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0. 異世界転生の序章(挿絵ここまで)

初投稿。

ケモナー向けであり、ケモナーではない人も読みやすい、むしろケモナーではない人をケモナーにしてやる!くらいの気持ちで書いていこうと思ってます。よろしくお願いします。ちゃんと人間の美少女も出します。


[はぁ……間に合ってよかった]


誰かの独り言で目が覚めた。



[――誠に残念ながら、あなたの人生は終わってしまいました]


明るいのか暗いのか分からない、とにかく何もない空間で意識を取り戻し、最初に聞かされたのがこの言葉だった。


体を動かすこともできない。そもそも動かすための体なんて存在していないのかもしれない。夢の中にいるような感覚だった。


死因は何だったのだろうか。


まず気になったのはそれだった。


[し、心臓破裂、です……]


おお……。


それ以上の言葉は出てこなかった。


心臓が、破裂?


自分の死因だというのに、どこか他人事のようだった。


随分と、痛そうだ。


いや、思い出せない。


むしろそれで良かったのだと思う。


[状況を説明させていただきます。一度見ていただいた方がいいですね]


その言葉を聞いた瞬間、ようやく辺りが視認できるようになった。


やはりそこには何もなかった。


相変わらず明るいのか暗いのかはよく分からない。


声も「聞こえている」というより、「直接、意識に届いている」といった感じだった。


[この猫のことは、思い出せますか?]


何もない空間にただ一匹、


白い猫がいた。


…ああ。


少し肉付きの良くなった身体。


小さな耳。


見覚えのある青い瞳。


思い出した。


俺は、この猫を拾ったんだ。


家族も友達もおらず、愛情に飢えた俺を見ているようで放っておけなかった。


後先なんて考えず家に連れ帰った。


[この猫は、私です。暖かい寝床に、おいしいご飯。一月ほどの間、とても良くしていただきました]


いまいち状況が飲み込めない。


しかし、自分が死んだと聞かされ、諦めがついたからだろうか。


不思議と冷静でいられた。


[分かりませんよね。すみません。自己紹介から始めます。私は、あなたたちの世界でいうところの『神』です]


なるほど。


神様だったのか。


それなら納得だ。


これから天国か地獄のどちらに行くのかを教えてくれるのだろうか。


いや、あれは閻魔様だったか。


俺は宗教に疎いんだ。


神様と聞かされたところで、神様が何なのかなんてよく分からない。


……まあ、脱線はよくないな。


えっと、猫を拾って、可愛がって……。


少しずつ意識がはっきりしてきて、思い出せることも増えてきた。


その中で蘇ったのは、ベランダの手すりを越えようとする君の姿だった。


――なんで君は、そんなところにいたんだ?


それを止めようと、慌てて手を伸ばして―――。


そこから先は、まだ思い出せない。


[ずっと、ここから、あなたたちを見ていたんです]


……ずっと?


[家族や友人と触れ合って、楽しそうに笑っている。そんな姿を何千、何万年と見ていました]


神様とやらはかなり長生きしているようだ。


まだ二十年そこそこしか生きていない俺には、その苦しみを想像することすら難しかった。


[……羨ましくなってしまったんです。誰かに触れてみたくて、とうとう我慢できなくなって、一時的にここを離れ、猫の姿となってあなたの世界に顕現しました]


神様は静かに言葉を続ける。


[母体もなく生まれ落ちたものですから、頼れる家族もいませんでした。他の生物との関わり方も分からないまま、生きていくことの苦しさに打ちのめされていたところで、あなたに出会ったのです]


そこで一度、間が置かれ、神様はゆっくりと言葉を紡いだ。


[怖くなってしまったんです。猫の体が朽ちたところで、私の魂そのものが消失することはありません。しかし、いずれあなたはいなくなってしまう。あなたからいただいた温もりを冥土の土産にして、あとは外で静かに朽ちるのを待つつもりでした]


自分がしたことに、後悔はない。


正しいことをしようとしていた――とまでは思わない。


ただ、可哀想なことをしたとは思った。


自分が死んだのは、不注意だった自分のせいだ。


[違うんです。私の考えが至らなかった。全ては私の責任です]


神様の声が震える。


[あなたが、あんなに必死に手を伸ばすとは思っていなかった。四階から落ちて、動かなくなった真っ赤なあなたを見て……初めて、自分の愚かさを思い知りました]


神様にも、時間を巻き戻すことはできないのかもしれない。


万能というわけではなさそうだ。


項垂れる白猫を見ながら、俺は呑気にもそんなことを考えていた。


[私は、あなたを助けたい]


神様が顔を上げる。


[体から魂が切り離されたばかりなので、まだあなたをここに留めておくことができています。ですが……それも時間の問題です]


一拍置いて、神様は続けた。


[転生を望んではいただけませんか。できる限り、あなたが望む世界で、あなたが望む姿で、あなたが望む才能をお与えします。]


これはあれだ。


異世界転生の序章だ。


やったぜ。


しかも神様は、異世界ですべき魔王討伐なんかの仕事を押しつけるわけでもなく、自分が幸せに生きるためのサポートまでしてくれるらしい。


[生きていただけるのですか……!]


