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32話 奪還戦開幕

先週投稿日の記載を忘れていました。すみません。

次は22日です。

 

 不幸な勘違いとは、当事者の知らないところで思わぬ発展を遂げている。


「正座」


 神社から戻った俺と里川は、門の前で待ち構えていた青空に冷たい一言を放たれた。

 それに俺が反応するはずもなく……。


「……? なんで未来が正座してるの?」


「せ」と言われた瞬間に正座した里川に首を傾げて問う。


「だって香澄ちゃん。ウチが服、裏に脱いだから怒ってんのやろ。サボってごめんなさい」


 ピシャーン!

 ……うん。

 たった今、雷の方向が変わる映像が見えた。


「ミク……あんた……」


 会議を始める五分前ギリギリまで青空からの説教が続いた。


 10時00分。


「えー。ほんなら、今から直前会議をやりまっせ。ここからは竹中はんにお任せします〜」


 青空の説教で、ぎりぎりのところまですり減った精神を振り絞り、竹中さんにバトンをパスした里川。


「ぁ〜」


 椅子に座るとぐったりとし天井を見上げている。

 大丈夫か?


「改めて、竹中文雄いいます。よろしゅうな。若人たち」


 竹中文雄さんは52歳で体育系の人みたいな肩幅の広いがっちりとした見た目だ。

 サングラスをかけたら凄い迫力がありそうだ。


「今回はユニークスキル持ちが三人いるから、京都と大阪の同時攻略という形をとった。京都に行くのは――しにがみはん、シャーロットはん、青空はん、忍び部隊三名を含めた他200名。大阪は――里川はん、島田はん、中村はん、汐田はん、忍び部隊三名を含めた他200名。何か質問のある者は?」

「あ、あのー」


 ここで手を挙げたのは島田彩香。


「なんで私が部隊長なんですか? 朝倉玲奈さんがいると思うのですが……」


 実は今回、島田彩香はとある理由で部隊長に任命されている。

 シャーロットがいるので、月野さんとも離してみた。

 二人は仲良く、普段のダンジョンでの狩り稼ぎも一緒にやっているが、この際、色々試すことにした。


「あー! そういえば、彩香ちゃんは昨日の夜の会議にはいなかったやね」


 島田彩香の疑問に答えたのは里川。


「昨日の会議で京都・大阪の現状をわかってる範囲で公開したんやけどな。まぁどっちも多いんやけど、特に大阪がな」


 大阪は人が多い。

 そして人口密度も高い。

 これまでの情報で、一つの都道府県にダンジョンは5〜6個だと判明している。

 つまり……


「アンデッドの殲滅は任せるで! アンデッドキラーの彩香ちゃん!」

「え、あの、ちょっと待ってください! アンデッドキラーって何ですか? それに大阪にいた人たちはダンジョンに気づかなかったんですか?」

「その疑問には俺が答える。まだ推測の段階だが、確率は高いと思う」


 ダンジョンが出現したのは俺の家の庭や橋の下、あまり人が通わない神社など、人目に付きにくい所に出現したほかに……


「東京や大阪、京都などに出現したダンジョンは、人目に付きやすくかつ通報してすぐに警察が来る場所。もしくは老人ホームや学校など、通報が早くダンジョンに入る者がいない場所だ」


