51 やぶれかぶれ
どうする。どうすれば奴を倒せる。
遠距離では魔法を使われ、近距離であれば槍の如し氷の両腕による攻撃をされる。
一方、俺に出来るのは空間を引き裂き次元の狭間を生み出す事のみ。しかし、こちらの刃は分厚く鉄壁の氷装により阻まれてしまう。
自身の力ではどうにもならないなら周りの力を使おうと見渡しても、あるのは美しく咲く雨水蓮のみ。
こんな状況では、もう逃げるしかないのか。
それも生き残る為の手段のひとつだ。
でも……。
ここで奴の目を離せば、今度はこの街の住民、いやレジスタンスやフウマや……ユズリが標的にされてしまうかもしれない。
それは、駄目だ。絶対に。
だったら、俺がやれる事はひとつだ。
「ぅぉおおおおああああぁあッ!」
俺は馬鹿みたく、泥臭く叫びながら駆け出した。
辺りの雨水蓮が儚く散る姿には申し訳なく思うが、胸中で一言謝り目の前に全ての集中力を注ぎ込む。
「ら、ぁあっ! うおあァアアッ!」
お互いの間合いに入った所で、奴が拳を振るう直前にこちらから斬撃を浴びせた。
斬り抜いた為そこから吸収力が発生するが、氷に覆われたガンゾルドには全くと言っていいほど効果は薄い。
だが、少量だが氷のアーマーは確実に削れていた。
俺にはこれしか出来ないのだ。
ならば、この力を信じて今は斬り刻んでいくのみ!
「こンのガキゃああああああああッ!!」
ガンゾルドが吼えると、皿状に氷柱を逆立てたものが出現した。
俺はそれを後退でなく真上へ跳躍する事で躱す。
ここで引いたら折角削った氷装が復活してしまう。そう思った俺は更に連撃を重ねた。
「だらァァァァアアっ!」
斬って斬って斬って斬って斬りまくるも、奴の装甲を砕ききれない。
まだまだ攻撃が足りないのだと己を追い込み、更に速度を上げていった所で、奴が静か過ぎる事に気がつく。
ふと視界を広げると、奴は拳を振り上げ攻撃の瞬間を刻一刻と待っていたのだ。
それを察し目を見開いた時、奴の右腕を覆う槍のごとき氷塊が、線を描くように放たれた。
「くほっ……」
左肩からへそ辺りまで垂直に斬られ、思考が吹っ飛びそうになる。
しかしアドレナリンが濁流並に流れ込んでいるからか、何とか意識を保つ。
そして俺は、お返しとばかりに袈裟斬りを見舞った。
瞬間。
俺の目の前に、見慣れないようで見た事のあるものが現れた。
否、“表示”された。
【〈片手剣〉スキルを獲得しました。】
「え、今!?」
思わず叫ぶ俺に、目の前のスクリーンから氷の槍が突き破って襲いかかる。
ちょ待てよと思うが、ここは流石に後退しオマケに次元の狭間も作って時間を稼ぐ。
今のうちだと腹を決め、左手をプログラマーを彷彿とさせる速度で閃かせステータス画面からスキルスロットを操作した。
セットが完了すると、召喚スキルの時と違い緩流の様に剣術の極意が脳に染み渡る。
即座に剣の技術を覚え、幾つかの剣技さえ習得した俺は、改めてガンゾルドに向き合った。
これ以上花を傷つけるわけにもいかないし、これで決めよう。
このタイミングでスキルを覚えられたのは、傍から見れば出来すぎた話。又は予定調和やご都合主義にも受け取られかねない。
だが、今はそんなことはどうでもいい。
今は、数々の人を傷つけたガンゾルドと、決着を付けるのみ。
「……行くぞ」
自分でも驚く程に冷えた声は、世界の時間が止まったと錯覚する程だった。
痛みなど忘れ、雨打たれる水面を滑らかに駆け抜けながら、俺は腕を真横に伸ばし剣をピタリと止める。
ガンゾルドは俺に近づかれる前に冷気の放射を構え、撃ち放った。
俺は剣を前に突き出し、ビーム状のそれを霧散させつつ駆け続ける。
「ふっ……ぉオッ!」
奴の目の前に来た時点で剣を振り払い、奴の真上へ跳躍する。
そして、左腰に備え直した黒剣を力の限り薙った。
スキルを会得したことにより使用可能となった、初の剣技。
その名をーー
「……〈次元一文字〉」
我が黒剣は奴の固く分厚い氷を斬り破り、その腹を次元と共に捌き抜いた。
鮮血が飛び散り、辺りの雨水蓮が紅く塗られる。
俺は黒剣握る手を降ろして、振り向いた。
「認めるよ。今回は……運が良かっただけだ」
悲しげな眼差しでガンゾルドを見下ろすと、とある奇跡が舞い降りた。
それは……
喉がめっちゃ痛い……作者です。
寝て起きたら治ってる事を祈りつつ、ついでにブクマとか評価も増えてないかなーと夢想します(チラッ
それはともかく、ついにガンゾルドと決着です!
後は話を纏めるのみですので、フィナーレと次の章もお楽しみ頂けたら幸いです。
それでは次回もよろしくお願いします!




