6-5話(終)
「、、、本気?」
「そうだよ。そうでもなきゃ体術なんて進めないさ」
すっかり温くなったコーヒーに口をつけながら、ただ肯定した。
「いやいや待つんだぜ!」
その言葉にエトワーは声を荒げて反応する。
「落ち着いて考えろよノウン!それは危険だって最初に言ったろ!しかもあの魔力だぞ!その被害は私たちよりも上だぞ!」
「まぁまぁ、そう声を荒げるものじゃない。俺も考えなしで言ってるわけじゃないさ」
そういうと彼は一気にコーヒーを飲み干した。
「はぁ、、、?」
「少し疑問に思ったんだ。なんであんな魔力を手にしているのにも関わらず、ラトリック自身には何の影響もないのかってね」
「そりゃあお前さん、魔法が使えないんだから影響もクソも無いだろう?」
言葉の端に少々の怒気を含みながらそれを吐き出す。
「いいや、それは違う。多少の差はあれど、魔力を持つと言うこと事態がその影響を受ける。自身の魔力を制御できないことによる事故。聞いたことくらいはあるだろう?」
それでもノウンは動じない。一つ一つ。自分の思考を反芻させながら言葉を繋げていく。
「なら、一つおかしい事がある。なぜラトリックは自分の魔力で自滅しないのか。常人よりも常に負荷が高い状態で、だ」
「魔法が使えないっていうのは何かしらの影響が出ているって証拠じゃないの?」
「いや、それは術式側の問題でラトリックの問題じゃ無い」
彼女の疑問にも一瞬で、回答が運ばれる。
「これは仮説だけど。ラトリックは魔力そのものに対する耐性が異常に高い。自分の魔力に押し潰されないように肉体の方が適応したんじゃないかって」
彼女はその言葉を認識した瞬間、思わず言葉を失った。その言葉を一番信用できなかったのは間違いなくラトリックだっただろう。
「私が、、、?」
「そんなことあり得るわけ、、、」
信じられないと、エトワーの口から音が溢れる。
「エトワー。君は何度か二人で行動していただろう?何か気づくことがあるんじゃ無いか?例えば、攻撃を受けてもダメージが極端に少なかったりするような」
「、、、!」
彼女の脳内にこれまでの任務の光景が浮かび上がった。魔獣に襲われた時。謎の人間に襲われた時。幾度となく攻撃を受けても、立ち上がる姿を彼女は見てきたからだ。
「心当たりがあるようだね」
その表情を見て、彼は自身の仮説を確信に変えた。一本の線が繋がってしまった。エトワーがその目で見たものが、自分の常識を頼りないものにしていく。
「まぁな、、、。ただ、何でラトリックは、こんなことになってんだ?」
当然の疑問を口にする。
「、、、」
ノウンは問題の彼女の方をちらりと見た。
(多分、聖女の力って奴が原因だろうな。エトワーが疑問を感じてるってことは普通の聖女には起こらない現象ってことか?)
彼女もおそらく気づいてはいるだろう。他人と明確に違う要素など、そう多くあるものでもない。ただ、彼はラトリックの表情がわずかに陰りが生まれたように感じた。
(、、、まぁ確定したわけじゃない。今言うことじゃ無いか)
「そこまでは分からない。だが、現にそうなっている以上使えるものは使うべきだと思う。、、、と言うわけだっラトリック。最終決定権は君にある」
彼女は目を閉じ、深く考え込む。呼吸の音すらも聞こえそうな静寂がこの部屋を包んだ。
「もし、これを完璧に使いこなせたら。私、誰にも負けない騎士になれるかな」
どれくらいの時間がたっただろうか。ふと、彼女がそんなことを呟いた。
「そこまで行けるかは、本人次第かな」
「断言するぜ。それを使いこなせたら、出来ないことなんかなにもないぜ!」
ノウンはぶっきらぼうに。エトワーは力強く。その問いに答える。
「、、、わかった。私はこの力で、駆け抜けてやる!どうせ選り好みしてる余裕なんてないもんね!」
彼女はまっすぐに目を見開き、その決意をあらわにした。
「、、、それで」
その目はゆっくりと二人に向けられる。その覚悟を表した目はそのままに、、、
「私はどうしたらいいのかしら?」
きょとんとした顔で、頭に疑問符を浮かべた。
「、、、」
「、、、」
((どうしよう))
二人の思考は一致した。再び現れた沈黙。それを破るように、彼はカップを持って立ち上がる。
「明日考えようか。コーヒーでも淹れよう」
「あー!面倒くさくなったなー!」
6-5話話です。ラグメラです。
次回!7話!実はこんな話にする予定ではなかった!寄り道ばっかりしてるから書きたい話に辿り着かないんですね。次回はもう少し話が進みます多分。
面白かったら感想や評価の程よろしくお願いします。




