12 背水の陣
どれくらい追跡しただろうか。
日はまだ明るいが、あれからかなりの時間が経過した気がする。
いや、単に緊張が時間を長引かせているだけなのかも……と、考えた所でゴブリンに新たな動きが出た。
森の中に聳える崖。そこにあるぽつんとした洞穴。そこにゴブリンが入っていったのだ。
「……よし」
その一言で気を入れ直し、できる限り洞穴に近づく。
さて……ここからどうするか。
先ずはここに村人達が居るのか、それを知りたい。次に敵が何体居るのか。
だが……偵察するにしろ、リスクは伴う。発見されれば私は兎も角村人達に危害が及ぼされる可能性も。
……いや、ここは強気に行かなくては。
この一秒、一瞬の間にも、連れ去られた人々は恐怖に駆られている筈だ。
多少無茶してでも、行かなくては。
「……ふぅ」
一呼吸置いてから、ステータス画面を叩き出す。
そして、慣れた手つきで操作し、暗視スキルを発動させた。
スキルは先天的に得ることもあれば、修行により後天的に得ることもある。私の暗視は前者だ。父が狩人だった為、生まれつき夜目が効くらしい。
私はゆっくりと、洞穴を除き安全を確認しながら入っていく。
中は薄暗く、偶に乱雑に壁に立てかけてある松明の火が仄かに照らし出している程度だった。
暗視の効果により視界は無彩色だが、それでも松明に照らされてない部分が見えるのでだいぶマシである。
それでも物音を立てないよう慎重に進んでいくと、突如女性の叫び声が響く。
「……っ!?」
私は音を立てないようにしつつ急いだ。
そして、先程声が漏れていたエリアに辿り着く。
横穴の先はほんのり明るんでいるが、そこから漂う雰囲気はどこか暗かった。
恐る恐る顔を出すと、ゴブリンが女性引き摺っている様子が見える。
私は下唇を噛んで更に辺りを確認した。
その部屋には泥まみれの縄やら壊れかけの椅子やらがあり、他の人やゴブリンは見受けられない。
……チャンス、か?
いや、今は迷っている時ではない。
私は足音を立てないよう徐々に近づきつつ、左腰に備えた剣を抜いた。
そして、残り数歩位に近づいた瞬間……!
「……ふッ!」
「グェァッ…………」
一息に、ゴブリンの心臓を貫いた。
手に不快な感触が残るが、既に慣れてきているので気にせず剣を引き抜き、ゴブリンを捨て置く。
「大丈夫ですか?」
着衣を乱し、涙を浮かべ顔を歪ませた女性は、尚も震えたままだった。
余程怖い思いをしたのだろう。最初はそう思った。
しかし、そうでは無いと数秒後に気が付く。
「あ、あの……っ」
「もう大丈夫です。それで、他の方達は……?」
女性が震え混じりの声で何かを訴えかけようとしたその時。
上方から、複数の足音が聞こえた。そして……。
「グギャアッ!」
「ギャギャッ!」
何も無い筈の天井から、何体ものゴブリンが降ってくる。
改めて上を見ると、天井にはいくつもの穴があった。どうやらそこから流れ込んで来たようだ。
「嵌められたっ……!」
悟った私は、先ずは女性の安全のためにも抱えながら出口を目指すが、瞬間その前に三体のゴブリンが即座に立ち塞がった。
なんというコンビネーション……ゴブリンは通常、多くても四体ほどで徒党を組むが、彼らは十数体居るにも関わらずその陣形は見事だ。
加えて仲間一人を釣り餌にする残虐性もある……そんな奴らに、果たして私一人でやれるのか。
いや、やるのだ。今は冒険者だが、心は騎士。その矜恃にかけてこの人は必ず守る。
改めてそう決めた私は、近くにいるゴブリン一体の頭を剣で叩き割り、死体を退かして壁の一角を取る。
女性には後ろに居てもらい、このまま奴らの攻撃を受け続けるのだ。そして、一体ずつ倒していく。
気が遠くなりそうだが、今はこれしかない。
「……来い!」
読者の皆様。いつも読んでいただきありがとうございます。作者です。
いつものお巫山戯はどうしたと言われそうですが、最近全然評価もブックマークも増えないので真面目にやる事にしました。まぁ、問題は小説本文の面白さ何ですけどね笑。
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