3/はじめから中々に理不尽
失踪してません。更新が遅いだけです。
「グルルル……」
「さて、どうするか……」
「『正炎』“殲滅の炎“」
斬りかかろうとした瞬間、フォレストウルフの群れが消し炭になった。チゾメ、剣持ってる意味ってなんだろうね?
「ねぇ……」
「すいません癖です……」
「まぁ経験値入ったからいいけどさぁ」
俺も斬りたかったなぁ。いや、今チゾメを斬るのもありか?
「……何考えてるかは何となく分かるからやめて?」
チッ。こういうときだけ察しが良くなりやがって…俺も一戦やりたいんだけど。
「二人とも相変わらず過ぎない?」
「あ、白夜だ。相変わらず白いね……」
「いや、白夜もずっと黒赤の人に言われたくないと思うけど」
「それはそう」
そう同意するのは白い革鎧を着て長い槍を持った青年、白夜。もちろんリア友。
「白夜、情報が欲しいんだけど」
「いくらで買ってくれる?」
他のゲームでは槍使い、暗殺者…そして自称だが密偵をしている。白夜の持つ情報はゲームの中で有名な情報屋より精度が高い。
正直白夜との腹の探り合いは嫌でしかない。ほぼ負けるから。でも恐らく白夜も…
「白夜って異世界行ってた?」
「さぁ?頭打った?」
飄々としているが、俺が異世界に行ってある程度強くなったように、白夜も身のこなしに隙がなさすぎる。
「頭打ったのは白夜の方だろこの厨二病。『影打ち』」
「厨二病は関係なくない?『白幻』」
実力行使、先手必勝で白夜の影から攻撃しようとすると、白いドットがその攻撃をかき消した。
「やっぱ異世界行ってんじゃね―かよ」
「そっちもじゃん……」
互いにありえないようなスキルを見せたことで確信する。白夜のどういうスキルだ……?
「それどういうスキル?」
「『白幻』白いバグ……ドットを操り幻のように姿形を変えるスキルだよ。そっちは?」
「『優魂』魂を持つものを眷属とし、自らの力とするスキル。だいぶ使いづらいけどね」
そしてお前は?とばかりに二人でチゾメに視線を向ける。顔をそらすな。お前も吐け。
「『正炎』あらゆる炎を扱うことのできる単純なスキルだよ」
単純だけど使いやすい。というか滅茶苦茶強くない?そのスキル。
そしてスキルってその人の個性が色濃く出るんだなぁ……と思っていると、いきなりフィールドが紫色の煙に覆われる。
「あ、ネムリいた!」
「なんだ、他二人もいるじゃーん」
「探す手間…省けた」
煙を突っ切って後ろから来たのはこれまた目立つ黒、青、桃色の装備をした三人。
「黒椿おひさー」
「ん。ネムリも元気そうで……よかった……」
「チゾメさんおつ」
「おつ……ってソラ、これやったの誰!?」
「フィールドなら僕だよ!」
「僕だよ、じゃないんだよなぁ。ユメ」
さっきまでいたフォレストウルフなどに変わり、骸骨とかゾンビが出てきている。しかも大量に。
「『鑑定』」
『スケルトン Lv15』『ゾンビ Lv12』
…スケルトンが平均Lv14くらい、ゾンビが平均Lv13とか。対する俺たちは…
「みんなレベルいくつ?」
「多分ネムリと同じ3」
「俺等は4だね」
大体4,5倍あるんですが。終わったな、これは。
「『死撃』“蛇“」
「『魔天』“フレイムフラワー“!」
「『黒狂』…“デュアルスラッシュ“」
「『正炎』“浄化の炎“!」
あ、そうでもなさそう。大きなレベル差があるのにどんどん倒していく。
「『影打ち』……ちなみにみんなそれどういうスキル?」
そう聞くと、皆が高速でチャットを打つ。その詳細がこれ。
ソラ
『死撃』今のところは相手の残り体力でダメージが変わる。残り体力が多いほどダメージアップ。逆に少なすぎるとダメージが出ない。心臓または頭を狙った場合ダメージが大きく上昇する。
チゾメ
『正炎』あらゆる炎を操る。具体的なもの(青い炎)または抽象的なもの(浄化の炎)も操ることができる。ただし現時点では3種類しか使えない。
黒椿
