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虫退治をしよう(3)


「もう、もう二度と虫型モンスターはみたくない」


 一斉討伐を無事に終え、引き上げてきたリーン達がその疲れを癒そうとノワールへ来ていた。

ミラとリーンは完全にトラウマを負ったようで、さきほどから青い顔でずっとぶつぶつつぶやきながら震えている。

そんな二人を、ノワールがよしよしと慰めていた。


「いやぁ本当に助かったぜ! おかげで大儲けだ」

「こちらこそ、お役に立ててよかったです。 お金もたっぷりいただけましたし」


 そんなミラ達とは対象的に、エリスとハワードは金貨が詰まった袋を持ってにんまりと笑っている。

結局ハワード達が一番討伐数を稼ぎ、ギルドからの報酬が彼の予想通り転がり込んできた。


 お金を手にし幸せそうな顔をしているエリスを、ようやく一人でまともに稼げるようになったかとゾルは自分の子供を見るような眼差しで眺めていた。


「ちょっとゾルさん、なんか遠い目をしてるよ? 大丈夫?」


 ヒューリが振舞ってもらった紅茶を飲みながら、エリスを眺めるゾルにそう呟く。

彼女は結局、特にダメージをうけるわけでもなく、ハワードほどではないがそこそこ稼ぎもあげ、ほくほく顔で街に戻ってきていた。

ちなみにヴェインは他の冒険者に誘われ、ギルドの酒場の方へと行っている。


「いや、ダメ上司の成長ぶりにちょっと感激してな。それにしても、ミラさん達はだいぶ重症だな」


 ギルドで体の洗浄はしてもらったのだが、いまだに虫に襲われた感覚が消えないのか、二人は必死に自分の肌をさすっていた。


「あー、あれは引きずるだろうね。私も通った道だけど、少しの間は虫をみるだけで涙が出てきたし」


 かつての自分のような後輩の姿に、ヒューリは思わず苦笑いをする。


「虫は嫌、虫は嫌、虫は嫌……」


 同じ言葉を繰り返すリーンをみながら、ゾルもかつての出来事を思いだす。


「そういえばエリスも昔同じような状況になっていたな。あれも確か虫の巣の除去に立ち会ってか」


 話をふられたエリスは、げんなりとした顔でゾルの言葉に頷いた。


「あまり思い出したくないですね。確か、あまりにも強烈なトラウマが残ったんで、イグルツさんに忘却魔法で精神が回復するまで記憶を封じてもらっていた覚えがあります」


 さらっと忘却魔法などと恐ろしいことを言うが、この店主がいろいろ危ないことを口走るのはいつものことなので、誰も気にしない。


「たしかにそれはいい案かも。でもさすがに二人に忘却魔法使うわけにもいかないしねぇ」


 そもそも使える人しらないけど、とヒューリが続ける。


「まぁ時間が解決してくれるのを待つしかないな」

「せめて魔王討伐祭までには立ち直れるといいね」

「魔王討伐祭、もうそんな時期ですか」


 そろそろ来る大きな祭りに想いを馳せ、エリスは感慨深げなため息をつく。

人々にとっても、平和を手に入れた記念日ではあるが、エリスにとっても新しい道を踏み出した思い入れが深い日だ。

あれからちょうど一年が経ったが、随分と生活が変わったなと改めて感じる。


「お祭りの日は店を閉めて、みんなで出かけましょうかね」


 エリスがそういうと、ゾルも頷き、エルメナも目を輝かせて賛同した。


「どうせ開けていても人はこないだろうからな。露店祭とちがって、討伐祭は俺たちが店をだすのも難しいし」

「ボクも、エリスさんと一緒にお祭り回りたいです。楽しみにしてますね!」


 二人の賛同を受け、祭りが楽しみになってきたエリスは、今から少し心が踊るのを感じる。


「討伐祭は期待しとけよ。俺も実行委員として全力で盛り上げるからな!」


 そういって胸を張るハワードにエリスは目を丸くして尋ねた。


「あれ、ハワードさんってお祭りの実行委員なんですね」

「おう、冒険者にも手伝って欲しいって話がきててな。俺以外にも何人かギルドの関係者が参加してるぜ。まぁさすがに何をするかはここじゃ明かせないが、楽しめることは保証する」

「へぇ、ハワードがそう言うなら期待できるかも」


 ハワードの自信満々な言葉に、話をきいていたヒューリも楽しみだと笑みをこぼす。


「魔王討伐祭という名前だけちょっと気にくわないですが、これは楽しみになってきましたね」

「そうだな、どうせなら向こうにいる奴らも何人か呼んでみるといいんじゃないか?」


 ゾルの提案に、それはいいですねとエリスも頷く。


「祭りは3日ありますし、彼らも忙しいでしょうが1日くらいは空いているでしょう。手紙をだすだけだしてみましょうかね」


 そういってエリスは、しまっていた便箋を取り出した。



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