37話 雨の奪還戦
大粒の雨が滝のように激しく降る。
こんな日は外に出たくない。
だが、この天気だからこそ、有利な点もある。
環境的なことに視点を向ければ、滑る、視界が悪い、体温が冷える、雨音で聞こえ辛い、などあるが……。
「今回の相手には、視界が悪いのと、音が聞こえ辛いのは、ラッキーかもな」
俺の言葉に頷く部隊員たち。
それに……
「幸か不幸か、雨でも普通に動ける仲間が増えたことだしな」
むしろ雨の日の方がいいか?
「頼りにしてるぞ、小吉」
ボヨンボヨン……と、体を伸ばしたり縮ませたりしてアピールする小吉。
「と、月野姉弟も」
「任せろ!」
「……はいぃ〜」
弟と姉でテンションにだいぶ差があるな。
「全員カッパは着たな。足元には充分に気をつけてくれ」
部隊員は俺の言葉に頷いた。
「では、各部隊出陣!」
○○○
出陣から10分が経とうとしていた。
しかし、誰も敵の姿を見たものはいない。
「どういうことかと思ったら、建物の中にいるのか」
「どないする?」
雨に濡れると不利になるのは向こう側。
だったら……
「とりあえずあの建物を包囲してくれ。それと青空。逃げられても大丈夫なように、建物の周囲に爆発の魔法陣を描いてくれ」
「わかった」
たぶんパレードボスも建物内にこもっているだろうな。
しかもいるのは壊すのに躊躇う建物だろうなぁ。
建物の包囲が完了した。
「シャーロット、いけるか?」
「……うん」
返事をしたシャーロットは魔力を目の前で溜め、出現した魔法陣から青い炎を出す。
高温の熱で建物の屋根が溶かされた。
慌てる狐の魔物たち。
ここの建物はもうダメだと逃げ出そうとする。
しかし……
ボウンッ!
と、青空が仕掛けた爆破陣のトラップに次々とかかる狐たち。
運良く逃れたモノたちがいても、包囲した討伐隊員たちによって狩られていく。
そして15分後、無事に一つ目を攻略。
「いいペースだな」
魔力量に気をつけるのと、建物の中に入らなければ大丈夫そうだな。
「青空、あとは任せてもいいか? 体調が悪そうな奴がいたら、無理せずに撤退してくれ」
「了解や」
頼りになる副将がいてくれると助かる。
俺は空に飛び【神眼】で狐がいそうな建物を探す。
「あそこか……」
賢い……いや、小賢しいのか、逃げやすく武器を振り難い建物に隠れている。
「逃げられたら面倒だしな。ライム」
念のために保険をかけておこう。
建物の中に潜入する。
一匹……二匹……三匹……。
全て一撃で倒していく。
机の下に一匹……ロッカーに一匹……戸棚に一匹……。
狐たちもさすがに異変に気がついたようだ。
勝手に開くドアに、開く音、刃物が固い物を切る音……。
異変に気づき、場所を変えるために移動する狐。
その狐は突如、何もない虚空に消える。
はっきりと、明確に仲間が消える瞬間を目にした狐たち。
少し騒がしくなり、隠れていた多くの狐たちが用意していた逃げ道を目指す。
「……【眷属強化】ライム」
眷属装備を解除しておいたライムを逃げ道に先回りさせておいた。
数分後、すべての狐はライムに飲み込まれる。
「よし、この建物は終了だ」
その後も、同じやり方で建物内にいる狐たちを狩っていく。
時々、青空に通信で状況を確認し、問題ないようなら続けてもらった。
そして休憩と昼食を兼ねて、昼前に合流する。
そこでちょっとした会議も開く。
「ここは急な坂になっとる。雨の日は特に気をつけなあかんとこや」
地図を広げて、京都出身の人も交えながら、午後からはどう攻略しようかと策を練る。
そして一時間後、ようやく詳細が決まり、二つの班に分かれることになった。
一つはパレードボス討伐の班。
といっても、建物の中に俺が潜入し戦闘を始める。
残りのメンバーは外で建物を包囲し、俺から逃げた魔物を仕留める。
そしてもう一つは、まだ魔物が残っている建物を探し出し討伐する班。
シャーロットが潜入後戦闘を開始。
当然幻術が効かないとわかった狐たちは外に逃げ出す。
そこを確実に仕留めていく。
「じゃあシャーロット。何かあったら青空に連絡を入れてくれ」
「……わかった」
二つの班に分かれた俺たちは、それぞれの行動を開始した。
○side:大阪班○
「いやー、やっぱり雨降ったんやなぁ」
今んとこ的中率は100%やな。
しにがみはんたちは大丈夫かな?
その時、ウチの頭の中で、しにがみはんがステンと転んで仮面が取れるという妄想が広がった。
仮面の下にある顔はM字の太い眉毛、細い垂れ目におちょこ口……
「ぶふっ!!」
「わっ⁉︎ 未来どうしたの?」
あっダメやこれあかんわ。
「なんでもないよ、彩香ちゃん」
「なんでもない表情に見えないよ!?」
ウチ、今どんな顔になってんねん。
普通やろ?
ポーカーフェイスしとるよな?
「いや、ほんま何もないねん。雨で滑ったしにがみはんの仮面が取れて、どんな顔が出てくるか想像してただけや」
それでなぜか笑いの方向にいっただけや。
「しにがみさんの素顔か〜。どんなだろうね」
「彩香ちゃんの学校にそれっぽい人いやへんの? たぶん歳は同じくらいやで」
「う〜ん……」
悩んでるな彩香ちゃん……。
(私と同じ学校の有名な男子って……田口君。でもこれは絶対に違う。あとはサッカー部やバスケ部のイケメンさんたちが有名だけど、ホープさんの所でも見てないんだよね。となると……)
目を開けた彩香ちゃんは……
「たぶん私とは違う学校の人ね。あんな雰囲気の人は、同じ学校にいなかったと思う」
***同じ学校で同じクラスです***
「そっか〜」
彩香ちゃんと話していると、中村はんが呼びにくる。
準備が整ったみたいや。
討伐隊の人たちが整列して待っている。
あとはウチの掛け声だけやな。
「ゴホンッ……まず作戦の確認や。今回は突入したらまずあの建物を占領するで」
敵の特性もあって、雨が降ってる間は向こうが有利。
だから一日限定で籠城しながら敵を倒す。
みんながもたせている間に、ウチがパレードボスを撃破する作戦や。
「ほな、奪還三日目。いってみよか」
隊列を組みながら進行し、目的の建物を目指す。
建物に行くまでに出てきた魔物を倒す。
負傷者ゼロ。魔力量も問題なし。
目的の建物には魔物が入っている。
「ウチは上からいく。【陸賊】と【空賊】の人も来てや。壁走る者は滑るやないで!」
職業【陸賊】【空賊】の人たち数十人と一緒に建物の上にいく。
そこから侵入して魔物を討伐。
「【眷属強化】ポッカ! 飲み込め!」
ポッカと他の人たちが次々と魔物を倒していく。
数十分後、無事に建物を占領。
【眷属化】して一時的な拠点にする。
「この後は二つの班に分かれるで」
一つはウチと一緒に討伐しにいく班。
もう一つはここで籠城して襲いにきた魔物を討伐する班。
「中村はん、こっちは任せてもいい?」
「もちろん」
「よっしゃ。じゃあ討伐班、いくで!」
ウチとポッカで丸焼きにしたる!
読んでくださりありがとうございます。




