最強の馬鹿の開戦
「実にはA組の強さが分からないのか?」
俺は目の前で笑う実に言う。いくらなんでもA組には勝てない。
だが、実は態度を変えなかった。どういうことだ?いつもの実はもっと冷静なんだが。
「まさか……偽物!?」
「何を言ってるんだクソ馬鹿」
「クソ馬鹿!?」
絶対こいつは本物の実だ。
ならば、やはり、こいつにはA組に勝つ未来が見えているのだろう。
「でも、どうやってA組に勝つのさ」
「ん?それは簡単な話さ。さっきおまえもやってただろ」
「へ?」
「――だから」
■
「よく来たなA組の諸君。ちゃんと顔を洗って待っていたかね?」
「おい、伊藤。それを言うなら足だろ。臭いといけないしな」
「チゲーよ、手だよ。手がいちばん危険なんだぞ」
「もう体でよくね?」
『よし。A組の諸君。体は洗ってきたかね?』
相変わらず、面白いことをいう人たちだ。私は目の前にいる対戦相手を前に、そう思う。
そんなことを考えていると、私の隣に一人の少女が近寄ってきた。
「綾咲さん。そろそろ時間です。後ろへ」
メガネをかけた少女は、なぜか敬語で私に話しかける。同級生同士でも敬語はつかうものなのだろうか。
私は、その少女の言葉に従い、私たち――A組がいる場所へ戻ろうと、、、あれは。
視界の端。あの人はたしか。この手を引いた赤坂、康太。
私は動き出した。
「……こんにちは」
私が声をかけると、彼は振り向き、
「綾咲か。なんだ?そろそろ始まるけど」
彼はいつもどおりの調子で答える。少ししか会話したことない私にはそう感じられた。綾咲と呼び捨てにされるのに慣れたくらいしか話したことない私には。
そして、その様子に違和感を覚えた。
「……あなたは何も感じないの?」
「ん?どういうこと?」
「……A組と戦うのに、あなたたちE組は、逆に闘志を燃やしているから。あなたもそうなの?」
私らしくないと思う。こんなに一気にしゃべるなんて。
だが気になる。仕方ないことだ。
「今日は饒舌だな」
彼は笑いながら言う。
「まぁ、みんな馬鹿だから。何も考えないのが取り柄。それが綾咲が知りたいことだと思う」
馬鹿。彼はその言葉を侮蔑というより、親愛の感情をこめてつかったように感じた。
「それに、俺は実を信じてるからな。A組に負けるつもりはない」
明智実。E組の組長であり、彼の友人。
前に、彼に『明智実』を聞いた時、彼は馬鹿と答えた。
「お前たちが机を使える期間は終わったのだ。覚悟しとけよ」
彼は獰猛な笑みを浮かべながらE組の人の所へ戻る。
私は彼らを少し、羨ましく思った。
■
「おい開始も近いというのに、どこに行っていた馬鹿」
「実には到底追いつけないような秀才の女の子と会話してたんだよ、アホ」
「……綾咲か。ベストとワースト同士仲良くやってんだな?なんだ?掛け算でも教えてもらってたか?」
「実、表へ出よう」
「そんなにやられたいなら、ここでしばいてやるわ虫」
「二人とも喧嘩はやめな。その力はA組に使うもんやろ」
ぺきょ
「うっがあああああ!!手首があああああ!」
「ああああああ!!関節があああああ!」
右手が!!右手が!!手首がああああ!!上下左右前後、どの方向にも動かない!!(最初から左右しか動きません)
「斉藤、お前が一番ケンカ売ってるだろ!?」
「手首の二つや三つ、気にしすぎや」
「手首は三つもねえんだよ!!」
実はぷらぷらした右手を押さえながら、斉藤に怒鳴る。
――と、そんなことをしていると、ステージの方から声が聞こえてきた。この声は大佐だ。
「2年E組組長明智実、ワースト赤坂康太。手首がの動く範囲が広まりました。おめでとう」
「「おめでたくねええええええええ!!!」」
俺と実の叫び声とともに、乾杯戦争最終戦の幕が開いた。
さくしゃのあとがき
今回も少なくてすみません。あとはa組ですね。あと三回以内に終わらせます