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三宅町の赤いカブ  作者: Elena
12/55

小さな大事件

 ヘッドライトを点灯させ、エンジン音を奏でながら、美奈川渓谷を抜けたカイのCT125ハンターカブ。

 赤い車体を翻し、赤金の家へ向かい、門を潜って、ハンターカブを停車させる。

 エンジンを切り、ハンドルロックをし、ヘルメットを脱ぎ、玄関を通ると、タキが出迎えてくれた。

「ただいま、です。」

「おかえり。随分楽しかったようだな。」

 と、タキ。

「いい顔をしている。明るい顔だ。」

「えっ。あっ。その、まぁ楽しかったので―。」

「アカネも誘ったらどうだ?」

「あぁその―。」

 目を逸らす。

「まぁ、そのうち、おいおいとな。」

 と、タキは言った。

 部屋に向かう最中、アカネと出くわした。

「あっ。たっただいま。」

 と、カイ。

 アカネは目も合わせない。無視する。

「やめとけあんな奴」とか、「近寄りがたい」とか、「華族の娘だ。何かあったら、何されるか」と、アカネの事を今日知り合ったバイク乗りの奴等は、言っていた。

(確かに、そう思われても仕方ないかもな。あの態度では。)

 と、カイは思いながら、すれ違った後ろ姿を見送る。

 不意に、アカネは立ち止まって振り返る。

「おわっ―」と、不意打ちに驚いてカイは、自分の部屋に飛び込んでしまった。

(何さ。少し振り向いてやったら、部屋に飛び込んで。)

 と、アカネは思いながらリビングへ向かう。

 リビングでは、タキとアカネの母、美月がテレビ電話中だった。 

 アカネは特に関心を示さず、むしろ、会話を聞いていたら不機嫌になるような会話をしていた。

 カイとアカネがどうなりそうかという話だったのだ。

「アカネ。話したいそうだぞ。」

 と、タキに呼び止められてしまった。

「あのファザコンの事?話すこと無いよ。」

 と言いながらも、リビングに戻り、テレビ電話に応じる。

 アカネの母は、石油会社の社長。

 本社は三宅町の中心地にほど近い場所。

 と、言うのも、この場所を掘削したところなんと石油が出てきたのだ。

 質、量ともに大したことないが、白上地区で使用するだけなら十分な量。

 その石油を精油する会社を、アカネの母が経営しているのだ。

 故に、アカネは大金持ちの華族というわけだ。

「カイは今日、バイク同盟って物に誘われたんだってねぇ。」

 と、美月。

「そうよ。」

「どんな変化があるかねぇ。」

「さっき帰って来た。ビビりながら「ただいま」ってさ。私は、シカト決めたんだけど、何となく気になって振り返ったら、またもビビって部屋に飛び込んだ。」

 だが、美月の「どんな変化」というのは、カイではなくアカネに対してどんな変化があるのかと言う意味だった。

(自分から振り返ったってだけでも、他人に興味を示さないアカネにとっては、大事件だよ。)

 と、美月はニヤリと笑った。


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