第35章―20
そういった各部隊が挙げた戦果、結果が集計されていき、それこそこのベルリンへの爆撃行に参加した面々から、徐々に素晴らしい戦果を挙げることに成功した、速やかにドイツを崩壊させるべきだ、等の景気の良い意見が、徐々に上がっていく事態が起きていた。
更に言えば、ベルリン上空に無事に侵入し、総統官邸への爆弾投下に成功して、仲間を一人、失ったものの、敵戦闘機撃墜を含めるならば、十分以上の戦果を挙げた、ともいえることから、この作戦に参加したユダヤ人航空隊内でも、
「この勢いのまま、再度のベルリンへの空襲を行なうべきだ」
「それどころか、近い内にベルリンに「ダヴィデの星」(ユダヤ人、イスラエルの象徴とされる)が入った旗が掲げられるのではないか」
という、ある意味では景気の良い意見が飛び交う事態が起きつつあった。
更に言えば、ベルゲン及びその近郊では、そういった意見に酔ったといえる面々が、日本人やユダヤ人を問わずに、徐々に溢れつつあったと言って良かったが。
全ての面々が、そういった意見に酔える訳が無かったのも、又、一つの現実だった。
その一人が、カテリーナ・メンデス大尉だった。
この辺り、様々な紆余曲折の末だが、結果的にユダヤ人航空隊のベルリンへの爆撃行を、自分個人の考えとしては極めて不本意ながら、結果的に先導して行ったことから生じた、と言っても良いことだった。
更に言えば、カテリーナ自身が、甘い考えにも程がある、と従前から自嘲していたことではあったが。
自分や部下の命を失いたくない、と考えて、ずっと行動し続けており、これまで何とか部下達の命を守り続けることに成功していたのだが、とうとう部下の一人を戦死させた、という想いが、カテリーナの胸、心の中で徐々に大きくなっていたのだ。
ベルリンへの爆撃行を終えた以上、すぐに原隊復帰という行動を執ろうとするのが、カテリーナやその部下達にしてみれば、当然の行動と言われてもおかしくなかったのだが。
カテリーナが、数日に亘って、疲れたと独り言を言って、ボーッとする日々を過ごしてしまった。
更に部下達も、カテリーナに遠慮して、それを看過する事態が起きてしまったのだ。
とはいえ、そんな日々が、ずっと続けられる訳もない。
更に言えば、カテリーナの行動は、これまでの経緯もあって、日本軍の目を引くことにもなった。
そうしたことから、小園安名中佐を始めとする日本海軍の上級士官は、
「カテリーナを、しゃんとさせるべきだろう」
「かといって、女性士官にビンタを浴びせる訳にも行くまい」
と言ったやり取りをした末に。
「この際、女性同士で話し合わせたら、どうだろうか」
という話にまで進んで。
「女性補助隊の有志者は、ユダヤ人航空隊と積極的に話し合ってほしい」
という要請が、半隠密裏に出る事態にまで至った。
(何故に半隠密の話になったのか、といえば、こんなことは大っぴらに言えることではなかったからだ)
とはいえ、ベルゲンに居る日本軍の女性補助隊にしても、そんなに人がいる訳が無く、更に言えば、こういった要請を受けても、ひたすら困惑するだけの面々が圧倒的多数と言っても過言ではない。
そんなこんなが絡み合った、ある意味では押し付け合いの果てなのだが。
米内久子は、少なからず困惑する事態が起きていた。
小園安名中佐に呼び出されて、向こうから頭を下げながら言われたのだ。
「カテリーナ・メンデス大尉と、直に話し合って、彼女の気分を変えて貰えないか」
「ええ、私以外にも適任者が」
「年長女性の方が、彼女も話やすいと、儂は考えるのだ。尚、これは上官命令だ」
「はっ、はい」
其処まで言われては、久子はカテリーナに会うことになった。
話の中で描くと流れが悪くなったので、省きましたが。
久子が説得役になったのは、この場に居る女性の中では最年長という事情もありました。
年長者が話した方が、カテリーナを立ち直らせるのに効果的、と小園中佐らは考えた次第です。
御感想等をお待ちしています。




