【結論】 地球といふ異世界
これまで執拗に中二病の治療法について語ってきたが、一つだけ勘違いしてほしくないことがある。
それは「夢を否定してはいけない」ということだ。
「散々なろう民を犯罪者予備軍のように叩いておいて、今更何をぬかしているんだ!」
と思うかもしれないが、それが私の偽るざる本心だ。
夢は叶えるものであって、溺れるものではない。
人は未来への希望なしに生きてはいけない。
ホモサピエンスがアフリカの一地域から世界中に広がった種である以上、新天地を求める崇高な意思は誰にも奪うことはできない。
・魔法騎士レイアース
・デジモンアドベンチャー
・NG騎士ラムネ&40
・魔神英雄伝ワタル
・十二国記
「小説家になろう」が設立されるずっと以前から、異世界作品は存在した。
だが、その主人公達は自ら望んで異世界に渡ったわけではない。
異世界の危機に応じて強制的に召喚され、なんとかして元の世界に帰ろうと努力していた。
世界を救った後、英雄達は元の現実世界に帰った。
やむをえない事情により帰還を諦めて定住する者もあったが、決して都合の良い場所に逃避したわけではない。
だが、最近の異世界ものはどうだろうか?
過酷な現実に疲れて、文明の劣る別世界で全部やり直そうとしていないだろうか?
たった一つの命を投げ捨ててしまう転生者に、元の世界へ帰る意思があるだろうか?
・人生詰んで、異世界に転生するニート
・ブラック企業で酷使され、異世界で気楽に暮らしたい会社員
・クラスでイジメられ、異世界で復讐する陰キャ
彼等のしていることは『現実逃避』であって、冒険ではない。
現実というクソゲーに勝てないから、チート行為が許される自作ゲームを作って自慰に励んでいるだけだ。
本来人間関係を構築するためのリソースを無駄なゲームにつぎ込んで、充実した人生が送れるはずもない。
甘美な夢を見て、娯楽を楽しむのは悪いことではない。
物語を通じて学ぶこともあるだろう。
けれど、夢に溺れて現実を見失ってはいけない。
貴重な時間を全て空想につぎ込んで、今やるべきことを後回しにしてはいけない。
覚えていないだろうが、かつての貴方はこの地上に産まれるために絶大な努力をしてきた。
母の胎内、精子の海の中で全力で泳ぎ、見事数億分の一の椅子を勝ち取った。
日本という国に産まれ落ち、幼少期から病気や怪我と戦い、学業や就活の競争を超えてここまでたどり着いた。
いわば貴方こそが奇跡の『転生者』であり、この地球が冒険の舞台である『異世界』なのだ。
社会がどんなに残酷だろうが関係ない。
資本主義がどんなに不平等だろうと関係ない。
どうせ転生者は、転生する世界を選べないのだから。
誰もが配られたカードを使って、最善を尽くすしかない。
転生しなければ本気を出せないなら、今ここで生まれ変わってほしい。
トラックに跳ねられる必要なんてない。
「過去のしがらみを捨てる」と宣言して、今度こそ本気でチャレンジしてみてほしい。
亡国の姫と縁を結べるなら、すぐ近くにいる平凡な隣人とも仲良くできるはず。
獣人の奴隷を助けられるなら、飢餓に苦しむ貧困層にも手を差し伸べられるだろう。
豪華な剣でゴブリンを倒せるなら、クワで土地を耕すぐらい朝飯前。
神様直伝のチートスキルがなくても、貴方には自慢の頭脳と筋肉が備わっている。
実在するかもわからない異世界なんて、探さなくていい。
活躍すべき世界は、既に目の前にあるんだから。
「どうか貴方という英雄が、傷ついた人々の救いとならんことを」
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
貴方がこの地球において、益々ご活躍されることを祈念しております。
より多くの読者に読んでもらいたいので、低評価でもポチっと押していってくださいませ。