もちろん。


世界を選べると言っていたけど、どんな世界があるんだろう?


[いくつか作りましたが、作ったまま放置しているものも多くて……あとは、その世界の最上位種次第なので何とも。水中だけで構成された世界、魔法が存在する世界、他には虫だけの世界だったり……]


ふむふむ。


俺たちの世界でいうところの『異世界』みたいなのもあるのかな?


[一度、思い浮かべていただければ、近いものを提案させていただきます。]


魔法があって、

魔獣がいて、

中世ヨーロッパのような……


[あっ、ありました!]


見つかったらしい。


[それでは、ここに決めてしまいますね]


わくわくしてきたな。


次は姿か。俺はこれまで、ゲームをするとき、美少女キャラを選択せず、自分と性別が同じキャラクターを主人公に選んできた。


なら、こだわるべきは顔か?


神様が首を傾げる。


[種族は人間でよろしいのですね]


―――――――――。


……まさか。


…ああ、そうだ。


心が読まれているんだった。


つまり、この神様は俺の全てを理解している。


そういうことか。


「なれるんだな!? ケモノに……!!」


初めて声が出た。


――ショタボだ。


俺の喉から、愛らしい少年の声が出ている。


しかも。


「内山夕◯みたいな声がずっと欲しかったんだ……!」


嬉しい。


どうしよう。


握りしめた拳に力が入る。


どうやら、体もあるようだ。


そっと目線を下ろす。


大きな手。


太い指。


当たり前のように生い茂る、ふかふかの白い体毛。


指先には尖った爪。


高鳴る胸に応えるように、手のひらを返す。


肉球だ。


「よっしゃああああああああああああああああ!!!」


[喜んでいただけたようで何よりです]


神様の声色から、先ほどまでの暗い雰囲気が消えている。


挿絵(By みてみん)



[そちらが、選択肢の中では一番あなたの好みに近い種かと。人が決めた種族名を『ライゴン』といいます。知能は人間と同等。手も使えますし、空も飛べます。夜目も利いて、雑食です]


「空も飛べるの!?」


[はい]


「完璧じゃん」


見えないはずの背中で、羽がぷるぷると震えている気がした。


神様の心も晴れたのか、先ほどまでの沈んだ雰囲気が嘘のようだった。


そうだ。


気にする必要なんてない。


俺は今、世界一の幸せ者なんだから。


……と思ったところで。


[しかし、また残念なお話がありまして……その世界では、人間が最上位種です]


「……うん」


[そして、人間と魔獣は共存関係にありません]


「…………うん??」


[つまり、その種族は――]


神様が申し訳なさそうに目を伏せる。


[人間から、命を狙われる側です]


「何を今更。俺はこの姿が気に入ったんだ。もう、このもふもふちゃんしか認めないぞ!」


腰に手を当て、胸を叩く。


うわっ!


胸毛がふわっふわだぁ…。


[ああ、そんな……。それでは、せめて強く生きていくための才能を……]


俺の想いには寄り添いたい。


その一方で、心配で心配でたまらない。


そんな気持ちが、ひしひしと伝わってくる。


才能と言われても、特に目立った希望はない。


こういうときはチートスキルを欲しがるのが鉄則だ、とは頭ではわかっているものの、俺は既にこのふわふわに取り憑かれている。


チートスキルを得てしまえば、それはもうこのライゴンの習性を捨てることにもなりかねない。


平均的な範囲で何でもこなすことができれば、それでいいと思う。


[何でもいいのです。異性に困ることがなくなったり、良き相棒ができたり……恵みと呼べるような運命をですね]


「……それなら」


俺は少しだけ考えてから、答えた。


白猫が固まる。


「お前だ。レオ」


白猫は顔を伏せて、それきり動かない。


ただ尻尾だけが、ピンと立っている。


「お前と一緒にいたい」


拾ったのは、可哀想な白猫のためだけではなかった。


正直、自分も誰かに必要とされたかった。


実際この一ヶ月は随分と楽しかった。


帰宅すると、俺に駆け寄るその姿に、


名前を呼べば、嬉しそうに返事をするその姿に、


眠るときには、いつの間にか足元に丸まっているその姿に、


いったいどれほど救われたことか。


――そうだ。


レオだったんだ。


俺の人生をいいものに変えてくれたのは。


[……それで、いいのですね]


伏せたまま、レオが尋ねる。


返事は一つだった。


「ああ」


[……分かりました]


レオは足元へ擦り寄ってきた。


耳を左右に開いて、ゆっくりと目を閉じる。


その姿に、俺は自然と腰を下ろしていた。


もう、全て思い出している。


親指が頬を掠め、残り三本の太い指が首筋を撫でる。


[それでは、また来世で]


「ああ、楽しみにしてる」


ゴロゴロと、喉を鳴らす音だけが響く。


その音を聞きながら、俺は目を閉じた。


――今度こそ。


今度こそ、こいつと一緒に生きよう。


そう思った瞬間。


俺の意識は、途絶えた。

感想を読みながら今後の展開を考えていこうと思っており、些細なことでも、感じた違和感やここが好きといった場面などがあれば教えていただけると嬉しいです!

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