虫退治をしよう(2)
一斉討伐当日、虫型モンスターの巣周辺には大勢の冒険者が集まってきた。
そこにはエリスに話を持ちかけたハワードだけでなく、ミラやリーン、ゾルの常連客であるヒューリとヴェインも参加している。
「それでは皆さん、ギルド主催一斉討伐を開始します。討伐数に応じてギルドから報酬が出されるので、全力を尽くして討伐に挑んでください!」
職員の声を合図とし、冒険者が一斉に虫の巣へと駆け出した。
「ミラ、稼ぎどきだよ!」
「わかってる! 虫を集めるのは任せて」
ミラはセオリー通り魔力を放出し、冒険者たちの攻撃によって湧き出した虫たちをおびきよせる。
「よっし、さぁ狩る……ぞ……?」
しかし、寄ってきた虫のあまりの量にリーンは引きつった表情を浮かべて立ち止まる。
空を埋め尽くすほどの巨大な羽虫の群れ、地面を塗りつぶすように這い出る異形の虫達。
その様子を一目見るだけで、ぞわぞわとリーンとミラの背筋に怖気が走る。
「い、いやあああああ!!!」
そんな虫の大群が魔力につられ自分の方へと寄ってくる光景に、ミラは半乱狂になって魔法をうちまくるが、いかんせん数が多すぎて倒しきれない。
「み、ミラの方にはいかせるか!」
リーンも応戦するが、数相手では近接主体の戦闘スタイルは相性が悪く、あっというまに虫の群れに飲み込まれてしまう。
「「む、虫まみれになるのはいやー!!」」
二人の悲痛な叫びが、地獄絵図となった討伐現場に響き渡った。
リーン達以外も似たような状況に陥り、冒険者達が慌てふためいているところを、ハワードは余裕たっぷり眺めていた。
「冒険者たってな、筋肉だけじゃなくたまにはここを使わないとな」
こんこん、と自分の頭を叩いて独り言を呟いた後、事前に声をかけておいた冒険者仲間に合図を出す。
「野郎ども狩り時だ! 魔道具屋の姉ちゃんに作ってもらった秘密兵器、お見舞いしてやるぞ!」
ハワードの言葉におー! と叫び返し、数人がかりでせっせと魔道具を設置する。
花の蕾のような姿のそれは底に地面に刺せるよう杭が伸びており、それを一定の間隔をあけてどんどん突き刺していく。
この魔道具の効果はすでにエリスに見せてもらっており、うまく設置して起動さえできれば効果は保証されている。
順調に進んでいる計画を見て、ハワードはニンマリと笑った。
「ハワードのやつ、まーたおかしなことをやってるよ」
そんなハワードの様子を、少し離れたところからヒューリが面白そうに見ている。
「またなんか悪知恵を働かせてるんだろう。こういう真っ向からたたかっても効果が薄い相手には滅法つよいからなあいつは」
ハワードが何かしら変な策を打ってくるのはいつものことなので、ヴェインは気にせず近寄ってきた虫を切り落としていく。
「ウチも虫だらけになるのは勘弁願いたいし、そろそろ本気で行こうか」
魔法を使うと虫が寄ってくるのでヴェインに攻撃を任せていたが、すでにそこら中で魔法が使われているので、今更ちょっと魔力を使っても問題ないとヒューリは判断する。
「ちょっと伏せてね、ガトリングショット!」
ヒューリが自慢の武器である魔法弓の弦を弾くと、魔法でかたどられた矢が虫の群れに殺到し、次々に串刺しにしていく。
撃ち漏らした虫はヴェインが的確に切り落とし、ヒューリの方には近づけさせない。
戦い方はミラたちとよく似ているが、経験の差から向こうのように虫の波に呑まれることはなかった。
次々とヒューリが虫を撃ち落していく中、突如付近から爆音が鳴り響く。
「な、なにごと!?」
驚いて音の方をみると、先ほどまでせっせと何かを仕込んでいたハワードが大笑いをあげていた。
「はーっはっは! これは壮観、いやぁあの姉ちゃんにはマジで感謝しないとな!」
予想以上の魔道具の効果に、ハワードは笑いが止まらない。
この様子なら今日の討伐数トップは間違いなく自分たちだろう。
ハワードの合図で一斉に魔道具を起動させたあと、蕾のような魔道具はその花弁を開き魔力を放ち始めた。
なるべく人がいないところに設置したため、新鮮な魔力につられて多くの虫型モンスターを引き寄せていく。
そして一定の数モンスターが集まったところで、ハワードは二つ目の合図を送った。
すると、魔道具を中心に魔法陣が浮かび上がり、紫電を放ちながら大爆発を起こす。
集められた虫は逃げることもできずに、その爆風に飲み込まれ姿を消していった。
「使い捨てなのが惜しいといえば惜しいが、これだけできれば上出来だ! 最っ高だぜ!」
あとはもはや自分が手を下すまでもない。
合図を元に爆発していく魔道具をみながら、もらえるであろう報酬を予想しハワードはニンマリと笑顔を浮かべた。




