第1章 代償
初めての長編小説なので、いたらない点も多々あると思うので、よければ感想など書いて頂ければ幸いです。
多くの人が改札口に向かって歩いて来る中で、瑠美はすぐに祐介を見つけた。
金髪で少し長めの髪を立たせ、サングラスをかけて、なんとなくだるそうに歩いてくるので、分かりやすかった。
瑠美が小さく手をふると、イヤホンを外し、表情を変えずにやってくる。
瑠美の隣に来て、
「最近さ…」
と歩きながら話し始め、瑠美は
「まじで!?」とか「ウケる〜」と相づちを打つ。
隣にいられることが幸せで、瑠美の顔が次第ににやけてくる。
流行りの洋服を着て、背の高い瑠美は、祐介を追い越さないようにヒールの低い靴を履いて隣を歩く。
到着したのは行き着けのホテル。
慣れた手つきで適当な部屋のボタンを押す。
落ち着いた雰囲気の部屋の小さなソファーに並んで座り、祐介はタバコを吸い始める。
1ヶ月ぶりに逢った2人は、その1ヶ月の間に起こった面白い話を中心にしていく。
1時間半、時には2時間近く話してからようやくベッドに入る。
それからまた30分ほど話す。今度は足を絡め、ベッドの中で抱き合いながら…
全て暗黙のルールみたいなものだった。
「ねぇ?」
ん?とだけ答えた祐介は瑠美の鼻の頭を小さくくわえた。
「あたし…デビュー決まったんだ!!」
「……良かったじゃん。おめでと」
祐介はおでこと瞼にキスをしながら言った。
「うん、ありがとっ」
いつもの様に抱き合い
いつもの様にsexをして
いつもの様に一緒にお風呂に入って…
あっと言う間に時間が経ってしまった
「なぁ…俺らの関係もう今日で終わりにしよう。」
着替えてる途中に急に祐介は言った。
―えっ…
意味が分からない…
祐介は何を言ってるの?
自然と涙が零れ落ち、背中を向けたまま聞いた。
「なッ…んで?」
「その方が瑠美の為だろ?
いつまでもセフレなんかやってたら…ダメなんだよ」
―何言ってんの?
全然分かんない…
「…ッやだッ…よぉ…そんなのッ…」
「…泣くなって」
祐介は後ろから瑠美をそっと抱きしめた。
どうやって祐介と別れて帰って来たのか
よく分からない…
覚えているのは…
祐介が抱きしめてくれた事と
帰りに自動販売機でタバコを買った事
誰もいない家に帰り、ほとんどとれかけたメイクを落とす。
帰りに買ったタバコは祐介がいつも吸っていた[R]と書かれた物
それと、祐介に渡すことの出来なかった[Y]のイニシャルが入ったZippoを持って瑠美はベランダに出た。夜風が肌に刺さる様な寒さだ。
タバコに火をつけようとするが、風と慣れない手つきの為、なかなかつかない。
ようやく火がつき、吸う。
ゲホッ…ゲホッ
初めてのタバコはうまく吸えず、咳き込むと涙が零れた。
それを何度も何度も繰り返す…
「アホらしい…」
そう思う頃にはタバコが吸えるようになっていた。
足元にはたくさんの吸い殻があった。
歌手になりたくて、20歳になった今年も
その前からずっと
タバコは吸わないようにしていた。
初めて吸ったタバコは、涙と混じって
苦くてマズかった。
「ッゆーすけぇ…
…太陽がなきゃ…
月は…輝けないんだよ?」
いつも祐介は暖かく、瑠美にとって太陽のような存在だった。
いつも月を照らしてる太陽…
でも…
決して交わることはない。
やせ細った月が瑠美を一層悲しくさせ、ベランダにしゃがみ込んで泣いた。
"祐介"と蚊の鳴く様な声で何度も何度も呼んだ。
季節はずれの蚊はあまりにも悲しそうだった…