 老人ホームにいるお年寄りがダンジョンに入るとは思えない。

 従業員や管理人によって、すぐに通報される。

 そして学校。

 ダンジョンが出現したのは土曜日の八時以降。

 部活中に突如現れたのなら、興味のある生徒がいても先生が止めるだろう。


「だから、警察や正義感のある人たちが早く封鎖して誰もダンジョンに入らなかったと」

「うん」


 島田彩香の言葉に頷く。


「それと、全員死んだわけやないで。隣県に逃れた人もいて、今回の作戦を話したら“やる”言う人たちがぎょうさんおってな。油断さえしなければ、確実に奪還できるで」


 里川がそう続ける。


「それで、他に何かある者は?」


 手をあげる者はいない。


「よし。じゃあ予定通り、作戦開始は12時00分でいいな」


 俺の言葉に全員頷いて直前会議は終了した。

 あとは細かい準備だが、それらは中村さんや竹中さんに任せて、俺は『謎の素材屋』に行くことにした。

 実は今回の作戦。

 色々試すというところに、普段と違うメンバーで全く知らない土地でどこまでやれるのか……。

 あと、幻覚や幻術を使ってくる相手はどんな攻撃をしてくるのかを確かめることにした。


 何かあってはマズイので、その対策として素材屋に何かないかなぁ……と――素材屋に来てみた。


「いや〜にしても便利やなぁ。“謎の店”の全部の位置がわかるやなんて。なんの職業のスキル?」


 里川もついて……


「ステータス改変してんのもその職業のスキルなんやろ。ウチにも教えてや。なんの職業なん?」


 鋭いな。

 教えてもいいんだが、ただで教えるのってなんかもったいないな。


「機会があったらな」

「今たくさんあるやん! あっ! ちょっと待てや!」


 中に入り換金所を通り抜けると、素材屋の商品売り場は、一言で言うと、胡散臭そうな物ばかり置いてある。


「なんやこれ。“イエティの毛皮”って、いたんかイエティ……って! 値段たかっ! なんや一枚十万円って」

「“ドラゴンの爪”に“人魚の涙”。この二つは一つ1000万円だな」


 マニアの人が欲しがりそうな物がたくさん置かれていた。

 ちなみに、そういった架空上の生き物の素材以外にも、ちゃんと今まで俺たちが討伐した魔物の素材も置いてある。


「あっこれ。ウチらの防具に使われてるヤツ。一つ1300円。これは安いな」

「どうやらレア度が関係しているようだな。それと、安いといってもやっぱり割高だよな。これ使うには加工しないといけないし」


 イエティの毛皮は☆4で十万円。

 ドラゴンの爪と人魚の涙は☆6で1000万円。

 里川たちの防具に使われているのは☆1.3で1300円。

 人魚の涙とかは装備というよりは、【薬師】で作ることができる回復ポーションなんかに使うんだろうが、成功率は低そうだなぁ。


「し、しにがみはん。あれ、あれ!」


 里川が俺の裾を引っ張ってくる。


「どうした里川。随分と取り乱して……」


 指を向けているのでそこに目を向けると――


「……っ!」


『世界樹の葉』

 レア度☆7 一枚一億円。

 体の一部でも残っていれば、アンデッドになった者でも復活させることができるポーションを作成するための素材。


「一億って……」

「……無理やろ」

 って……

「衝撃を受けている場合じゃない。はやく目的の物を探すぞ」

「せやな」


 店の中をみながら歩きまわり、ある素材をみつけた。


「あったな」

「うげぇ〜。しにがみはん。ほんまにこれ買いに来たんか? しかもレア度5の100万円やで」

「100万でなんとかなるなら安いもんだろう? 青空が被害を受ける可能性もあるんだ」

「まぁ、せやな」


 本当は京都奪還には参加してほしくないのだろう。

 いくらユニークスキル持ちが二人いても、リスクはゼロじゃないからな。


「とりあえず、これを購入と……」


『輪入道の目玉』

 魂を抜くとされる妖怪――輪入道の目玉。

 そのまま使うと本当に魂を抜き取るが使用者のリスクも高い。

 加工後、使い方によっては使用者にも対象者にもリスクがなく使える。


 あとで職業を【内職者】から派生した職業に設定して加工しよう。

 俺の器用さ(実力)なら余裕だろう。


「しにがみはん。そろそろ戻らんとマズイわ」

「わかった」


 返事をしたあと気になることがあり、俺は【情報屋】のスキル【情報閲覧】で情報掲示板の書き込みを見ていた。


(……結城さんのトラブルってこれだよな。返事も返してるし……)


 それは、東京から結城さんのいる所へ書き込みされたものだった。


『名前:柴崎莉乃(しばさきりの)

 件名:助けてください!

