38話 聞いてみたいこと
「今作戦の大将として命じる」
大粒の雨が降り注ぐなか、俺は青空の手を握りしめ魔力を注ぐ。
集まる魔物たちは、たまたま来たシャーロットと眷属たちが頑張って排除してくれている。
「お前の力で、お前が、パレードボスを倒してこい」
意識を集中させる。
青空が少しでも優位になるように、パレードボスが弱体化するように。
「終わるまで待ってる。だから……早く、戻ってこい」
それで、もっと聞かせてくれ。
里川の凄いところを……。
魔力を込める。
想いを込める。
二人の願いが、叶うように……。
○○○
「なあ青空」
「……なんや?」
ピリピリしてるなぁ。
まあ、今からパレードボスの拠点に行くのに、ふわふわしてる方が問題か?
でも、もう少し緊張は解いてもいいような気がする。
「里川にもきいたんだけど、青空の望みってなに?」
だいたい、予想はつくけど。
「私の? あってもあんたに言う必要はないやろ」
ごもっとも……。
「あっ、一つあったわ」
笑顔で……俺の方を見てきた青空。
笑ってれば可愛いのに……。
「あんたの素顔拝見すること」
「諦めてなかったのな……」
“そう簡単に諦められるか”という言葉を目や雰囲気で語ってくる。
たしかに色々とやらかしてるけど、全部タイミングが悪かっただけだろ?
この話題はなんか不利だなぁ。
別の話題にしよう。
「定時連絡のときに、里川と色々と話をするんだが、あいつってどんな武勇伝持ってるの?」
「未来の……?」
少し考えこんでいる青空は、呆れ顔になったり、青ざめたり、ホッとしたり、普段のきつめな表情から、おもしろ面相になっている。
「……ん?」
詳しく聞きたかったが、タイミングが悪く【気配察知】に複数の反応がある。
気がついた者もいるだろうが……。
「スルーする。位置情報を伝えておいてくれ」
「了解しました」
部隊員の一人に言って、シャーロットの部隊に連絡してもらう。
そして、進行すること20分。
パレードボスがいるであろう建物に到着した。
俺の【気配察知】には、パレードボスであろう気配をばっちり捉えている。
「よりにもよって、シャーロットが一番来たがっていたところか……」
「そやな。ふぅ……私らは予定通り、周囲を囲むわ。頼むで」
黙って頷き、その場で部隊員の人たちが配置に完了したという連絡を待つ。
その間に、職業の一つを【陰陽師】に変えておく。
20分後、青空から連絡が入り、中に突入した。
今日の天気が雨なのもあるのか、中は少しくらい。
敵が妖狐というのもあり、雰囲気も不気味な感じがする。
――見つけた!
まずは一匹、建物内にいた狐の魔物を撃破。
そこは侵入者の迎撃場所なのか、狐たちが離れたところに絶妙な感覚で配置されている。
そして、灯と思われた炎は、視覚から幻覚をみせるためのスキルだと判明した。
あえて、水属性の魔法で炎を消す。
これで、この周辺にいる狐たちの意識が、突然消えた炎に向いた。
そのうちに……
「刈り取らせてもらおう……」
――神速……!
刹那の数秒。
狐たちの迎撃場所は壊滅した。
中にいる狐たちを倒しながら進んでいく。
格段に強い気配が近づくのがわかる。
「あいつか……」
最奥にいたのは、金色の綺麗な毛を靡かせ、静かに佇む尻尾が九本ある大きな狐だった。
先手必勝!
