: Elena
13/55

ロミオとジュリエットと赤金の家・前編

(お風呂、頂こうかな。)

 と、カイは思いながら部屋を出る。

 プリント一枚の課題等、さっさと始末してしまったので、暇だ。

 暇になると、何かしていなければ調子を崩す事があるし、落ち着かないのは昔から。こんな面を見ると、「サーキット走ってる時の癖でね!いっつもエンジン全開アクセル全開になっちゃう。」という根利のセリフも、理解できる。

(おまけに、俺の場合はブレーキの無いオートレースバイク。ある意味、根利より危ねぇな。)

 と、思いながらカイは、リビングを通り抜けようとして、今、アカネとタキがテレビ電話中だと気付いた。

「あっと―。」

 気付かれぬように、物陰に隠れる。

「そもそも、母さんはどうして、あのファザコンを引き取ったのさ。」

 と、アカネ。

「カイの事は、私も知っていたし、タキはもっと詳しく知っている。それに、カイがオートレース養成所の訓練を終えたら、ここに住むことが決まっていたのだ。」

「どういうことよ?」

 アカネが言う。カイも(こいつら何を言ってんだ?)と思う。

 確かにここは北関東だが、養成所のある筑波サーキットは離れた場所。川口オートレース場も遠い。一応、伊勢崎オートは遠くないが。それ以前に、自分は、父と同じ、浜松オート所属のレーサーになるつもりだったのだ。こんな縁もゆかりもない北関東に住むつもりはなかった。

「タキの婚約者の名前を教えてやる。水沼音也だよ。」

「-!?」

 カイ、絶句する。父の名前だった。

(親父とタキさん、付き合っていたのか!?)

 父から、そんな話は聞いたことない。

 カイの父と母は、互い、見合い相手と強制的に政略結婚をさせられそうになって、逃げ出して結婚した、いわゆるロミオとジュリエットのような関係だった。

 そのため、互いの親戚とは疎遠で、カイは煙たがられていた。母が死んだ後も、まして、父が死んだ時も、誰も頼れなかったのはそのためだった。

 そんな話を、アカネの母はしている。

「ええ。カイってのはどんな奴かは、タキから聞いている。もう、耳にタコができる程に。そんな連中を、貴方の為といっておいて、実際には自分の為しか考えていないような連中は嫌い。なのに、母さんは、私の為と言って、カイと私を引き合わせた。だから、嫌い。あいつが。」

 と、アカネ。カイは、これを聞いて(アカネは絶対、俺を受け入れないだろう)と思い、同時に、(無理してでも、オートレース養成所に入って、養成費を後から分納するって事にすればよかった。)と、一瞬の気迷いを後悔した。

「それからだ、アカネ。カイの祖母ってのは、アカネの祖母でもあるのだよ。」

「はっ何言ってんの?あの堅物ババアが、カイの祖母?」

「ええ。もう、死んでしまった母さんのお姉さん。誰を生んだと思う?」

「まさか―」

「そ。カイの母親だよ。まぁ、病死してしまった。」

 カイはわけが分からない。

 分かるのは、今、自分は、母方の祖母の家にいるということだ。

「まあ、あのバカ連中、なんも考えねえでトンネル掘って、現場監督の反対を押し切って、独断でダイナマイト仕掛けて、鉄砲水起こしてトンネルから美奈川渓谷に叩き落されて夫婦そろって死にやがったけどね。」


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