連戦!邪神討伐
夢の世界の遊園地で、変な化け物が大量発生。ホテルの五階に行ってみれば、また妙な悪魔っぽいやつがいた。
「ギイィィ!」
まっすぐ突っ込んでくるので、雷の拳を連続して飛ばす。
「ライジングナックル!」
「ギギギギ!」
押し通ってくるか。だが敵の爪が届く直前でジャンプして、背中をカトラスで斬りつける。
「グギイ!?」
「血は出るしダメージもあるか。殺せないわけじゃなさそうだ」
「ギギ!」
背後からもう一匹でてくるが、殺気垂れ流しなので気づいていたぜ。顔の部分に膝蹴りを入れ、もう一匹に向けて魔法で押し出す。
「ライトニングフラッシュ!」
「グギャガガ!!」
まだもがくか。クナイを二本取り出して飛ばす。
「ライトニングジェット!」
でっかい翼を壁に縫い付けて、魔力を集中して解き放つ。
「プラズマイレイザー!」
これで中ボスはお掃除完了。案外簡単だったな。追加が来ないうちに屋上を目指す。するとさっきの化け物が大量に行く手を阻む。
「今日はオフなんだ。さっさと決着つけてやるよ」
『ヒーロー!』
『ミラージュ』
鎧を幻影で制服に見せかけておく。あとは普通に殴り飛ばして破裂させりゃいいだけだ。さっさと屋上に行く。
「ブギャア!?」
「グゲエエ!?」
毒々しい色の空に照らされて、禍々しいヘラジカのような邪神が蠢いている。あいつがゾンビもどきと蜘蛛を連れてきているようだ。
「喋れるなら話せ。なぜ遊園地を誘い込んだ」
だが何も言わない。歩いて近づく俺を、ゆっくりと雑魚どもが包囲していく。
「そうかい、なら暴れさせてもらおうか」
指をくるりと回転させ、真空波でザコを切り刻む。そのままダッシュでヘラジカを殴りに行く。すると空間を歪めて固めて飛ばしてきた。
「拳の代わりか? 耐久テストしてやるよ」
当然だが光速は超えてくる。それはそれでいい。派手に暴れてもいいってことだから、どんどん加速して打ち合いを続ける。やがて邪神の体にひびが入る。
「脆いな。お前ら強さがピンキリすぎるぞ」
突然空間から酸の雨が降り注ぐ。屋上の床を溶かしていくが、当然俺にダメージはない。どうやら体内にも流そうとしていたらしいが、鎧のオートガードが弾いたみたいだ。小癪な。
「そらそら逃げないと死ぬぜ!」
打撃だけで完全に圧倒できている。腹に蹴りを入れてふっ飛ばし、空中でかかと落としを当てる。屋上に叩きつけられる直前でアッパーを入れて頭を吹き飛ばしてやった。だがまだ死なないらしい。
『ソード』
「遊びは終わりだ」
この剣で切り刻んだことで完全に消滅した。ザコも次々に消滅していく。ずいぶんとあっけない終わり方だが、まあ早く帰れるならいいか。
『こちらリリア。まだ終わっておらんのじゃ。元の世界に帰る兆候が見られん。中央にボスが居るようじゃ』
「今のがボスじゃないんかい。了解、危ない真似はしないようにな」
少し魔力を調べると、この世界の中心に邪神がいることがわかる。もうホテルは問題ないだろうし、さっさと始末しよう。行ってみるとこれはひどい。
「またキモいのが出たもんだな」
全身緑の衣をまとったでっかい人間っぽいのがいる。首から上を目玉が動き回っていて、腹部に大量の悪魔もどきがいる。コウモリのような翼もあるので、あいつが親なのだろう。きしょい。10メートルくらいあってきしょい。
「最近の邪神キモくない? そういう方向性のやつばっかりじゃん。お前なんで頭腐ってんだよ。回復とかしろや」
あれと戦いたくない。けど殺すのが脱出条件っぽいんだよなあ。俺がためらっていると、大量のコウモリもどきが突進してくる。やるしかないか。
「さっさと散れ!」
拳に魔力をためて撃ち出す。これだけで結構な数が減る。敵の中心に飛んでから、両手の魔力を解放させて回転。一気に殲滅した。
すると黒い塊が増え、そこからコウモリもどきが生まれてくる。
「はいクソー」
やってられるかボケ。そんなぽんぽん増えんなや。本体狙ったほうが早いな。指先からビーム飛ばして焼いてみると、素早く立ち上がって蹴りを入れてくる。
「パワーもスピードもいまいちだな」
敵の足を掴んで豪快に振り回し、何度も地面に叩きつけてやる。背中を踏みつけ、魔力のビームを連射した。
「グゴゴゴゴ!!」
「声は出るのか。あとは喋ってくれりゃあいいんだが」
背中から黒い霧が吹き出し、俺を包み込もうとする。反射的にバックステップを取ると、霧が数百のもどきを作り、一斉に口からビームを吐く。
「効かんな」
もうそういう小細工の効く領域じゃない。無視して腹にパンチを入れる。折れ曲がる胴体に追撃のラッシュを叩き込んでいく。
「おおりゃああぁぁぁ!!」
コウモリもどきはラッシュの風圧でちぎれ飛んでいく。このまま押し切る。
「ギギ……ギギオ……」
「喋れるのか?」