こちらから仕掛ける。
猛スピードで近づき、首をめがけて大鎌を振る。
だが……
「ギュルルル……!」
「ちっ……」
【直感】か……。
個体によって差がでるが、パレードボスは別格だな。
レベルがもっと離れていればよかったのかもしれないが、上限は100だ。
そのうち、このスタイルが全く通じない相手が出てくるかもしれない。
そうこう考えている内に、妖狐は逃げ出した。
「待て! 飛斬<風車>!」
手裏剣の形をした飛斬を、逃げている妖狐に向かって放つ。
妖狐の方も、ただでやられる訳にはいかないと、尻尾から炎の球を放ってくる。
だが、威力はこちらの方が上らしく、その抵抗を簡単に蹴散らす。
(このまま直撃で大ダメージ、怯んだところを仕留める)
そう考えていたが、やはり、そう簡単にはいかないらしく……
ボウンッ!!!
妖狐は飛斬<風車>が当たる寸前で尻尾の先から爆発系等の魔法を使った。
その威力で飛斬は上の方に逸れ、天井を切り裂いて貫通した。
今の攻撃で得られた成果は、尻尾を二本落としたことか……。
それからも激しくも姑息な攻防戦が続く。
ダメージを与えようと攻撃する俺。
幻術が効かないとわかり、ほぼ【直感】と爆発系の魔法に頼り、逃げるパレードボス。
そして、パレードボスは賭けに出た。
このまま中で逃げ回っても、その内狩られると判断したパレードボスは外に出ようとする。
「全隊員に連絡! パレードボスが南から外に出る。パレードボスは雨の中でも幻術を使ってくる。効果は半減されるが気をつけてくれ」
この建物で南というと……。
飛び降りられたら面倒そうだ。
一気に決めるか……。
「覚醒……!」
俺の覚醒時間は200秒。
ステータスは倍どころかさらに倍。
「……終わりだ!」
いける!
外に出られる前に間に合う!
「ギュルルルルルゥゥゥ!!!」
「うおっ……!」
パレードボスは爆発を加速に使い、さらにスピードを上げた。
後ろに迫っていた俺は少しダメージをくらってしまう。
どうあっても逃げ延びるつもりのようだ。
そのままの速度で外にでる妖狐。
しかし、それを予測してくれていた者がいたようだ。
「終いや……」
静かな呟きと共に、妖狐の足元に魔法陣が現れる。
どうやら青空が先読みをして、仕掛けを作ってくれたようだ。
爆発の音と煙が上がる。
これで、怯んだところを仕留める。
まだ立ち上る煙の中に突入し、大鎌を振ろうと手を後ろに引く。
だがそこで、パレードボスが驚愕の行動に出た。
攻撃に耐えたパレードボスは、青空めがけて飛びつこうとする。
「ぅ……!」
そして、吸い込まれるように青空の中に入っていった。
煙が晴れて見えたのは、頭から狐の耳、尻から九尾を生やした青空。
「う……ぐぅ、はぁ……逃げ……や」
苦しむ青空。
おそらく、精神の削りあいをしているのだろう。
持ち堪えているようだ。
俺は【異空間倉庫】からアイテムを出す。
加工しておいた『輪入道の目玉』だ。
「青空、こっちを見ろ!」
輪入道の目玉を青空に向ける。
「侵蝕する者よ。汝の魂、ここに消化す」
対象はパレードボス。
青空はその場で人形の糸が切れたように倒れこむ。
俺は駆け寄り、仰向けにしたあと青空の手に輪入道の目玉を乗せて、反対側の手を握る。
「青空、聞こえているかわからないが、聞こえてる前提で言うぞ」
魔力を注ぎながら体内にいるパレードボスと戦っているだろう青空に語りかける。
「パレードボスはかなり弱体化している。倒せるのはお前しかいない」
【気配察知】に、まだ生き残っている魔物の気配を感じとる。
だが、討伐隊の人たちが頑張ってくれているのかこちらに近づいてくる様子はない。
それに、空からの気配が一つ。
これはシャーロットか……。
ついでに眷属たち、しばらくの間頼む……。
「今作戦の大将として命じる。お前の力で、お前が、パレードボスを倒してこい」
意識を集中させ、魔力を送り込む。
聞いてみたいんだ。
二人がどんな風に過ごしていたのか。
「終わるまで待ってる。だから……早く、戻ってこい」
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