3話 衝突
強調された白い肌に、綺麗な二重といったパーツ。それらが整った顔立ちと思わせたのは間違いではなかった。実際、転校生・坂口紘の周りには女子高校生で埋め尽くされた。あたりに自分の席がある男子高校生に迷惑になるほどの勢いで。
一方、一人の女子生徒が私のところに詰め寄る。その女子生徒は私の大親友・岸本 理恵。
『あんた!!一週間前に彼と何があったの!?』
前のめりで私に迫ってくる彼女の鋭い目つきは興味津々の瞳を放っていた。彼女も転校生に気があるらしい。
『正門前で少しお世話になったの。ただそれだけ・・・』
なんとか誤解を解こうとするが、周りを見ると、クラスの女子全員が疑いの視線を一斉に突きつけていた。
『いや、本当だって!!!!』
こんなやり取りから始まった今日。いつもの授業が始まった。
期末テストが関係してる内容ばかりで、かなりの集中力を使う・・・はずだった。でも、ノートを取る手は動いても、内容が全く入ってこない。やっぱりまだあの事を引きずってるの?その言葉が脳内に流れた瞬間、彼氏の遼くんに罵倒された時に出た数々の言葉、母親のきつく当たる記憶がフラッシュバックする。いわゆる今までのトラウマが脳内に蘇ってくる。
私なんて・・・
そんなことでどれほどの時間、費やしていたのだろう。気づけば昼休みの時間帯に切り替わっていた。
私は理恵ちゃんとともに、いつもの大きい食堂へと向かっていく。大学の食堂並みに広いスペース。受付に並ぶ列にはクラスの女子に囲まれた坂口くんがいた。
『あそこまで来たら、飼い主に拾ってほしい捨て猫に見えてきたわ』
彼の周りに戯れる女子高校生たちにストレートな意見を放つ理恵。それに対し軽く苦笑いするしか反応できない。まあ、そのことはさて置き今はメニューを決めよう。そう意識を変え、食堂のメニューに目を通していく。その視界に並ぶ列を追い越していく一人の男が入ってくる。校則に反した金髪染めに4:6に分けた前髪。彼もキリッとした二重を持つルックス高めの男子高校生。でも性格は最低の最低と思っている。
転校生の彼である坂口紘の肩にわざとぶつかってくるその高校生。さらに、パシリにされてただろうメガネの男子高校生にもたれかかる。
『俺の昼飯、とっといてくれたんだろうな?』
『吉田さんのやつ・・・ですか?』
震え上がった声とおぼんを持った両手。次の瞬間、彼の肩を思いきり後ろへと引っ張り込み、そのまま地面にねじ伏せる吉田。すると、床と同体になった彼を何度も何度も蹴り上げる。
『今日は!!!お前の番だろうが!!!!この!!!使えないクソが!!!!!』
食堂を利用する先生が注意してもいい頃だろう。でも実際、現実は残酷だった。絶対と言っていいほどの位置に金髪の男が見えているはず。でも見て見ぬフリして先生たちは止めようとしない。食堂のおばさんもそうだ。
『だめ!!彼は今、日本企業を操ってる吉田財閥の息子なの!!彼に関わったりしたら、あなたの生活にも影響が・・・』
そうヒソヒソ声で転校生の坂口くんを止める周りの女子生徒。しかし、止めようとする彼女らの腕を軽く払い、財閥の息子・吉田へと近づいていく。
『もうやめろ、吉田。何があったのか知らないけど、一方的な暴力は見過ごせないな』
あの時と同じく冷静だが、明らかに口調が威圧的に感じる。そんな彼へと吉田はゆっくり視線を向ける。
『なんだ?お前。俺に楯突くのか? 俺が誰か知らないようだな?』
『知らない。転校生だから』
舐めた態度を財閥の息子に晒す坂口くん。それに対し、彼は鼻を鳴らして返事を返す。
『なら仕方ない。教えてあげよう。この東京の大企業を支配してる吉田財閥の息子・吉田隆文だ。つまり、俺のいうことは絶対だ』
彼なりに優しく説明しているようだが、少しずつ坂口くんとの距離を詰め、威圧感を醸し出していく。察しろという意志を突き出して。
『もっと簡単に言うと、お前の親なんてクビにできるし、お前をこの学校から退学にさせることもできる。平和にここでの学校生活を送りたいなら、俺の命令を聞くか、俺の視界に映らないことだ』
それに対し、坂口くんは強烈な一言を放った。
『君の親が権力あるだけに聞こえるな。自分の解釈が合ってるなら、君とは対等な関係で接してもいいと思ってるし・・・ここまで他の生徒をこき使う資格はないと思う』
耳をかっぽじって聞いていた生徒たちはみんな、開いた口が塞がらなかった。私も含めて・・・これはやばいことになりそう。実際、あ!!も言う間もないまま、吉田は坂口の頬にめがけて拳を突き出す。そんな拳を反射神経の高さで掴む坂口くん。
『お前が他の生徒にしてきたこと・・・いつか思い知る日が来る。それまでに、自分の行動・・・一つ一つに目を向けておくんだな』
お疲れ様でした!!そして3話まで読んでくださりありがとうございます!!少し、今後のことについて触れると、この作品は夏休み期間中に完結する予定になっています。もちろん長引く可能性もあります。しかし、予めお伝えした方が作者も読者も見通しが立つと思い、ここに書き留めます。引き続き『デイズ』を、よろしくお願いします。