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悲しみに埋もれる火 3
《問いかけの大地》の上空──《凛浄》。
風に長い桃色の髪が靡く。
《火ノ宮》の社と、《凛浄》の中心に在るカグヤの住まう神殿を繋ぐ渡り橋から、ラシュフェーニカは眼下の街を見下ろした。
今は活気を取り戻した、まではいかなくとも、元気を取り戻してきた街が、ここまで復活するのにかかった月日は幾時か。
そうぼんやりと心に感じつつ、街を眺めるラシュフェーニカの目はどこか虚ろで、言葉は無かった。
アノ日、《凛浄》に突如鳴り響いたけたたましいアラート音。
ソノ原因はいまだに分からず、カグヤを含めた十数人の《凛浄》の者が行方不明になった、世界を大きく騒がした大事件。
公にはされてはいないが、数ヶ月前に起きたコノ事件で、ある場所で驚くべき惨状の後が在った。
カグヤの神殿の前──ソノ入り口で、大量の血の後が床に残っていたのだ。
しかしソノ血は何故か洗い流された後が在り、床に血と想われる色が滲んでいる状態だった。
何か在ったのは間違いない。
《凛浄》の誰もがカグヤの安否に急いだ。
けれど、神殿の中にも《凛浄》の何処にも、カグヤの姿は無く、十数人もまた姿が無かった…。