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デイズ -名も無き魂の復讐者-  作者: 竜
Season2
33/37

如月紫苑 -復讐を終える男の物語- 11話

『パパもママもなくなればいい!!この世なんて良心の皮を被ったケダモノの巣窟なんだ!!!』

奇声と共に、荒れ狂うように暴れる子供なんて見ていられない。私の妻なんて、息子の姿に泣き崩れることしかできない。これ以上の接触を許さない刀を握る集団が、私たちを子供が見えない場所まで追いやった。障子で覆い被さるように閉めていくことで・・・

『全員死ねええええええ!!!!!』

息子の声が二重に聞こえた瞬間、彼の荒れ狂う声は消え去った。数分後、刀を持った奴らは、私らの許可もなく子供を処刑した。

『ねえ・・・パパ・・・』

目の前にまだいる息子。しかし体は少しずつ塵となり、一部の身体が消えていく。

『おい!!康介こうすけ!!!パパだ!!!』

『な、、、なんか体がおかしい・・・助けて・・・』

片腕は真っ白に消える塵は、やがて顔半分まで侵食していく。埃が舞い散るように皮膚が剥がれるこの様。

『助けて・・・』

この言葉を最後に、幼い息子が両腕から消え去った時の絶望。心を奪われた彼を救うために処刑。本当の息子に会えたのは、ほんの数分だった。


*  *  *


そしてもう一つの事件。妻から突然の電話がかかった。

『どうした?』

『今、心駅から・・・ずっと・・・誰か・・・に・・・追われてる・・・』

荒げた息遣いとともに、走っていく靴底の音がカッカッと音を鳴らしている。

『警察には?』

『電話した!!けど・・・もう・・・キャ!!!』

誰かに引っ張られるたのか、携帯が地面に落ちる音と同時に、悲鳴が響き渡る。

『おい!!菜々(なな)!!おい!!!』


*  *  *


急いでたどり着いた先は、菜々の言っていた駅。そして駅につながる道中へと足を進めた。一刻も早く・・・私はまた妻に電話をかける。頼む、出てくれ!! その一心で、私は辺りにいるはずの彼女を探し出す。だが、着信音は何度も鳴り響くだけで、応答する気配はない。


その時、横目に映った赤色のライトが一定に視界へと反射してくる。その先に誘導されるかのように、私は目で追っていく。辺りには、夜なのに集まった住民と駆けつけて来た警官の後ろ姿が見える。その警察官の先には、地面に倒れた女性の影。


『菜々・・・菜々・・・』


俺は何度も見間違いだと信じた。だが目の前に見えるのは、背後から深く突き刺さったナイフで命を奪われた菜々が地面に倒れていた。


『菜々!!!!うわあああああああああああああ!!!!!』



*  *  *


これらの記憶がフラッシュバックしてきた。そう、全ては俺の大切な人を奪った復讐劇だ。

『津熊先生・・・いよいよですね・・・』

声をかけてくるのは、俺の妻を殺した犯人に、同じく敵意を持つ美佐枝。彼女も私の妻を殺した犯人に父を殺されてる。その憎しみを武器に、私らは復讐を終える。

『例の男は、君に任せる。俺は、貴島裕平きしま ゆうへいを殺す』


*  *  *


執事の援助により車という手段で現場へと急行できている今、俺・如月紫苑は目の前に広がる黒煙を目の当たりにしていた。後部座席には、優花と妹の香穂が。この判断が正しかった・・・そう思える結末を迎えてくれ。そう心の中で願った今、執事が声をかけた。

『紫苑様。着きました!!』

『よし!!お前らは9時半になるまで、ここを動くな。アイツとのケリは30分で肩を付ける!!』

そう、俺は目の前が黒煙に塗れた刑務所へと向かっていく。



*  *  *


あちこちで刑務所が襲撃されてるみたいだが、吉田隆文の権力によって調べた結果、仮面集団たちの狙いはこの刑務所・コルリ刑務所にいる。要は2箇所目に爆発が起きた刑務所だ。もう1箇所はおそらく陽動ってとこだろ。俺は黒い煙を超え、建物内へと侵入する。最初に目にした場所は、囚人たちの牢獄だ。両サイドに並ぶ鉄格子の部屋。それが、2階、3階まで広がっている。このまま突き進めばいい・・・というわけではなさそうだ。目の前に囚人の服装を身に纏う犯罪者どもが、俺の前に立ちはだかる。この黄色い瞳に屍のような表情。間違いない・・・奴はここにいる。