 公開範囲:○○

 本文:助けてください! 私だけ残って死ねなくてみんないなくなって倒せなくて助けてください。』


 だいぶ追い詰められてる気がするな。

 アンデッドと魔物がはびこる首都で、死ねないか……。

 柴崎莉乃……春野弥生と同じ“キーパーソン”か?

 まぁ確かに、ゲームマスターとしてはせっかく用意した仕掛けがなくなるのは、面白くないよな。


 ○○○


 12時00分。


 拠点に戻った俺と里川は、中村さんと竹中さんが準備をし終わったと報告を聞いて頷いた。

 総大将の俺と里川は、みんなの前に立つ。


「今回は大阪・京都を同時奪還する」

「京都と大阪付近には、すでに先行部隊や現地の人たちがスタンバイしてくれている。各部隊、まずはそこに向かうで」


 出撃前の挨拶は、俺と里川で交互に言うことになった。


「初めてのチームで慣れないことも出でくるだろうが、これからもこういった即席チームを作るときがくると思う」

「まぁこれはチャンスと思てくれや。アドバイスとしては、無理に合わせる必要はない。攻撃だけは当てないように位置の確認だけはしっかりやるんや」


 少し間をあけて……


「それじゃあ、各部隊まずは目的地まで出発だ」


 移動は、改造・眷属化した乗り物で移動する。

 何もない道では走るより乗り物に乗った方が速い。


「とっ……大将! ここら辺は瓦礫が多い。迂回するか?」

「……いや、足で進もう。いいな」

「ええ」


 いちおう青空に確認をとる。

 崩壊のしすぎで通れない道は迂回か足で進む。


「よっと」


 基本【身体強化】は全員が習得している。

 足場をうまく使って瓦礫の山を乗り越える。


 ガラ……

「きゃっ!」

「おっと」


 たまに足場を崩す人もいるが、そこはサポートしていく。


「怪我は?」

「ないです。ありがとうございます」


 瓦礫の山を乗り越えたり、避けたり、時に……


「ふぅん!」

 バン!

「わぁ〜。シャーロットちゃんすごーい!」


 シャーロットのユニークスキル【蒼龍】の効果を見せてもらったりして進んだ。

【蒼龍】を発動したシャーロットは、背中から青い翼、こめかみ辺りからはツノ、尻からは尻尾が生えている。

 完全な龍になることはできないが、爪や鱗も出すことができるらしい。


「へ〜。その姿だと攻撃のレベルが上がるんだ。あっ、魔力の消費が激しいんだね」


 月野さんとは普通に喋れるようだ。

 いい傾向だな。


「ほんまユニークスキルってめちゃくちゃやな。全部先読みしたり、急に姿を消したり……」

「俺のスキルは姿を消すわけじゃないぞ。そして青空。お前もシャーロットと(はなし)してやれ。シャーロット(彼女)、最初の職業に【魔法使い】を選択したんだが、魔法が使えれば人と話せるようになると思ったらしい」


 まぁその願いはもう叶ってるけどな。


「…………」


 そして、青空も人見知りなタイプらしい。

 俺の言葉にそっぽを向いている。

 今まで里川以外に話す人がいなかったのか?


「まぁいい。行くぞ」



 目的地である京都の北西部――その拠点に到着したのは14時過ぎだった。

 ここの地域の魔物行進(モンスターパレード)は終わっていて、いまだに継続している地域から避難してきた人もいるらしい。

 それで……


「自分が代表者の菅田や。元……警官や……」


 代表者は四十代の元警官の男性だった。

 表情から察するに、これまで色々とあったのだろう。

 それでも彼の後ろには、生き残りついてきている人たちがいる。


「今回はよろしく頼むわ。正直に言うときつくてな。やけんなって捨て身で奪還にいく奴もおったけど、基本止めてるんや」

「総大将補佐の青空香澄といいます。こちらこそよろしゅうお願いします」


 さてと……準備するぞシャーロット。


「大将はあとから来るんか?」

「いえ、もうきとります。あなたの返事ですぐに隣区を奪還に向かいます」


 俺たちの仕事の……。


「自分の? それはどうゆう……」

「今回の作戦は京都の全地域奪還が目的です。しかし、行進(パレード)ボス未討伐の全ての地域を全員で行くんは効率が悪すぎます。京都だけで充分です」

「まぁ、せやな」

「せやから二人のユニークスキル持ちが、強敵(パレードボス)を討伐します」

「なるほど……それで自分らは残った魔物どもの殲滅ゆうことか……わかった。やってくれや。パレードボス(あれ)は死者も多くでるから割に合わん。みんなええな! わてらのやることは掃除や! 取り戻すでぇ!」

