6-4話
「お前さん、、、。前も思ったがもっと遺物に対する敬意をだな〜〜〜、、、」
「遺物ってほど古くないよ。お爺が使ってたやつだから」
その道具は相当の年季を帯びている。所々錆びており、手の甲に付いている何かを図るための数値も掠れてしまって読めなくなっていた。
「これを試してみよう」
「、、、これ使えるの?」
「俺も試したけどちゃんと動いたよ。ほらっ。持ってみて」
じろじろと眺めるラトリック。そんな彼女目掛けてそれは放り投げられた。
「うわっ!重、、、くない?」
重厚な見た目とは裏腹に、それは中身の詰まっていない箱のように軽かった。
「そのまま魔力を流してみて」
「わかった、、、」
言われた通り、それに全力で魔力を流し込む。その変化はすぐに現れた。
「うわっ!!」
それは魔力を流した瞬間、その重量を一気に上げた。手のひらにいきなり巨岩が現れたかのような重力を前に、それは彼女の手を離れ、凄惨な音と共に木製の床へとめりこんでいく。
「、、、」
その光景を前に言葉を失うラトリック。
「これは、、、予想以上だね」
「観察してる場合!?どうするのよこれ!」
破壊された床を指差す。
「大丈夫大丈夫。これくらいなら治せるよ」
ノウンはそう言うと測定器を持ち上げ、破損した床に触れる。その部分を光が包むと、しだいにそれは何事もなかったかのような状態に戻って行った。
「ね」
「そこは大丈夫でも、その装置はダメでしょ!危なすぎる!何かと間違えたでしょ!」
「いや〜。ラトリック、それは違うぜ〜」
ノウンの手から測定器を持ち上げ、それに魔力を流し込む。
「持ってみろ〜。、、、危ないからちゃんと持つんだぞ〜」
エトワーからそれを受け取る。再び手のひらに重力が加わった。しかし、先ほどと違い、持てないほどではない。
「重いけど、、、これなら別に。筋トレに使えそうね。半分くらい込めたの?」
「いいや、私も全力で魔力を注ぎ込んだぜ〜。普通どんだけ魔力を注ぎ込んだってあぁはならない。、、、お前さん何をしたんだ〜?」
「えっ!?な、何って言っても私は言われた通りに、、、」
エトワーと測定器を交互に見返すラトリック。その目には明らかな困惑の色が滲んでいた。ノウンはそんな彼女を面白そうに眺めなていた。
「まぁ普通はそうなるよ。ちなみに俺がやっても同じになる、、、というかラトリックしかならないっていうのが正しいかな」
「なんでぇ!?」
見えている疑問をの答えを出してもらえず、彼女の往復する視線はさらに速度を速めていく。
「うーん。ラトリックは魔力が異質なんだよね。質が高いと言うか、濃いというか」
彼のその発言に、理解が追いつかない。
「ど、どういうこと?」
「そうだねぇ。例えばこれ」
そういうとノウンは慣れた手つきで指先に火を灯す。この魔法は『灯火』。指先に揺らめく光を生む簡易魔法だ。
「これを君の指に移す。普段通りの魔力をこれに流してみてくれ」
「わかった、、、」
何もわからぬまま、言われた通り彼の人差し指から光を受け取る。そして魔力の供給源が彼女に移った瞬間、灯火は姿を豹変させた。
「うわわわわっ!?」
「まっ、眩しっ、!!!抑えるんだぜラトリック!」
日中にも関わらず、暗闇から光を浴びせられたかのような刺激がラトリックとエトワーを襲う。その衝撃に咄嗟に彼女は供給を閉ざしてしまい、光は消えてなくなった。
「び、びっくりした、、、。どういうこと?私はいつも通り、、、」
「そのいつも通りが俺たちの基準とは違うってことさ」
どこから取り出したのか、そしていつの間にか一人だけつけていたサングラスを外し、彼はそう答えた。
「さっきの灯火。俺が入れた魔力を10%とする。当然光は入れた10%分の光を生み出すだろう」
「それはそうでしょう?」
「けどラトリックの場合、同じ10%の魔力で100%と同じ威力になるんだ。同量の魔力でもあきらかに君の威力が高すぎる。ちゃんと測れたら10倍じゃ済まないかもね」
その言葉を聞き、信じられないとばかりに自分の両手に視線を落とすラトリック。
「それがマジならとんでもないことだぞ〜?だがノウン〜。そんな凄い魔力を持ってる奴が魔法を使えない、なんてことになるのか〜?」
ふと気がついたようにそんなことを聞く。ノウンは少し考え込むように口を手で押さえる。だが、それはすぐにどかされた。
「それはむしろ逆じゃないかな。ラトリックが今まで魔法を使えなかったのはこれが原因だっただと思う」
「どういうことだ〜?」
「あの魔力に対して魔法の術式が耐えれなかったんだと思う。一種のオーバーヒートみたいなものなんじゃないかな」
「魔法が魔力に耐えきれなかったっていうのか〜!?そんなの聞いたことがないぜ〜!」
目を見開き、上擦った声でその言葉は放たれた。
「そうだね。まぁそもそもラトリックのこれが前例もないだろうし。例外ってやつなんだと思うよ。実際その魔封石つけてからは普通に使えてるみたいだし」
にわかには信じがたい。だが納得はできる。彼女はそう判断した。
「そうか〜。ラトリック本来の魔力じゃなくてノウンの魔力なら問題ないってことだもんな〜」
「そういうこと。ただ、ラトリックの魔力をそのまま戦闘に活かすなら体術が一番じゃないかな。体術の利点は術式を介さなくていい点だ。」
「なるほど、、、」
ラトリックも腑に落ちたかのようにそう言葉を溢した。しかし、二人はその現象を認識するのに体力を消費したのか、崩れるように椅子に腰を下ろした。
「だがノウン〜。問題はまだあるぜ〜。」
「何だい?」
「何に魔力を込めるか、ってことだぜ〜。ラトリックは測定器を武器として扱えるってだけで、そもそもそれは戦闘用に作られてないだろ〜?」
「確かに、、、。その話を聞いた限りだと魔道具も普通のじゃダメじゃないかしら。今までも自分の魔力を使うと動かないことがあったし、、、」
その二人の問いに肯定するかのように、深く頷いた。
「正直魔道具を探すっていうのは相当時間がかかると思う。しかも、ラトリックが使えるようにオーダーメイドするのはほぼ確実だろうし。少なくとも試験には間に合わないね」
「じゃぁどうするんだ〜?測定器じゃDランクの奴らと差を埋められるとは思えないぜ〜」
悩むように彼は天井を見上げた。しかし、それは手の打ちようがないからではない。むしろこれを言ってもいいのかと悩んでいるようだった。
「一個だけある。可能性だけどね」
彼の中の天秤は言う方向に傾いたようだ。
「本当!?なら早くそれを言ってよ!」
安心したかのようにラトリックは急かす。ただ、ノウンは遠慮がちな声色を崩さないまま、
「ラトリックの肉体。器として機能するのは現状これだけじゃないかな。まぁ、エトワーが言った通り危険は伴うけどね」
そう、答えた。
6-4話です。ラグメラです。
久しぶりの投稿。お待たせしました。6話完結させてから就活に臨むべきだったかなって思っています。
面白かったら感想や評価の程よろしくお願いします。