『こいよ!!』

挑発の手招きで、一斉に襲いかかる囚人たち。こんな奴ら、刀の鞘を抜くまでもない。気絶させる勢いで1発1発振り下ろす刀。うなじ、あばら、脳天、あらゆる箇所へ振り下ろされる刀で、あっさり倒れていく2、3人。だが全てうまくいくとは限らない。さらに、キレのあるアクロバティックな技で攻撃を仕掛ける2人の囚人。バク転を織り交ぜた躱しと宙を舞いながらのかかと落としを狙う両サイドの囚人。それらの攻撃に、俺は一旦2、3歩下がったステップで、反撃の蹴りを顔面にお見舞い。そして振りかぶった刀はもう一人の腹部に直撃。完全にテイクダウン。よし、次に進もう!!


*  *  *


今度は別のエリアの監獄。また両サイドに連なる鉄格子の表紙。今回異なるのは、空気の重さと床に1直線に繋がっていく血痕。まだ新しい血の道のり。それにしても、朝なのにこの暗さ。廊下の先があまり見えない。

『きゃああああああああああ!!!!』

男性のこれ以上のない叫び声。俺は警戒心が高まった。これは只者じゃない。

『うわああああああああああああ!!!!』

同じ人物による叫び声。それで俺は覚悟を決めた。一声を上げようと・・・

『それくらいにしときな・・・』

俺の言葉に反応したのか、騒がしい物音が連続的に起こり始める。どうやら、誰かを痛めつけていたらしいな。次第に近づいてくる足音。それは重いものを引きずる音と共に。

『お前が・・・美佐枝か?』

おそらく、瑛太が言っていたのは彼女のことだ。ここで終わらせる覚悟なのか、取り付けられていた仮面をはずした素顔が目に見えた。長い黒髪に静かで黄色い瞳。しかし、理性が若干残っているのか、屍の特徴とは少し一致しない。まだ怪物に染まっていないというサインだろう。

『こいつは・・・私の家族を殺した。父を・・・殺した。なのに・・・なんでこの人は怪物狩りの組織に殺されないの?だってこいつも心を奪われた奴だよ』

そう何度も殴った跡で腫れ上がった犯人の顔面が目に見えた。

『こいつね・・・怪物狩り組織に投資しているお偉いさんの息子だからだって・・・』

『何?・・・』

『津熊先生の奥さんもこのクズに殺された。でもこのクズは、怪物狩りの組織と深い関係を持っているから処刑されなかった。そんなの不平等でしょ!!!だからみんなが幸せになるように、私たちの憎しみで彼を殺す!!!』


『だめだ!!!美佐枝!!!!』

俺の声ではない別の声が後ろから聞こえる。振り返った先には、駆けつけてきた山﨑瑛太と彼と合流した桐島慎也が。

あの時に電話をかけてきた時には、もう刑務所に向かっていたから息が荒れていたのか・・・そう彼の状況を把握した。

『紫苑さん。彼女は任せてください!!!』

瑛太のこれ以上の顔つきはこの先見れないじゃないんかと・・・そのくらいの覇気ある顔つきが美佐枝と俺に向けられる。俺は彼を信じるように、美佐枝を超え、その先へと向かっていった。


*  *  *


次に向かった先は、外。というより、建物内であっただろうエリアは激しい攻撃により、建物を型どっていた壁やコンクリートは崩れ去ったみたいだ。そして煙の奥から見えるのは二人の男。一人は佇む姿。もう一人はその男を見上げるように地面に尻をつけた人影が。そして佇む男には、負の感情で生み出された刀が強く握られている。間違いなければ、津熊と貴島裕平だ。

