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第4部-第50章 二度目の応募
不採用通知が机の上で黄ばみ始めた頃、浩一は再び求人誌を手に取った。
母の沈黙が、胸の奥に重い石のようにのしかかっていた。
このままでは、家の中に居場所がなくなる――そんな不安が背中を押した。
今回は、なるべく条件を選ばないようにページをめくった。
目に入ったのは「警備員募集」の文字。
日勤と夜勤、どちらも可能で、研修制度あり。年齢は不問。
体力的な不安はあったが、「未経験歓迎」という言葉にわずかな希望を感じた。
母が台所にいる間に、受話器を取って番号を押す。
呼び出し音のあと、男性の低い声が出た。
「はい、◯◯警備保障です」
浩一は緊張で舌がもつれそうになりながら、求人誌を見たこと、応募したいことを伝えた。
担当者は必要事項を聞き取り、「では面接は来週の火曜日で」と日程を告げた。
受話器を置くと、手のひらにはじっとりと汗がにじんでいた。
その夜、夕食時に母へ面接のことを話すと、母は小さく頷くだけだった。
しかし、その頷きの中に、わずかだが柔らかさが戻った気がした。
浩一は布団に入っても、面接の日までの一週間をどう過ごせばいいのか、頭の中で何度もシミュレーションを繰り返した。