『黒狂』敵に攻撃をし続けるとだんだん威力が上がっていく。ただしスキルのエフェクトが黒色になり、全体攻撃系のスキルを使っても1体にしかダメージが出なくなる。
ユメ
『魔天』あらゆる魔法を使用可能、使用中魔力が無限になり、魔法使用禁止などの制限を受けなくなる。ただし魔法以外の攻撃が常時できなくなる。
白夜
『白幻』あらゆる幻を見せ、姿形を変えることができる。白幻を白いドットとして操れる。ただし直接的な攻撃力はない。ドットで槍を作って攻撃したとしてもとしても斬れない。
ネムリ
『優魂』倒した魔物の魂を管理し、その敵を眷属として召喚、憑依、スキルを使うことができる。ただしデータ引き継ぎの魔物はレベルアップ時に与えられるポイント(1レベルにつき1~5ポイント)で開放することができる。
「全部やばいスペックのスキルじゃん」
特にユメ。お前のデメリットあってないようなものじゃん。やっぱずるいわ……と改めて認識する。
割と周りのプレイヤーもスケルトンくらいなら余裕という人が多く、どんどん殲滅されていく。これなら行ける、と思った瞬間、フィールドに大きな揺れが起き、アンデッドが地面に飲み込まれる。
「は、どういうこと………?」
「終わった?」
『ヴァァァァァァァァァァァァァ!』
「ッ『正炎』“守護の炎“!」
突如地面から響き渡った叫び声でそこらにいたプレイヤーが赤いポリゴンとなって散った。
「皆大丈夫!?」
「チゾメのおかげで」
「危なかった…」
この平原はモンスターのレベルが最大でも10。そんなところにベテランがいるわけもなく、俺等以外が倒され、フィールドに入れなくなる呪いがかけられた。
……俺たちだけで倒せってマジですか?ちょっと無理があるんじゃあ。俺たちのレベルはさっきのアンデッド分でLv13。アンデッドは相手できても、さっきの叫びを放ったボスには太刀打ちできない。
『……我の叫びに耐えられるものが六人しかいないとは。さて、残った人間はどれほどだ?』
そう言って威圧感を放つ身長mほどのボロボロのローブを纏った骸骨。
『特殊ボス:“骸王デザク“に遭遇しました』
そのメッセージに軽く絶望を覚える俺。元同僚とかマジかぁ……。
「これ勝てるんだろうか?」
「まぁやるだけやろうよ」
各々がスキルを発動させ、戦闘態勢に入る。元同僚と戦うのは心苦しいが、この際仕方ない。
『下僕よ、軍を成して我が敵を蹂躙せよ…“死者の軍勢“』
詠唱とともにアンデッドたちが地面から這い出てくる。しかも剣や盾、弓矢を持ち、兜などをつけて強そうだ。薄々結果も分かりつつ鑑定してみれば全員Lv25という破格さ。これデザクLv100以上あるのでは……?
「白夜、プレイヤーのレベル限界っていくつ?」
「公式サイト読めよ…たしか今のところプレイヤーは99だけど」
「成る程……」
プレイヤーってことは敵とかNPCはLv99以上の可能性があるのか…。
「あと、あいつの勝利条件もあるけど」
「え、そんなのあるの」
「ああ。たしか特定のスキル、職業、称号いずれかを習得、就職した状態で20分間一対一を耐え抜くとか」
ちなみに特定のスキル、職業、称号とは、スキル『天鬼流』『幻花流』『天花流』『操影』職業『剣聖』『剣魔』『召喚師』称号『剣聖』『剣魔』『魂を統べる者』『暴食』の11種類。そのうち『剣聖』『剣魔』二つずつと『召喚師』以外全部見つかっていないという現状らしい。
……なんか『剣聖』二つ以外なら全部持ってた気が。今のところ解禁されてるのは…『天鬼流』『幻花流』『天花流』『操影』『剣魔』(称号)『魂を統べる者』の6つ。『暴食』はなぁ…解禁するのにいる眷属40ポイントぐらいするんだよ…。
「デザクの相手は俺やるわ」
「じゃあ持ってるんだね?どれか」
「まぁね……『操影』“影打ち“」
『……ほう、貴様は我に勝てると言うか?』
「知らないよ、そんなもの!」