「「「「おぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」


 菅田さんの言葉にやる気のある返事をする人たち。

 今までは奪還の目処が立たず、唯一の資金源であるダンジョンを攻略せず活動していたのだ。

 不安要素が一つでもなくなるのは気持ちも楽になるだろう。


「京都代表の了承は得た。行くぞシャーロット」

「……はい!」


 俺とシャーロットは上空へと飛び、パレードボス未討伐の隣の地域を目指す。


「シャーロット。合図を出したら大技をぶち込んでくれ」

「……うん」


 今回の戦い、開始の合図は派手にいこう。


『しにがみ及びシャーロット。隣区に突入。これよりパレードボスの捜索を行う』

『了解や。やっぱりそっちは時間かかったな。嬢ちゃんの方はすでに戦闘を開始してるで』

『了解です。青空にも連絡お願いします』


 今回の連絡役は竹中さんだ。

 お手並み拝見といったところか……。


「……しにがみ」


 シャーロットが俺を呼んだ。

 どうやら……


「あれか……」


 パレードボスを見つけた。

 ここのボスは大きなカマキリのようだ。


「シャァァァァァ!」


 向こうも俺たちを見つけ、魔力で作られた斬撃を飛ばしてくる。

 だが……


「それはこっちもできんだよ! 飛斬!」


 放った斬撃が敵の斬撃を消し飛ばし、そのまま片腕のカマを切り落とす。


「シャーロット、やれ!」

「――発動」


 シャーロットの目の前に自身を隠すほどの大きさの魔法陣が現れ、そこから青い炎がカマキリに直撃する。


「キシャァァァァ!」


 攻撃が効いているのか、炎の中で苦しむカマキリ。

 しかしシャーロットの追撃は続く。


「とどめ!」


 青い炎を纏ったシャーロットがカマキリに突っ込んだ。

 燃えるカマキリの胴体に穴を開け燃えカスになったとき、アナウンスが流れた。


 《この地区の行進(パレード)ボスが撃破されました。これより魔物行進(モンスターパレード)を終了します。なお、制限時間外クリアのため、報酬はでません》


 その場に残っているのは、俺が切り飛ばした腕の一本。

【異空間倉庫】にしまい竹中さんに連絡する。


『こちらしにがみ。○○の行進(パレード)ボスを討伐』

『了解や。それと、嬢ちゃんから通信が入ってるから繋ぐで』

『どや? しにがみはん』


 里川の声に混じって、戦闘音が聞こえる。


『今のところ順調だ。そっちは?』

『こっちも順調やで。溶かせポッカ!』


 頑張っているようだ。


『そうか。それじゃああとは定時連絡で……』

『せやな!』


 通信を切る。


「……しにがみ」


 とどめを刺し終えたシャーロットが声をかけてきた。


「どうした?」

「……この後は?」

「俺たちは行進(パレード)ボスのみを討伐する。次に向かおう」


 俺の言葉に首を縦に振り頷き、俺とシャーロットは再び空へ。

 突入の準備をしている人たちも見えるので、この地域の魔物たちは次第にいなくなるだろう。

 期日は八日。

 一番大きなダンジョンがある京都はどうなるかわからないが、できればそれまでには奪還したい。


「奪還戦の開幕だ」


 負けるつもりも、死なせるつもりも一切ないぞ……。




読んでくださりありがとうございます。

次の更新は22日です。


何か書きたかったことがあったのですが思い出せない……

この文で投稿されていたら、思い出せなかったんだ。

と思ってください。


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