眼球から太いビームが飛び出す。俺を狙っているわけじゃない。ホテルの方向だ。だが甘い。ガードキーは発動したままだ。結界に弾かれる。
「グオオオオ!!」
「そうそう、小細工はやめてかかってこい」
拳を打ち付け合うと、光速を楽に突破していく。地上を踏み荒らし、空を飛びながらの攻防が続いている。パワーは上がっているようだが、所詮それだけ。オルインの神の方が強くないかこれ。
「どうした! こうなるのは予想外か!」
超スピードの打ち合いで衝撃波が世界を揺らす。敵の顔に膝蹴り、回し蹴り、飛び蹴りと続けて流れるように打ち込む。腐った顔がさらに醜く歪んでいった。
「終わりにしようか」
『シャイニングブラスター!』
必殺技キーを使って一気に消そう。足払いで敵の体を浮かし、上空に蹴り上げた。
「消えちまえ!!」
「グオオオォォ……アアアァ!!」
光の渦に飲み込まれ、気持ち悪い化け物は消えた。完全勝利だ。ホテルがうっすら消えかけ、みんなも帰っていく。俺は少し残ろう。
「こちらアジュ。ボスは消えた……そのまま帰れ。俺は行く場所がある」
『無茶はするでないぞ』
「了解。お前らは家で待っていろ」
この世界そのものは消えたわけじゃない。つまり、ここにはまだ敵か、敵のアジトがある。なら少し探ってみよう。いつまでも後手に回っていたくない。
「行くならあのでっかい城だな」
ホテルが消えた北側には、広すぎるほどの高原と、全容が把握できないほど巨大な城があった。
「待たれよ」
巨大なイカが話しかけてきた。
「ようやく話せるやつが出てきたか。まさかイカが話し相手とは、夢の世界ってのは自由だな」
「違う。上だ」
イカにチャリオットを引かせているだけで、上に白髪で灰色のヒゲの老人がいる。ヒゲは長く立派だ。全身を見ると筋肉もあるし、神の気配もする。
「あの城には近づくな。立ち去れ」
「引きずり込んでおいて立ち去れとは、ずいぶん勝手じゃないかい?」
「私がやったことではない。あの城には、姿を見られたくない神々が隠れ住んでいる。人の世界に手は出していない。人が立ち入る場所でもない」
信用できない。敵を隠しているかもしれないし、また引っ張り込まれるのは厳しい。ここではっきりさせておきたい。
「……なぜ俺に話しかけた? あいつらみたいに襲ってこないのか?」
「やつらとは敵対している」
こいつら一枚岩ではないんだよなあ。ややこしいからオルインでやんなよ。腹立つけど、最低限の情報収集は済ませよう。
「このまま帰るとして、条件を出しても?」
「言ってみろ」
「あんたらが何者で、なぜ学園で暴れているのか、何が目的なのか、どういう存在なのか全部話せ。正体不明の化け物に襲われ続けてたまるか」
これだけは調べておきたい。対策もクソもない状況を抜け出そう。しばらく待つと、老人はゆっくり語りだした。
「我々はオルインとは異なる外の世界の神。この地の人間は強い。よって信者とすることで体制を立て直そうという動きがある」
「この世界の人間は強いぞ?」
「襲っている連中はそれに気づかん。神であることを無敵の存在であると勘違いしている。そして焦っている」
「それはなぜ?」
「大いなる存在、我らの王が突然消えた。完全に存在を感じ取れなくなった。そしてこの世界から撤退するもの、隠れ住むことを決めたもの、自分が祖にして全になろうとするもの、新たな派閥を作るもの、自分たちも消えぬよう急ぎ信者を獲得しようとするもの、様々に別れ混乱している」
ボスが死んで混迷を極めているようだが、本当に別世界でやってくれ。こっちは遊園地で戦わされたんだぞ。
「信者の獲得……まあ問題のある方法なんだろうな。それで、あの城にいるのは敵ではないと?」
「隠れ住むものだ。人に姿を見られぬように、夢の世界で生きている。城から出ず歌い踊るだけだ」
断って殺すこともできるが、今のところこいつに敵対の意思は感じない。むしろなぜか機嫌がいいようだ。俺が敵対している連中を殺したからか?
「わかった。オルインに危害を加えないなら、殺すのはやめる。どうせ全員じゃないんだろうが」
「すべての神々を統制することはできん。代わりにこれを持っていけ。以前この世界にやってきた男の手記だ。これである程度は掴めるだろう」
少し古ぼけた、それでいて分厚い手記だ。めくってみるとグロくてキモい挿絵が書いてある。ニャ……ト……字がかすれているな。
「ところどころ字が読めないぞ」
「そこまで責任もたん」
「仕方ないか。もう学園で悪さするなよ。他の神にも言っておけ」
「できる範囲でやっておこう。それと、礼は言っておく」
次元の壁を切り裂いて、学園のある座標へとつなぐ。裂け目に入って塞げば、そこはもう見慣れたホテルと遊園地だった。
「そういや名前聞きそびれたな」
まあいいか。もう疲れたし、さっさとヒメノあたりにこれ渡して寝よう。




