表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才魔法具師は、スパダリに保護される  作者: 輝久実


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/50

南国のハネムーン

結婚式を無事に終えた二人が新婚旅行ハネムーンの地として選んだのは、王都から遠く離れた南国の高級リゾート地・コバルトアイランドだった。


見渡す限りのエメラルドグリーンの海、真っ白な砂浜、そして燦々と降り注ぐ南国の太陽。


「うわぁ……! 海がとっても綺麗です、アルヴィン様!」


プライベートビーチに面した豪華なヴィラのテラスで、ルチアは涼しげな薄水色のワンピースの裾をなびかせながら、瞳を輝かせていた。


「ああ、美しいね。……だが、太陽の熱で君が溶けてしまわないか心配だよ」


日畳み付きのサマーベッドに腰掛けたアルヴィンは、相変わらずの過保護ぶりでルチアの腰を引き寄せ、自身の膝の上にちょこんと座らせた。彼自身も寛いだシャツ姿だが、アメジストの瞳は南国の陽光よりも熱くルチアを見つめている。


「溶けませんよ! それに、ここに来たからには……ふふっ、結婚式の前の約束を果たさなきゃいけませんからね!」


ルチアは胸を張り、テラスに設置された特製の『持ち運び式・ルチア・ラボ機材』へと向かった。


今回ルチアが用意したのは、小型ポータブルクーラーの熱交換技術を応用した【超急速冷却・魔導シャーベットメーカー】だ。


「南国の新鮮なフルーツ……この『太陽の果実(マンゴー風味)』と『星型ベリー』の絞り汁に、少しのお砂糖と、隠し味に微量の魔導蜜を加えて……」


ボウルに材料を投入し、ルチアが魔導シャーベットメーカーのダイヤルを回す。


カチリ。


『冷却ルーン起動:急速冷凍&低速撹拌モード』


パドルがシャリシャリと音を立てて回り始め、ルチアの精密な温度コントロールによって、果汁が一瞬で細かな氷の結晶へと変わっていく。液体がふんわりとした口当たりの極上シャーベットに変化するまで、ほんの数十秒だ。


「できました! ルチア特製『南国フルーツの極上異世界シャーベット』です!」


透明なガラスの器に盛り付けられたのは、鮮やかなオレンジとピンクがグラデーションを描く、見るからに涼しげで愛らしいスイーツ。


「きゅ~う❤」


足元では、特製の麦わら帽子をかぶったシロちゃんが「ボクの分は!?」と言わんばかりに尻尾をブンブン振っている。


「はい、シロちゃんの分は果汁100%の特別仕様だよ」


「きゅふぅ~!」と歓喜の声をあげ、専用の小鉢から勢いよくシャーベットを舐めとるシロちゃん。冷たさに「キーン」となったのか、おでこを押さえるような仕草をして固まる姿が愛くるしい。


「ふふ、可愛い。……さあ、アルヴィン様もどうぞ!」


ルチアは小さなスプーンでシャーベットをすくい、アルヴィンの口元へと差し出した。いわゆる「あーん」である。


アルヴィンはアメジストの瞳を細め、素直にルチアの手から一口味わった。


「……ん」


口に含んだ瞬間、完熟フルーツの濃密な甘みと酸味が広がり、続いて雪のように儚く溶けるシャリッとした冷気が、南国の暑さを一瞬で吹き飛ばしていく。


「どうですか……?」


「驚いたな。氷を砕いた粗いものではなく、まるで風そのものが甘く冷たく固まったような……素晴らしい口溶けだ。さすがは我が妻、賢者ルチアの発明だね」


「よかった……! 大成功です!」


ルチアがほっと笑みをこぼした瞬間、アルヴィンはすっと手伸ばし、ルチアの手にあったスプーンを奪うと、今度は自らシャーベットをすくった。


「では、次は私から君へ」


「えっ……あ、自分で食べられ――」


「あーん」


拒否権を許さない甘い微笑みに負け、ルチアは意を決してパクリと口を開いた。


「……っ~! おいしい……! 冷たくて甘くて、果汁がじゅわっと弾けます……!」


あまりの美味しさにルチアの頬がゆるむ。


すると、アルヴィンはその隙を見逃さず、ルチアの唇の端に少しだけ残っていたシャーベットの雫を、自身の指先でそっと拭い――そのまま自分の口元へと運んだ。


「――ん、確かに美味しい。だが、君の唇の方がずっと甘いね」


「なっ……!? あ、アルヴィン様っ! どこでそんなキザなセリフを……っ!」


ルチアの顔が一瞬でシャーベットのイチゴ色よりも赤く染まる。


「ふふ、照れる姿も愛おしいよ。……さあ、冷たいスイーツで身体も涼しくなったことだ。そろそろ涼しいヴィラの中に移動して、二人きりで甘いハネムーンの続きを過ごそうか」


「まだお昼ですよ!? というか、エアコンの『絶対障壁』をここにまで持ち込まないでください~っ!」


「きゅ~う(お腹いっぱいで丸くなって寝始める)」


南国の爽やかな海風と、ルチアの手作りスイーツ、そしてどこまでも過保護で甘い旦那様。


エンジニア少女と黒ハラ公爵の甘く涼やかな物語は、これからも幸せいっぱいに続いていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