『操影』で影を大きな爪を持つ手のようにしてデザクに襲いかかる。剣だとデザクの持つ剣で折られる。その分影なので壊される心配はほぼない。
『“剣魔“骸王デザク、相手になろう』
デザクが無造作に振った黒い長剣と俺の影の爪が当たった瞬間、俺が大きく吹き飛ばされる。
「やっぱSTRの差がデカイな…」
「大丈夫ー!?」
「なんとかねー!」
一応打ち合える。だけどLv13の俺とLv100以上のデザクでは当然天と地ほどのステータスの差がある。
デザクの長剣も俺が持ったら持ち上げすらできないような物だ。対して俺はLv13でも扱える軽さの影の爪。
「耐えるしかないか……!」
『来ないならこちらから、“死撃連斬“』
「やっべぇ……“自動影防御“」
一撃必殺を狙う豪快で繊細な連撃を俺の周りに靄のように展開させた影で捌く。最初からこれやればよかった。
「これならいけるか…!?」
『小賢しい……“幽斬“』
これなら一対一で20分耐えれる、そう思った瞬間デザクの剣が防御した影をすり抜けた。
『さらばだ』
「まっ……ずい!」
胴を切り裂く斬撃をなんとか体を捻り躱す。だが流石に躱しきれずに斬撃を受けた右腕が飛んだ。
「たーまやー」
「白夜、それ違う」
「ホームラーン!」
「違う!」
チゾメさんツッコミ大変だなぁ……ちなみに俺はボケてもツッコんでも死にます。なのであの会話に反応できない。
「『操影』“限りない影の手“!」
右腕を失ったので近接戦では俺は分が悪い。そう割り切り、遠距離からデザクの妨害に務めることにした。
無数に空に出した影の手でデザクを押さえつけにかかる。だがデザクは無数の影の手を剣の一振りで散らした。
『ふん……温い』
勝てる気も耐えれる気もしないんだが。もう嫌だぁ……。デザクの幽斬ってスキルがもしすり抜けて攻撃する系のスキルだった場合防御しても無駄なんだろう。さっき影すり抜けてたし。
「止まっとけ!『地を縫いつける影』」
今度は地中から影が出てきてデザクの足を地面に縫いつける。もしこれですり抜けられたらもう逃げまくるしかないなぁ。
『……チッ、厄介なものよ』
そう思いながらもデザクを見ると、動けていない。スキルが使えない、適用されないのか、または強すぎるため使用できない時間があるのか……。
「そのまま行ってやる……!『影潜撃』!」
デザクを止めたまま一気にダメージを与えてひるませようと技を発動させようとした瞬間、警告のウインドウが出る。
『スタミナが足りません』
「なんだそれ……!」
ネムリを始め6人は知らなかったが、ここはあくまでも異世界ではなくゲーム、つまりスキルが打ち放題なわけではない。スタミナというスキルを使うためのMPのようなものがある。
ネムリの使うスキル『操影』は影を操るスキルとしてあるが、細かく操ったり特定の形に変化させるときは明確なイメージが必要なため、ネムリは今も異世界のときのクセでイメージを固めるため何となく声に出していた。
そのせいで『操影』と言うスキルの中の技と認識され、発動時にスタミナが消費された結果スタミナが足りなくなった。時間が経つかスタミナ用ポーションのようなものを使えばスタミナは回復するが、時間もなければアイテムもない。
「使えないなら……別にいいや……」
だがネムリは中々に割り切りが早い。動けないならこのまま時間経過を待つだけ。幸いもう4分くらい経過しているのであと16分。他の5人もいい感じに相手取っているので全然耐久できる。……なんで皆はずっとスキル使えてるんだろう。
デザクが足を抑える影を破ろうと大剣を振るうが、俺は影を破られないように影の形を変え、小賢しく時間稼ぎをする。
『“破断斬“……アンデッドを侮るなよ』
「えぇ……ずるくない?」
なんと自分で自分の足を斬った。しかも斬った足が再生していく。なんともなかったかのように立つデザクの理不尽さに軽く苛つく。
これ16分耐えれるの…?
☆☆☆☆☆ から ★★★★★ に して くれると モチベ が あがり ます