11/127
悲しみに埋もれる火 5
──ぁあ…、また……
そう振り返りながら、今日もまた、ラシュフェーニカは渡り橋を渡った先のカグヤの荘厳な神殿の中──カグヤの部屋の前に立っていた。
主を失ってもう幾月も経つ部屋。
一度も、一度たりとも、カグヤが居なくなってから足を運ばないことはなかった部屋。
閉ざされた部屋の扉をただ見つめるだけの時間。
虚ろな目からまた、涙が零れる。
カグヤは“平和ノ象徴”にして、尊く高貴なる存在。
祈りを、想いを乗せた歌を捧ぎ、民々の心の支えの柱として存在してきた、神聖で誰もが手を伸ばしても決して手が届かない崇高なる存在。
女神──イサナの神話により選ばれる天空ノ巫女──カグヤは、現在十八代目にまでなる。
ラシュフェーニカが仕えているのは十八代目カグヤで、
精神的自傷行為を続けていた少年もまた、十八代目カグヤだ。
多くを語らず、人と関わることを避け、心を閉ざしていた少年。
ソレが、コノ部屋の主。




