たぶん順調だった話
翌日の昼休み、二年A組。
「で?」
基樹が机に肘をつく。
「どうだったんだよ」
彩音も興味深そうにこちらを見ていた。
「白石とのデート」
「……たぶん順調だった」
恒一が答える。
「“たぶん”ってなんだよ」
「妙な感じではあった」
「どんな」
恒一は少し考える。
「まず家に来た」
「は?」
基樹が止まる。
彩音も目を瞬いた。
「……家?」
「ああ」
「静かな方が落ち着くと思った」
「待って」
彩音が手を上げる。
「初デートだよね?」
「そうだな」
「なんで家?」
「白石、人混み苦手らしいから」
真顔だった。
彩音が吹き出す。
「恒一ってたまに思い切りだけはいいよね……!」
「よく分かんねえけど怖えよ!」
基樹が頭を抱える。
「ちゃんと戸締りもした」
「なんで!?」
「戸締まりしないと、危なくて困るだろ!」
「方向が違うんだよ!」
基樹のツッコミ。
恒一は少し考える。
「あとプリン作った」
「……は?」
「昨日」
「前日から!?」
「甘いもの好きって聞いたから」
彩音が笑いを堪えていた。
「重いよそれ……!」
「そうか?」
本気で分かっていない。
「あと、楽しませた方がいいらしいから」
「おう」
「真田の話をした」
彩音の笑顔が深くなる。
「へえ?」
嫌な予感。
基樹も察した。
「……どんな話した」
「戦国武将の話してる時すごく優しく笑うとか」
「甘いもの好きとか」
「道場の話とか」
「……」
基樹、顔を覆う。
「お前さぁ……」
「なんだ」
「なんでデートで別の女の話してんだよ!」
「面白い話をしろと言われた」
「そういう意味じゃねえ!」
教室に響くツッコミ。
彩音は机に突っ伏して笑っていた。
「ふふっ……もうダメ……」
「でも」
恒一が少し考える。
「白石、最後笑ってた」
基樹と彩音が止まる。
「……」
「……」
恒一は真面目だった。
「だから、たぶん順調だった」
彩音が小さく笑う。
「まあ」
「ひよりちゃん相手なら、それで正解なのかもね」
「そうなのか?」
「そこは自分で考えなさい」
彩音が笑う。
基樹は深いため息をついた。
「お前の恋愛、毎回情報量多いのに肝心なとこだけ分かんねえな……」
「そういうものなのか?」
「たぶんな」
恒一は少し考える。
やっぱり、恋愛は難しかった。
でも恋愛は難しいと理解しただけ、
分かった気もしてきた。




