家族会議
お父様が隣のロワール国から帰って来た。
「メイ、ロワール国の帽子とショコラだぞ。おいで」
「お父様 おかえりなさい。ありがとうございます」
「おお、メイは、ここ1ヶ月で急におとなになった!」
「レイチェ、メイが私をお父様と呼んでくれたぞ。
メイ 、
それとも ン? 具合でも悪いのか?」
「なぜ 挨拶しただけで、お兄様と同じこと言うの?」
「いや、 しかし、メイ。 雰囲気が随分違うな。これなら王家にも通用するか?」
「王家って、お父様。 まさかお父様が殿下に婚約の話を持ちかけたのですか?」
「いや 、まさか。
王家から婚約者候補として再三打診されてね。
やんわりと断ったつもりだったのが、王太子の婚約者選びの最終の茶会に招待されたのだろう?」
「実は、先ほど帰国報告を王城でした時に、陛下から王太子たっての願いで婚約を真剣に考えて欲しいと言われたんだ。しばらく時間を下さいとだけ、返事をして来た」
シーン
「それは、無理というものですわ。」
母が口火を切った。
「僕もそう思う」
兄は怒っている様子だ。
「私もメイには、あの王太子は、合わないと思うんだが、王家側に引く様子がないんだ」
「王家とメイの組み合わせは、ありえない。絶対無理だ」
「そう言えば、殿下が昨日ここにいらしたとか」
「うん。なんか、駄々っ子みたいになってた」
「駄々っ子?」
「うん。婚約してくれるまで、何回でもくるって。ねえ、お兄様、 殿下って実は変な人だったの?」
「いや、いつも冷静で、何事にも動じないし、感情が読めない感じだが、お前と一緒にいる時に、笑っていただろう?あんな風に笑う殿下は、滅多に見ない。 フローラ嬢の前でも卒なく微笑むだけだ。
もしかして、疲れすぎて壊れたか?」
「でもメイ。きのう殿下に会ってから、お前も元気になったな」
「そうかな」
「ああ、この前からずっと、表情は暗いし、げっそりしていて、言葉もよそよそしいし、どうしたのかと思ったぞ」
「そっか。そうだね」
「なんか、殿下は、超優秀なのに、失敗しないようにいつも気を張ってて、ちょっと可哀想なんだなって思ったの。だから、殿下に私は、創造主に何万回もゆるされて生きてるんだから、殿下の失敗も私がゆるすとか言っちゃたんだ。 自分でも、そうなんだって、発見しながら。 その後、私に婚約してほしいとか、意味不明なこと言い続けて変だから、説得しようとするうちに、ついつい殿下にも崩した話し方になっちゃって。
想像を絶すること言われたショックで、気分が少し明るくなった」
「そうか」
「だが、王太子の婚約者は、流石にまずいよな」
「うん」
「すごい怖いおばさんとかが、目を皿のようにして欠点を探して来たり、妬み嫉みのオンパレードになるよね。
わたし、誰にも迷惑かけないようになるのが、人生の目標なのに」
「そうね。メイには、優しいお婿さんを探してあげるわ。うちの離れに住めばいいのよ。家は、お兄ちゃんが継ぐけど、結婚相手は、平民でもいいんじゃないかしら」
「レイチェル!?」
「あら、最近は、平民で立派な人がたくさんいるわ。
世の中も変化しているし、その方が幸せになれる気がするのよ」
「母上、公爵家から平民に嫁ぐとか、さすがメイの母上というか、なんというか」
「デイビス、私は、よく考えた上で言ってるのよ。
ボールドゥ伯爵に嫁いだいとこのリーシェがね、今実家に帰って来てるのよ。伯爵が莫大な借金をした上に、愛人のところに雲隠れ。
王都の屋敷と領地の屋敷の両方とも、借金の抵当に入っているから追い出されて、今は生まれて間もない赤ちゃんと実家に戻っているのよ。領地は、年老いた先代が管理しているけれど、爵位を売ることになるかもしれないわ。
一方でね、 学園時代の親友のオーリュセン子爵令嬢は、商人に嫁いだのだけれど、それは、幸せそうなのよ。 嫁いだのは薬で有名なスミス家よ。貴族出身の彼女は姑にも大切にされてて、住まいは、子爵家よりもずっと立派な屋敷でね。彼女は化粧品の製造販売に携わっていて貴族のご婦人のサロンで紹介をしたり、広告塔として活躍してるわ。
子供達も最高の教育を受けていて、本当に幸せそうなの。
あまりにも対称的な二人に、思ったの。
メイなら、平民との結婚の方があっているんじゃないかって。
公爵令嬢が平民になんて 私の時代にはあり得なかったけれど、これからの時代、そしてメイならば、その方がのびのびとメイらしさを発揮して生きることができると思うのよ。王城には、古〜い魔物が巣食っていて、貴族一般から大幅にずれているメイには、可哀想すぎるわ。
セシル妃殿下は、 メイのような子が来てくれると新しい風が入って嬉しいっておっしゃっていたけれど、メイは「風」程度じゃないしね」
「そーだなあ。メイが王室に入ったら嵐とか地割れとか恐ろしいことになりそうだよな」
「殿下は、メイの落ち込んだ時の姿しか見ていないんだろ?誤解してる可能性が高い」
「無理じゃないか?」
なんか、ひどい言われ方な気がするけど、要するに、王室に入ったら、タイヘンな迷惑になることを家族は予想してくれているのだろう。
身近な人たちだけあって、流石によく理解しているらしい。
「それで、どうすればいいの?」
「平民との婚約を決めればいいんじゃないか?」
「それでは、王室からの要請をはねのけることができない」
「そうだよね」
「私のボケをカミングアウトすれば良いわ」
「ある程度はしたんだが、」
「家族から、要注意人物なので、見極めが必要ということで、婚約はしばらく見送っていただけるようとにかく頼めばいいのではないか?そのうちにメイが、ぶち壊せるんじゃないか?」
「取り繕うことをしなければ、
向こうから断ってくるだろう」
「そうだよな」
「そうね」
「そうなるわよね」
「わかった。じゃあお父様、断っておいてください。
あまりにもふさわしくない娘なので不安すぎるから、テストしてくれと」
「そうね。どうせ平民に嫁ぐなら、噂とか関係なさそうだし。もうメイのことを隠さなければ、自然に終わるよ」
「はい」
なんか、ちょっと癪に触る言われ方だけど、その通りだろうから、それでいいや。
このいい加減さ。 ADHDは今世の家族の遺伝か?