『お前が貴島裕平か・・・治療法をやめるように・・・言ったクズだろ?』

『なんだと・・・』

『そんな奴が、今では痴漢で刑務所に入っている。ほんとクズな人間だな!!!』

『本当のクズはお前だろ?こんなことして・・・俺は怪物狩り組織の人間だぞ!!!』

『その人間が、俺たち市民を殺してるんだよ!!!!』

津熊と貴島裕平の言い争い。

『よせ!!!津熊!!!!』

今にもトドメを刺す勢いで握られた刀を目にして、俺は思わず彼を止めた。その言葉から返ってきたのは、津熊であろう人物の鋭い視線と殺意あるオーラ。だが、俺も負けない。

『これ以上の罪をお前が背負う必要はない!!俺がこいつらの不正を暴く!!!』

『うっせーよ!!お前らごときに・・・息子・・・妻を失った悲しみなんてわからないくせに!!!』

言葉に込められた怒りとともに、振り向けられた刃は貴島雄平の心臓へ。俺は瞬間移動の能力で、そのトドメを阻止した。

『な!!・・・お前!!!』

『お前に・・・殺しの復讐はさせない!!!』


弾いた刀をスタートに、剣さばきが繰り広げられる。隙を狙うも、人間の振るう刀の早さは優に超えている。左、右、真ん中へ振りかぶる刃。左右に躱すための脚力を頼りに剣さばきに対応していくも、振られる刀の勢いと力で後退りしていく俺の身体。なぜ、反撃しない!?そう自分に問いかけるも、なかなか反撃の隙が狙えない。

『なんだ!!!紫苑!!!!攻撃が弱まってるぞ!!!だから力強い攻撃には憎しみが必要なんだよ!!!』


沙羅!!!!まただ。なんでこんな時に沙羅の記憶が蘇ってくる!!やっぱり、まだ彼女を殺した犯人に憎しみを持っているんだろう。まだ殺意は抑えられない。その感情は刃に込められていく。

『そうだ!!お前も彼女を殺されたんだろ!!怪物狩りの組織が治療法を推進していればよかったのにな!!!!』


まただ。過去のトラウマで俺は利用されるのか、復讐心を。それで、沙羅は喜ぶのか?・・・違う!!彼女は俺にこう言い残したんだ。

"あなたは正義感があって、まっすぐな人よ。その正義感を信じて、困ってる人を助けなさい。まだ、あなたの力を必要としてくれる人はいる"

決して、復讐なんか求めていない。

『沙羅は・・・復讐なんて求めてない。ただただまっすぐに困ってる人を助けろ・・・と。お前の家族もそう思ってるんじゃないのか?』

俺の刃に加わる津熊の刃。その刃の重心が一瞬ブレたように思えた。

『は・・・家族がそんなことを思ってるなんて・・・わからねえだろが!!!』

押し付けるように振り回す刃。だが、鋭い剣さばきというより、感情に任せた攻撃で、津熊に隙が生まれている。俺はその隙を狙うように、あばらに鞘の先端を突き出した。骨の砕ける音で、津熊の体勢は一気に崩れた。


『うっ!!!・・・まだだ!!!』


今度は完全に攻撃できる機会を与えた背中に俺の鞘が降りかかる。だが、津熊は俺の攻撃を無視し、そのまま貴島裕平のとこへと駆けていく。

『俺の相手は紫苑じゃねえ!!!貴島!!!お前だああああああ!!!!!』

『やめてくれ!!!!』

貴島裕平は無様な豚のように泣き叫ぶだけ。だが、止めないと!!!俺は彼を押さえつけるように刀を握った手首に掴みかかった。同時に込めた俺の脚力は、貴島裕平の殺害を食い止めた。

『こんな奴のために!!!人殺しになる必要はない!!!これ以上・・・自分を殺すな!!!!』

その一言で、津熊の手首に浮き出た血管は次第に沈んでいく。

『はっ・・・何を言ってやがる・・・』

『もう苦しむな・・・』


まじか!!!背後にいる2メートルの黒い影が、俺に危機感を教える。瞬時に振り返るも、超人並みの拳が顔面全面にぶつかる。クッソ!!油断した!!

『雑魚が!!!そんなんで揺れ動かねえよ!!!』

こいつ・・・狂ってやがる!!3ヶ月も影の怪物になっていれば、もはや心もないのも同然か・・・今目の前にいるのは、白い口元に2メートルを優に超える影の怪物と怒りに溢れた津熊が並んでいる。クソ!!止めるには殺すしかねえのか!!!いや、津熊を支配しているのは、隣の影の怪物。そいつを殺せば、終わるはず。この決戦で初めて鞘から抜いた刃。これで終わらせる。復讐の連鎖を!!!


5月20日(土)、12話と13話でセカンドシーズンが完結します。そして、重大発表があります。

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